米軍北部訓練場の新規ヘリパッド建設に揺れる沖縄県東村高江。
高江では、建設に反対する住民らが強制排除された「Xデー」を経た今もなお、住民らによる抗議行動が続いている。週が明けた7月25日、北部訓練場に工事車両が出入りするN1ゲート前には、県内外から約90人が駆けつけ、「建設やめろ!」と怒りの声をあげた。
現場は、県外からも投入された機動隊員約200名や民間警備会社「ALSOK」の警備員らが厳重に警備。ものものしい空気が充満するなか、この日は「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎参議院議員の姿もあった。
▲沖縄・高江でスピーチする山本太郎参議院議員
山本議員は、沖縄県民が選挙のたびに新基地推進派の議員を落選させていることを挙げ、「沖縄の民意ははっきりしている」と主張。それでも強引に基地建設が進められる現状を前に、「この国は民主国家じゃない!」と指弾する。
「いったい何のためにこの工事は行われるのか!? アメリカ様のためだ。アメリカ様と、そして国内の利権、これを建設することによって儲ける人たちのためにこのオスプレイパッドは作られ、辺野古の基地も作られる。これのどこが民主国家なのか!? 『国家の私物化』ではないか!」
さらに、今回の強制排除にあたり、県外から500名とも言われる機動隊員らが集められたことについて、「沖縄の機動隊だけでこの現場まかなえるだろう。それをなぜ全国から呼び集めるのか」と指摘。「日本が破綻を迎えたときに、この国に生きる人々の不満が爆発する。そのときの練習を今、皆さんがさせられている」と喝破した。
22日の「Xデー」には、機動隊に強制排除された住民らが3人救急搬送された。ひとりは肋骨を折るなどの怪我をし、他にも機動隊員によって顔面を殴打された住民や、首を締められた住民もいた。
「一体、どのような意図があってこのように対立させられているのかということを、自分の中でもう一度見つめなおしていただきたい」――。
山本議員は、機動隊員らに向けて、沖縄に対する差別的構造の実態を紹介。沖縄の現実を直視するよう呼びかけた。
以下、山本太郎議員のスピーチ全文を文字起こしし、リライトして掲載する。
「挨拶の前に、2点、皆さんに謝罪をしなければならない」
山本太郎議員(以下、山本議員)「おはようございます。山本太郎と申します。挨拶の前に2点、皆さんに謝罪をしなければならない。
ひとつは22日、非常に大きな攻防戦と言いますか、住民の皆さんに対するいじめにも近い排除が行われました。その現場に足を運べなかったこと、それ以前にも足を運べなかったことを皆さんに、まずお詫びしなければなりません。遅くなりました。申し訳ございませんでした。
やはり国会議員がひとりでも現場に立って、皆さんに対する不当な弾圧をしっかりと目撃し、それを国会の中で取り上げる。生で見なければいけなかったのに、それが叶わなかったこと。それをお詫び申し上げたいと。
もうひとつお詫び申し上げなければならないのが、今までの人生の中で、沖縄の基地問題に対して、大きく自分の中で時間を割いてこなかったこと。社会の中で興味を持たずに、下手をすれば、『沖縄に基地がなければしょうがないんじゃないか』…何も考えずにそう思い続けてきました。
私の場合は原発事故をきっかけに社会の問題にやっと目を開くことができた。その中で、沖縄がどういう不条理を押しつけられているかということにやっと気づけたんですね。あまりにも気づくのが遅すぎた点も、お詫びしなければなりません。本当に申し訳ございませんでした」
「いったい何のためにこの工事は行われるのか? アメリカ様のためだ」
山本議員「辺野古も高江も、もう答えは出ているんですよ。民主主義の手続きとしてハッキリと答えが出ている。民主主義とは何か。これは『民衆による支配』ですよね。それを手続きとして指し示すものが選挙である。民主主義において正当な手続きである選挙で、沖縄の意志ははっきりした。何度もの選挙にわたってはっきりとした事実なんですよ。
一番直近の選挙でも、なんと(沖縄担当の)大臣を務めている人間が、議席を失ってしまっているんです。それくらいはっきりしているんですよ、沖縄は。辺野古に対しても、ここ高江に対しても、そして米軍に対しても答えははっきり出している。
少なくともこの国が民主国家ならば、この手続を前に、この結果を目の前に、高江のオスプレイパッドを作ることは絶対に許されない。当たり前なんですよ、これ。
この国はじゃあ民主国家ではないのかという話ですが、当たり前ですよ、民主国家じゃないですよ。見てください。ここに集まっている住民の方々、そして私のように、住民ではないが足を向けて、マイクを握っている者もいる。この何倍の機動隊員・警察がここに来ていますか? いったい何のために?
