抗議行動の強制排除、検問、テント撤去…法律も憲法も無視する国や警察の暴挙! 沖縄・高江ヘリパッド建設を小口幸人弁護士が徹底批判!(インタビュー:IWJ原佑介) 2016.7.21

記事公開日:2016.7.21取材地: テキスト動画独自
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(取材:原佑介、山本真知子、文:城石エマ)

特集 高江ヘリパッド
※7月21日テキストを追加しました!

 改憲勢力阻止の懸かった2016年7月10日の参院選で、野党統一候補の伊波洋一氏が当選し、現職の島尻安伊子沖縄・北方担当相を制した沖縄。その沖縄で、参院選直後、国が高江のヘリパッド建設を、月内にも強行することが明らかになった。

 ヘリパッドは高江集落を囲むように全部で6カ所建設される予定で、そのうち完成した2ヶ所にはすでにオスプレイが配備されており、騒音や安全性への不信が沖縄の人々を苦しめている。

 さらなる建設の進行に抗議する市民を強制排除して、7月11日以降、国は着々と工事の準備を進めている。全国から集めた500人という異常な数の機動隊を投入し、次々と住民をごぼう抜き。近くのダムには、抗議の人々が使う公衆トイレがあり、そこではなんと警察が検問までしているという。まもなく、国や警察は、抗議のテントを撤去しにかかる模様だ。

 そもそも高江のヘリパッドは、1996年12月のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で、米軍北部訓練場の一部を返還する条件として、建設されることになった。

 「合意があるから建設を進める」――。そんな国の論理を真正面から否定するのは、沖縄弁護士会の小口幸人弁護士だ。

 小口弁護士といえば、参院選にあたって、各地で積極的に「緊急事態条項」の危険性を広めてきた、若手の弁護士である。

 その小口弁護士は、今年の2月から沖縄に移住して同地の事務所に弁護士登録をし、辺野古や高江の米軍基地問題を間近に見てきたという。2016年7月19日には、自身のブログでも、高江の問題に強く警告を発している。

 小口弁護士によると、国はSACO合意の締結にあたって、オスプレイ配備の可能性を把握していながら、住民にまったく知らせなかったという。住民が強く抗議するのは、こうした姑息なやり方が受け入れられないためだろう。

 さらに、たとえどんなに国が「もう合意してしまった」と言い張っても、小口弁護士によると「抗議者の強制排除や検問、テント撤去は許されない」。法律上・憲法上、どちらの観点から見ても、国にも警察にも、住民の抗議行動を潰す権利はないのだ。

 「住民の抵抗権や表現の自由の圧殺」を許していいのか――。

 この問いは、沖縄の人々だけの問いではないはず。本土の人間も、真剣にこの問に向き合わなくてはならなくなる。

 参院選で改憲派に3分の2の議席を許してしまった報いは、すぐに我が身にふりかかる。内閣の恒久的な独裁を許してしまう緊急事態条項は、すぐそこまで迫ってきている。

▲最初の4時間分の中継(小口弁護士インタビュー含む)

▲小口弁護士インタビュー部分単独抜き出し動画

▲検問への抗議動画

国は高江ヘリパッドへのオスプレイ配備計画をあえて隠していた!? 「米軍基地負担軽減」という言葉の欺瞞

IWJ原佑介記者(以下、原と略す)「いつから沖縄にいらしているんですか?」

小口幸人弁護士(以下、小口と略す)「2月にこちらへ来ました。7~8年くらい前に沖縄に住んでいて。たった1年でしたが沖縄のことを知ることができて。弁護士になったら必ず戻ってこようと思っていました。今は完全に沖縄に登録替えをして、自分で事務所を作って。ずっと沖縄です」

原「高江については、ずっと関心を持たれてきたんですか?」

小口「私もこっちに来るまでは、日弁連のイベントか何かで、そこのテントの部分を米軍のほうに差し上げて、どかしてもらうみたいな試みが一回あって、今情報公開の裁判やっているじゃないですか。あの件で初めて知ったくらいで、詳細は正直全然知らなかったです」

