「米国と一緒になった軍事力行使の一辺倒では、本物の戦争がやってくるかもしれない。米軍基地の掃き溜めとなっている沖縄は、最初の反撃の地点、戦争の発火点になる! 米軍基地の集中する東京、横須賀が大きな戦争になることも必至です!」
東京21区の社民党・小糸健介候補(立憲民主党推薦)のもとへ駆けつけた沖縄平和運動センター・山城博治議長は、相次ぐ米軍機墜落に見舞われる沖縄の惨状を語り、自公政権・補完勢力への対決姿勢を明確にした。
▲小糸健介候補(左)と山城博治氏
2017年10月14日、この日、立川駅北口には、小糸候補の他に、民進党を離党して希望の党から出馬した長島昭久候補と、「新党憲法9条」を立ち上げた元外交官の天木直人氏が立ち、有権者に向けて自らの主張を訴えた。
東京21区については、10月12日付の読売新聞の序盤情勢で、長島候補と自民党の小田原潔候補が小差で競り合っていることが伝えられている。
- 2017年衆院選序盤情勢・東京(読売新聞、2017年10月12日)
2014年の衆院解散総選挙でも、21区は長島氏と小田原氏が競り合い、小田原氏が当選、長島氏は比例復活を果たした。2候補以外の候補者が厳しい戦いを強いられることは間違いない。
しかし、政策の中身を見てみれば、自民党も希望の党も、安保法制や憲法改正への賛成で足並みをそろえる一方で、米軍基地問題の解決については一切触れていない。事実上、現状維持、現状追認ということだろう。
東京21区は横田基地を抱えている。また、首都圏の上空は沖縄の上空と同様、巨大な米軍の管制空域(ラプコン)がひろがっている。
▲横田ラプコン(IWJ作成)
有権者にとって、10月11日に沖縄東村高江で起きた米海兵隊の輸送ヘリCH53Eの墜落事故は、決して他人事ですまされる問題ではないはずだ。
- 弁士 小糸健介氏(東京21区候補、社民党)、長島昭久氏(東京21区候補・前職、希望の党)
- タイトル 衆院選 希望の党 長島昭久候補 街頭演説・握手活動(立川駅北口)/衆院選 社民党 小糸健介候補 街頭演説(立川駅北口) ―応援 沖縄平和運動センター・山城博治議長
- 日時 2017年10月14日(土)13:00〜
- 場所 立川駅北口(東京都立川市)
「住宅街であるのにそこに住む人たちを排除して囲い込む」――米軍ヘリ墜落事故の惨状を社民党・小糸健介候補の応援に駆けつけた山城博治氏が立川で訴え!
「正々堂々と平和憲法を、これまでも守り続けてきたし、これからも守り続けるんだということを訴え続けていきます!」
山城議長からマイクを受け取った小糸候補は、時折、立川駅前を行き交う子どもたちに手を振りながら、社民党の公約に掲げられた「憲法を活かす政治」を訴えた。
小糸候補の応援には、社民党の八王子市議会議員・佐藤あずさ氏も応援に駆けつけた。
「私たちの貴重な税金、どこに使われているか。ここ立川市は、横田基地被害を受ける5市1町のうちの一つ。横田基地には『空飛ぶ棺桶』オスプレイの配備が予定されています(※)。オスプレイは1機あたり103億円もするんです。そのお金があったら教育の無償化をやってほしいですよ! 若い世代のためにお金を使ってほしいですよ! 私たちの貴重な税金を、お友達のために使う安倍政権、もう信じられない!」
※横田基地へのオスプレイ配備:米軍横田基地に垂直離着陸輸送機オスプレイCV22を配備する計画。もともとは2017年後半に3機、2021年までに計10機を配備する予定で進められていたが、2017年3月13日、米国防総省が最長3年の配備の遅れを発表した。
▲佐藤あずさ・八王子市議(中央)、小糸健介候補(左)、山城博治氏(右)
街頭演説後、IWJの取材にこたえた山城議長は、10月11日の高江でのヘリ墜落について、次のように語った。
「12月にも墜落しました。また墜落しました。また落ちるでしょう。そのたびに県民は恐怖し、声をあげますが、政府はオウム返しに『再発防止に努めます、原因究明に努めます』ということだけ。あとは、『運用は米軍次第だ』と。そしてまた墜落するんでしょう。怒りと悲しみでいっぱいです。ぜひこの状況を変えたいです」
ヘリの墜落現場では、米軍が規制線を張り、日本の警察さえ中に入れない状況が続く。これについて山城氏は、次のようにコメントした。
「住宅街であるのにそこに住んでいる人たちを排除して囲い込む。米軍の物資が回収されるまで誰一人立ち入りさせない。この国があっという間に米国のものにされてしまう。これが(日米)地位協定の本質です(※)。
東京でも同じことが起こると考えてみてください。ヘリコプターが落ちたら周囲300メートル、500メートル、誰も立ち入れないんです。この国の情けない姿を、米軍事故のときに目の当たりにします。凶悪事件でも、犯人が目の前にいるのに逮捕もできない、裁判にもかけられない。何かあったら地位協定だと。もう戦後72年です。このままでは100年続きますよ」
※日米地位協定:1960年6月23日に発効された「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」。前泊博盛氏の『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』によると、この日米地位協定により、米兵は日本国内で罪を犯してもほとんど裁かれず、日本の航空法で禁止されている市街地上空での超低空飛行訓練などが認められている。実質的な、米軍にとっての「治外法権」である。
「『辺野古の基地はやむをえない』という立場で政権を担わせていただきました」――優勢を伝えられ笑顔の希望の党・長島昭久候補は辺野古移設の継続を示唆
小糸候補の街頭演説が終わる頃、同じ立川駅北口では、希望の党の長島昭久候補が有権者と握手をして回っていた。
▲長島昭久候補
IWJの取材にこたえた長島氏は、米軍基地問題について尋ねられると、「日本側から提案しても現実的には…私たち(旧民主党)も『辺野古の基地はやむをえない』という立場で政権を担わせていただきましたので、このまま普天間の基地を一日も早く除去するという方向でやっていかざるをえないと思います」と述べた。
なお岩上安身は、普天間基地の県外移設を公約に掲げながら断念した鳩山由紀夫元総理大臣にインタビューをし、「県外移設」断念の裏に、外務省の官僚から示された「極秘文書」の存在があったこと、また、そこに「虚偽」ではないかと疑われる内容が記されていたことを明らかにしている。鳩山政権で防衛大臣政務官を務めた長島氏は、当然、そうした事実を知っているはずだが、断念に至った背景を説明することなく、「『辺野古の基地はやむをえない』という立場で政権を担わせていただきました」と振り返るだけであった。
民進党議員の中でも、「合流組」とは別に早い段階で民進党を離党し、小池百合子都知事の勢力に加わった長島氏は、希望の党が自民党の補完勢力であると批判を受けていることについて、「共産党や立憲民主党は、そういうふうに差別化して、与党の方に寄せていく、選挙戦術でやっていると思います」と他党へ責任転嫁してみせた。
しかし、長島氏が民進党(旧民主党)在籍時から「右派」として知られ、安保法制を「合憲」とするなど、安倍政権と非常に親和性の高い考えを持つことは、岩上安身が長島氏へのインタビューで明らかにしている。
「(21区は)自民党の議席を一つ減らせる可能性のある、東京の中では数少ない選挙区だと思います。もう一騎打ちになってますから」
自信をにじませた長島氏だが、選挙戦はあと1週間続く。長島氏は比例重複での出馬ではあるものの、希望の党の苦戦も伝えられており、情勢の展開はまだまだ不明である。