いったい何のためにこの工事は行われるのかって?
アメリカ様のためですよ!アメリカ様と、そして国内の利権、これを建設することによって儲ける人たちのために、このオスプレイパッドは作られ、辺野古の基地も作られる。これのどこが民主国家なんですか!『国家の私物化』というんですよ、こういうの!」
「今まで日本は一度も独立していない。アメリカが間接的に支配している」
山本議員「沖縄ではもうはっきりしている。答えは出ている。でも、その民主的な手続きの結果を無視してしまって、今、工事を無理矢理進めている。
オスプレイがくるなんて聞いていないんですよ。オスプレイが飛ぶなんて聞いていないんですよ。蓋を明けてみたらオスプレイのためのパッドじゃないか。
(「だまし討ちだよ!」という声が上がる)
この国でアメリカ様が練習するなら、自分の国でやればいいじゃないですか。当たり前でしょ? これ。どうしてこれわざわざよその国でやるのか? この国が植民地だからですよ。今まで日本は一度も独立していないんです。それを感じないでしょ? 多くの方々が。どうしてか? 間接的に支配しているからですよ。
▲沖縄・高江でスピーチする山本太郎参議院議員
アメリカ国内でオスプレイの訓練というのは制限されている。その訓練されていた土地での生態系に影響を与える…コウモリだったり、植物だったり。そういうことで地元の住民から大きな反対が起こった場合は、オスプレイが飛べなくなったり、訓練できなくなったりしているのがアメリカの現実なんですよ。
でもここでは、住民の民家スレスレにも飛べるし、その民家を取り囲むようにヘリパッドまで作る。
この国は誰のものなんだ? この高江は誰のものなんだ? 沖縄は誰のものなんだ!? って話ですよね。
沖縄は、沖縄に生きる人々のものですよ。高江は、高江に生きる人々のものですよ。それは先祖から受け継いで、そしてそのバトンを次にわたすためにここに立っているんです、皆さんは」
「沖縄とはどういう存在か。機動隊員の皆さんにも調べていただきたい」
山本議員「沖縄の答えはハッキリ出ている。高江の答えもハッキリ出ている。辺野古の答えもハッキリ出ている。その民主主義の手続きである選挙の結果さえも無視するという事態が、この国は普通ではないということをはっきり示しているんですよ。
(機動隊の)皆さんがやったこと、その場にいたかはわからない。でも考えていただきたい。22日の強制的な排除は不当弾圧ですよ。ここで声をあげる人々に対しての。肋骨を折る、首を絞める、殴る――。
皆さんは何のために、今のお仕事に就かれたのですか?
この国に生きる人々の生命・財産を守るために、おそらく機動隊を目指したり、今、働いている部署にそれぞれ就かれたんですよね?命令がくだされればそれに従うしかない。それは当然のこと。命令をくだす者に問題がある、これは当然のことなんです。
皆さん、命令には背けない、そんなことをしてしまえば職を失ってしまうから。皆さんも生きなきゃいけない。それは当然のことですよ。でもね、この現場を離れた瞬間に、自分の中で、今行われていることを考えていただきたいんです。
自分で情報を探して、一体、この国は今どこへ向かっているのか。そしてこの高江は、辺野古は、沖縄はどういう目にあっているかということを、自分の中でもう一度、調べて、自分の中でもう一度考えていただきたい。
命令には背けない。職を失うから。それは仕方ないのかもしれない。でも今このようにね、ここに集まっている住民の皆さんは、暇だからきているわけじゃないんですよ。時間が余ってしょうがないからここで時間を潰しているわけじゃないんですよ。
それぞれに暮らしがあって、仕事があって、その合間をぬって皆さんこの場に立たれて、そして『この森を壊すな』と、『私たちのこの生活環境を変えないでくれ』と、当たり前のことしか言っていないんですよ。
ただのワガママで言っているんじゃないんですよ。この現実を、この現場を離れた時にもう一度調べていただきたい。沖縄とはどういう存在だったのか。辺野古は、高江は、そういうことを機動隊員の皆さんにも。
「日本が本当に独立するためには、機動隊の皆さんにも考えていただかなければいけない」