原「何をきっかけに関心を持たれたんですか?」 小口「やっぱりこっちに越してきて、こっちの弁護団にも入って、辺野古の問題も高江の問題もあるというのがよく分かってきました。根っこの基本的な部分は同じなんですが、翁長知事の態度がちょっと違ったりとか、いろんな問題があることはわかってきました」

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▲小口幸人弁護士

原「何の違いなんですか? 本土から見るとよくわからない部分もあります。辺野古に対しては、県をあげて反対しているけど、高江に関しては、県民大会でも『高江』という単語が出なかったりとか、ちょっとまた違うのかなと」

小口「そうですね、私も今回いろいろ考えたんですけど、根本的には何も変わっていない。SACO合意(※)のときには、オスプレイが配備されると分かっていたのに、国はそれを隠していて、そのまま結ばれたと。だから、オスプレイが来るヘリパッドだということは、当時は(高江の人たちには)分かっていない。少なくとも、彼らが明らかにしていない中でやられたので、オスプレイ配備については翁長知事も反対していますし、SACO合意の時とは話が違うじゃないかと、だからあれ(SACO合意)を理由に(オスプレイ配備を)やられるのは話が違うじゃないかと、そういう根本は変わっていないんだと思います」

※SACO(沖縄に関する特別移動行動委員会)合意:米軍基地の整理統合と在日米軍基地位協定の運用の改善を議論するため、日米間で設けた委員会における、1996年12月2日の最終報告のこと。この合意の中で、北部訓練場の過半を返還する代わりにヘリコプターの着陸帯を移設することが盛り込まれた。

原「SACO合意というのは基本的には沖縄の基地負担を軽減させようという合意ですよね?」

小口「と、言われていますね」 原「ですが、北部米軍訓練所の中の一部を返す代わりに、新しいヘリパッドを作ってそこをオスプレイが使う、これじゃ全然返還でもなんでもないじゃないか、という考え方ですよね?」

小口「結局のところ、『北部訓練所の面積』という意味でいくと、『返してもらえる』んだと思いますけど、私も高江のテントで聞いてなるほどと思ったのが、まず、米兵たちの洋服が変わったと。要するにそれまでは、ベトナム戦争とかがあったから、緑のゼブラみたいなやつだった。ところが今は(相手にする敵が)ISなので、デザート仕様の白っぽいやつに変わったと。なるほど、と思って。

 そうすると、このジャングルの訓練所って、実は結局、彼らにとってあんまり必要なくなってきた(ベトナム戦争時代は亜熱帯の密林で必要性があったが、今はない)。優先度が下がってきたんだと思います。世界の治安と、安全保障の観点で。だから、北部訓練所も、あの時にあの面積返しますよ、という話が出てきた。

 一方で、辺野古基地と高江のヘリパッドと伊江島(※)、三角形のコンパクトでどんどん上げ下げができるオスプレイの訓練所がきれいにできあがるわけです。彼らはむしろ、それをやりたかったんだろうと、それを隠して基地負担軽減のもとで、辺野古とここ(高江)とで結んだというのが、今から遡ってみると、それが彼らの腹の中だったのかな、と。

※伊江島:沖縄県国頭郡伊江村。同村には、在沖米海兵隊基地司令部の飛行場・演習場としての伊江島補助飛行場がある。

 そうだとすると、それを沖縄の側がわかっていたなら、SACO合意についてどういう態度をとったのかが全然違うでしょう。そこの部分はやはり、瑕疵があるでしょうね。なんで、大局的な大義の部分でいくと、そういう話になるのかなと思います」

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「沖縄県の道路を管理しているのは沖縄県であって、国や警察に強制排除の権限はない!」~強行するならまず法律を変えるべき

原「弁護士さんなのでお聞きしたいのですが、法的な効力は高江の場合どうなっているのでしょうか?