山本議員「そして、ALSOKの皆さん。正社員の方々少ないですよね、おそらく。非正規で働かされているでしょう? もうこの国で生きる人々でさえも、国に食い物にされているんですよ。安く働く道具として。そのような政治が行われているんです。
だとすれば、民主主義の手続きなんて無視するに決まっているじゃないですか。人を人とも思わない、この国に生きる人々を守ろうとさえしない。逆に食い潰す、そのような政治が行われている。それはあなたの生活からも見えることなんですよ。
もう一度この現場を離れた時に、この国のあり方、沖縄のこと、自分の中で調べて、深めてくれませんか? ただ単にこの場に来て、なんとなく職務で立っているって、こんな馬鹿な話ないですよ。
▲沖縄・高江でスピーチする山本太郎参議院議員
私たちがこうして向き合って、押したり押されたりっていうところに、何も意味がなかったら、これほど悲しいことはない。一体、どのような意図があってこのように対立させられているのかということを、自分の中でもう一度見つめなおしていただきたい。
本当にこの国が独立をする、日本として自分たちの意志をもって何事でもものごとを決めていけるっていう、当たり前のところにいきつくためには、ここに立っている住民以外の防衛局の方にも、機動隊の皆さんにも、ALSOKの皆さんにも考えていただかなければならないんです。建設会社の皆さんにも。
力を貸していただきたい」
県外の機動隊は高江で「どうやって住民を黙らせるかという訓練をさせられている」
山本議員「そして、このヘリパッド建設は『間違いである』。これが証明される日が必ずくるんですよ。必ずくる。どうしてか? 多くの人が気づき始めているから。
今まで沖縄の外に出なかった情報が、今はもうネットで、大きく全国に伝わっているから。だから皆さん、全国から呼ばれているんですよ。沖縄にいる機動隊だけでこの現場を回せると思いませんか?
九州からきている皆さん、関西からきている皆さん、『どうしておれたちが沖縄まで行って、この入り口を守らないといけないのか』と思いません? 沖縄の機動隊だけで回せると思いません? 人数的にOKでしょ? でもどうして全国から呼ばれているか。今、政治があまりにもデタラメすぎて、皆さんの生活を脅かしながら、自分たちの私腹を肥やしている。
政治家と企業と官僚とマスコミ、これ一体なんですよ。これいつか破綻するんですね。その中身がバレた時に爆発するのは誰か? その国に生きている人々ですよ。その時に関西から、九州から、今どうやって住民と向き合って黙らせるかという訓練をさせられているんですよ、皆さん。
沖縄にいる機動隊だけでこの現場まかなえるでしょ? それをどうして大阪から呼ぶの? 東京から呼ぶの? どうして九州から呼ぶの?
この国、破綻に向かっていっているんです。はっきり言ってそうです。その破綻を迎えた時に、この国に生きる人々の不満が爆発する。そのときの練習を今、皆さんがさせられているんですよ。じゃなかったらなんで税金を投入して、全国から集めますか? 考えていただきたいんです。機動隊の皆さんにも。防衛局の皆さんにも、ALSOKの皆さんにも。
人間を食い物にする、そして人間の暮らしを食い物にするような、目先の利益によって国がどんどん壊されていっている現実がある。それを深めていただきたい。今日この場に立ったのは偶然でもなんでもなく、それを考える機会を、住民の皆さんが与えてくださったと、そういうふうに私は思っています。
(「車両きます!」)
▲N1ゲート前で警備にあたる機動隊員
…お話しがまとまりませんけれども、車両がきたようです。また搬入する気ですか?
どこまで作ったとしても、必ず止まる日がきます。辺野古も高江も、全国の人が、世界中の人が、今、この国がやっている権力の暴走を見続けている。沖縄から、全国の人たちが学んでいるんですよ」
山本太郎議員のスピーチを遮るかたちで、続々と米軍北部訓練場に工事車両が進入した。市民らは「工事やめろ!」「工事をやめて!」「考えなおして!」と叫び、「北勝建設は工事をやめろ!」とシュプレヒコールを上げた。
声をあげる市民らの前には、無表情でうつむく機動隊員らの姿があった。