 もう契約として結ばれているから、工事するのが当たり前なのか、それとも住民の反対があって、このまま強行するのは民主主義的でもないし、決定的な根拠にも欠ける状態なのか」

小口「法的に、というのはけっこう難しい話でして、たとえば辺野古の方だと『埋め立て承認』という、分かりやすいファクターがあると思うんですけれども、国としては外交的には結んでいるわけです。だからやりますよ、と首尾一貫している。その中で、一つの埋め立て承認というのがないから、止まっているという状況です。

 確かに高江のヘリパッドの方は、いまのところ、何か地方自治体の首長の承認をあえてまたもらわなければいけない手続きがないから、それ(国が手を止めるということ)が出てきていないだけで、仮に何かの工事をしていく中で、変更が必要ですよと、そこで市町村とか、県議会とか、県知事の承認とかになるんであれば、また(辺野古と)同じような問題状況にきっとなるんだとは思うんです。

 じゃあミクロの視点で見ると、あそこのテントをどけられるのか、車をどけられるのかと言えば、まさに国内法の問題になってきます。高江の場合には、沖縄県が道路を管理していて、その管理者のほう(沖縄県)は今のところ、書面注意までしかしていません。その上で、近いうちに県議会では反対決議がされるとか、県道の確保という目的であれ(テント)をどかす、ということが行われそうということは、どうも合法上はなさそうなんです。

 それを無視して強制的に行うなら、それはミクロの世界で見ればダメです。それは、『そういう条約で結んでいるから』『合意してるから』ということで正当化できる話ではない。どうしてもやるなら、『法律を変えてからやる』という話であり、順番です。その意味では、総論としては国の側は大義があると言っていて、ミクロの世界でいくと、国の作っている法律のほうでも問題がある」

抗議行動の強制排除は憲法にも違反! 許されざる『抵抗権の圧殺』

小口「さらに、法律よりも上位にあるべき憲法の人権の視点からいくと、こちらも問題があると言わざるをえない。

 特に高江の場合は、民家からものすごく近いところを全部ヘリパッドで囲むくらいの状況になるわけです。そうすると彼らは当然、自然権である抵抗権にもとづいて抵抗するのが当然だし、『私たちがいるんだ』『私たちは合意していないぞ』と声をあげるのも当然の話ですから、それ自体は憲法上も法律上も何の問題もない。

 それを踏まえて、本当は全国民が受け止めて、どうするのかということをちゃんとやっていくのが民主主義のプロセスですから、そこのところを一生懸命声あげる人がいるのに、それこそ全国ネットのテレビはまったく報じもしないし、それを500人とか、1000人とかの機動隊を投入して、法律の手続きをすっ飛ばして圧殺するというのは、これはもうどう見ても人権上問題がある。私は弁護士のはしくれなので、基本的人権の擁護は使命ですから、じゃあこちら側に立ちますよ、という話です」

抗議行動の現場で、抗議行動の行われている時期に検問~「表現の自由と抵抗権の行使の封殺でしかない!」

原「検問についてもお聞きします。急に検問しだしたということで、これはなんだったのか。警察が何してもいいわけではなくて、やることには根拠が必要です。その法的根拠がなく、検問を行うというのは『封殺では』とおっしゃっていましたけれども、もう一度改めて説明していただいてもいいですか」

小口「そもそも警察は公務員ですよね。法律にもとづいて公務を行うのが彼らの仕事。じゃあ個別の法律がなければいっさい何もできないかというと、そういうことはないと言われているんですけれども、それは人々の権利を侵害しないで、任意でやる、というのが限界なわけです。

 じゃあ検問って何かというと、いったん車を止めるじゃないですか。だから、多少なりとも不利益をともなうわけです。だから何にも目的とか根拠がない中で自由にできる行為ではそもそもない。最高裁もそう考えているんです。

 検問には3つの類型があると言われていて、緊急配備という、よくドラマで見るやつです。『犯人が白いバンに乗って逃げたぞ』というときに、『緊急配備を敷け』と。『白いバンを止めろ』と。それで一台ずつ職務質問をしていく。あれが緊急配備の検問。でもあれは全部の車を止めるわけじゃないです。

 もう一つは、違法車両とか、おかしな車が走行しているのを止める。よく、ちょっとやんちゃな少年たちの乗っているのを止めるのが、あれです。あれは、道路交通法とか車両整備法とかの検挙のためと安全のためにやっているわけです。

 全部の車をいっせいに止めるのは『一斉検問』と言われていて、もともと合法なのか違法なのか、議論のあるところです。根拠法もないから。その上で、全部の車を止めるので、不利益をともなうから、法律の根拠もなく令状もなくできるのか、という議論が大昔にもともとあった話です。

 たとえば国道でやる飲酒検知とか、あれはまさにそこで飲酒運転をしている人はたくさん通っているし交通量も多いから、安全のためにやるんだと。その上でみんな、ドライバーとして運転しているんだから、道路交通法順守のためにそのくらいは協力しようよ、ということで最高裁が認めている類型であって、それ以外の、たとえばこういう、全然車も通っていない、およそ道交法違反で切符なんて、むこう数年間切られた気配もないところでやる検問なんていうのは、根本的にダメなんですね」

原「明らかにこの検問って政治的な意図があると…」

小口「明らかにここで座り込んでいる人たちがトイレに使っているダムの入り口で検問をやるわけです。しかもこのタイミングでやるというのは、もう誰がどう言おうと、この検問の目的はここでやっている表現の自由と抵抗権の行使を封殺するためですよね。

 人権を侵害するためにやりますよと言うなら、それは何の理由があっても違法ですから。その目的が推認されると思うんですけど、その目的でやっている以上は、そっちの面からもダメだし、その目的がなくてもここでやるのはダメだし、どっちの面から見ても、およそ正当化できない。もう弁護士から見たら真っ黒ですよ、ここでの検問は。真っ黒ですよ」

「検問の根拠として警察が出してきた『警察法2条』は、ただの倫理規範。それをたてに何をやってもよいという話ではない」

原「検問って言われると応じてしまいますけどね」

小口「あくまでも検問は任意なので、令状があるわけでもなんでもないですし、違法な運転をしていた外見があるわけでもなんでもないですから、それこそ『止まってください』と言われて無視してもいいくらいのものなんです。『止まってください』って、協力を促しているわけですから。その上で、『私は免許証見せません』『応じません』と言えば、それまでの話。それ以上強制する権利は警察にはないんです。 

 じゃあ、使命だから何やってもいいかというとそんなことなくて、個別の権限がないとなんにもできないんです。だから、警察の側で治安維持とかいろんな責務がありますよ、と書いてあるけれど、責務があるから何やってもいいわけではないわけです。1つずつ法律で定められている。

 何も(法的根拠が)ないときに苦し紛れに言うのが『警察法2条』で、彼らがそれを言うということは、『根拠ないですよ』と言っているのと同じです。それは誰より警察官が一番よくわかっているんです」

※警察法2条:「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」。ちなみに同条2項には、はっきりと「権限濫用」が禁じられている。「2. 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法 の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない」

原「やましい気持ちがあって言っているのかもしれませんね」

小口「職務質問も『警察法2条』ではだめで、警察官職務執行法というのがちゃんとあって、その根拠でやっているんです。『警察法2条』というのはそれくらい弱い、一般的な倫理規範でしかない。だから今日(検問を)やっていないのは、さすがに無理だなあと思ったのか。これは真っ黒すぎますね」

強制排除、検問、テント撤去…法律も憲法も無視する国や警察の暴挙!

原「早ければ、今日、明日、明後日あたりにテントの撤去に踏み切るのではないか、と言われていますけど、これは何を根拠にやっているんでしょうか? 根拠ないと思うんですけどね。やりたいからやる、というか」

小口「それはでも、違法ですからね。特にテントの方は明らかすぎています。ここは『県道』なんです。『道路管理者=沖縄県』なんです。

 まず、行政が何か権利行使するときは、いきなり強制するべきではなくて、行政指導とか、口頭注意とかをやっていくんです。沖縄県自体は、口頭注意をやっていて、こないだ書面の行政指導をしたところで、要は様子を見ている段階なわけです。道路管理者が様子を見ていてもいいだろうと思っているところを、道路管理者じゃない国とか、海兵隊とか、沖縄防衛局とかがどかすなんていうのは、『何様ですか?』という話です、簡単に言うと。

 よく辺野古の裁判とかでも、原告適格があるのかという話がありますけれども、そんなこと言う適格があるんですか、という話なんです。だからあれ(テント)をどける権限は、彼らにはまったくないし、せいぜい沖縄県に『あれはどうなっているんだ?』というところまでの話です」

原「もし、ごぼう抜きで強制撤去までいった場合って、なんて説明するんでしょう?」

小口「説明は立たないですよね。国賠の裁判になって争われてしまうのか、という話ですけど。日本は法治国家のはずで、彼らは法律にもとづいて執行する警察とかの機関ですよね。そこが法律を無視して、人権侵害をやるとなると、これはもう、この国だめですよね、こういうことを許しちゃ。

 大義については、辺野古や高江についていろんな意見があるんだと思うんですけど、北部訓練所の返還が遅れるとか、いろんな意見はあると思うんですけど、この500人1000人の機動隊でやると。しかも法律の根拠がないのに強引に撤去するんだと、これはダメですよね。

 これを認めてしまったら、いろんなとこで前例になるし、いろんなとこでやりたいほうだいですよ。警察の正義という名前なら何でも撤去してよいという話になってしまいますから、それをされたらもう法治国家ではないと思います。

 曲がりなりにも彼らに大義があるなら、国会で法律を改正するなり、法律を通すなりしてからやってくれという話です」

「集団的自衛権のように、緊急事態条項も『フルスペック』では改正されないだろう…」~これから始まる憲法審査会に要注意!

原「最後に、話は少し変わるんですけど、緊急事態条項についてお聞きしたいと思います。参院選で改憲勢力が3分の2をとって、今度の臨時国会から憲法審査会で改憲議論も活発化すると思います。

 安倍政権がまっさきに新設したいと言っているのが緊急事態条項です。緊急事態条項には、地方自治体に内閣総理大臣がトップダウンで指示を与えることができる、という項目も入っていますので、沖縄も影響を受けるんじゃないかと思います。緊急事態条項については小口弁護士はかなり発信されています。教えてください」

小口「まず自民党の改憲草案に入っている緊急事態条項、あれは人によっては党案じゃない、と言うくらいですけど、ひどすぎてお話にならない。『朝まで生テレビ!』で、あの、百地教授でもですね、『これは問題が多すぎる』と言いました。0点のものですから、あれをあのまま強行するというのはありえないです。絶対国民投票で通るはずもない。だから私無理だと思っています。改憲勢力3分の2と言ったところで、公明党と、無所属の人たちと、大阪維新を取り込んで3分の2のはず。あんな緊急事態条項のまんまは、絶対通らないです。これはそう思います。

 彼らずっと1年以上憲法審査会お休みしていて、ようやく開く気になったみたいで、小さい緊急事態条項にたぶんしてくるだろうな、と思います。フルスペックの集団的自衛権、という議論がありましたが、同じように、フルスペックの緊急事態条項ではなくて、小さなものを出してくるのだろうと思います。結局のところそれに騙されてはいけないな、と思っています。

 そもそも第一次安倍政権で憲法改正のための国民投票法をつくって、第二次安倍政権で閣議決定をやって憲法の解釈を変えて、内閣法制局の解釈も変えて、安保法案も通したわけですね。その陰で安倍晋三氏は、自民党の憲法改正の草案を作っている。この道の一個でしかないんです。 どんな小さなものを出してきても、その先には憲法9条の改正、フルスペックの集団的自衛権の解禁も目論んでいるし、自民党の憲法改正草案も目論んでいる。その途中のワンステップを協力するかどうかというのが、発議されたときには国民投票で問われるところだし、公明党とかおおさか維新とかに対しても、これから憲法審査会で問われていくところだと思います。

 結局、安倍さんは憲法を変えたいんですよ。意地でも変えたいんです。これは、絶対おじいちゃんのためだと私は思っているんですけど。彼は一文字変えたいだけなんです。彼は一文字変えたいだけかもしれないけど、背後の人たちには、当然、より世界でかっこよくアメリカのために貢献できる国にしたい、と思っている人たちがいて、それで誇りを取り戻すんだという人たちがいて、そのためにはフルスペックの集団的自衛権を解禁する、という人たちはたくさんいるわけです。

 安倍さんの頭の中にどこまであるかは分かりませんけど、彼らが出してくる憲法改正はそのための道の途中でしかないので、それが透けて見えている以上、私は協力するつもりはまったくなくて、そこに穴があるなら正していかないといけないなと思っているんです」

「災害時の国会議員の任期延長に緊急事態条項は必要なし!」~災害と任期満了が被っても現状の憲法で十分対応可能!

原「なかなかやっぱりうまくて、任期延長規定というのは、一見そういうのがあっても良いかな、となりがちじゃないですか、民進党とかも乗ってますし」

小口「ここまで来ることは、私はわかっていたので、議員の任期の延長については、その必要性はまったくないんだということを、近々『マガジン9』さんで出します。ごく近い時期に出します。彼らがぐうの音も出ないくらい、論破したものを出します」

原「少し話してもらってもいいですか」

小口「すごく難しいので、一見問題なさそうに見えるんですけど、そうじゃないんだよ、という話を考えなければならない。任期が伸ばせるというのは、国会議員の地位をそのままにして、政権にとって都合の良い国会は温存することが一時的にもできるので、乱用の恐れは定め方によっては絶対ともなう。どういうふうに定めるのかがすごく実は大事で、その定め方によっては乱用の恐れは常に出てくるので、そこまでやる必要性があるんですか、という話で。

 もともと議員の任期延長の話が話題になったのは、衆議院の任期満了のときだけですよという話。衆議院が任期満了したことは、戦後一回しかない。そのときにたまたま大災害が重なるなんて、どんな話しているんですか、という。天文学的な数字の話なんですね、確率論的には。改正のために、しょうもない話をしているなあと、思うんですね。

 その上で、あれは憲法の不備だ、という人がいるんですけど、アホな話だと思っていて。一つは、どの憲法学者さんたちに聞いても、(国会議員の任期延長は)今の憲法でも解釈でできますよ、と言います。

 もう一つは、私が思いついたんですけど、一回行われた(任期満了にともなう)選挙というやつは、任期満了が12月9日だったんですよ。選挙は12月5日。基本こうやって、任期満了の前に選挙ってやるんです。原則そうです。

 そうすると、選挙の直前に災害が起きてしまって選挙ができない、任期満了迎えそうだ、というなら、ここで(任期満了前、災害後に)解散すればいいんです。そうすると『解散をした場合』に当てはまるので、今の憲法のまま、誰が見ても緊急集会を召集できるんです。あほか、という話です。内閣総理大臣が形だけ『任期満了まであと一日ですが、解散します』と、言えばいいだけです。だから憲法の不備でもなんでもない。

 それからもう一つすごく言いたいのは、あの参議院の緊急集会の制度は、GHQに押し付けられたものでもまったくない、ということです。あれはもともとGHQの案にはなかったんです。GHQの方は『条文がなくても、自然にできるんだ』と主張したけれども、日本国民は正直で真面目なので、『いやそうではないだろう』『条文に書くべきだ』と言って、いろんなやりとりをした結果できあがったものです。

 だから、よく安倍さんたちがいう『押し付けられた部分』ではない部分があるんです。日本発の制度で、すごくよくできているんです」 原「ちゃんと国会で議論されてできた部分なんですね」

小口「はい、すばらしいいいアイデアだと思いますね。あの制度があるからこそ、今までも緊急集会が開かれたことがあるし、70年こんな災害大国でもやってこれたわけですね。そんな日本発のものを潰すんですか、という話で、他国に例がないから、他国の真似をして日本発のものを潰すのは、彼らの一番キライとするところだと思うんですね。

 結局さっき話した、道の途中の話なんです。まず、憲法を変えたいという安倍さんの野望を達成したいわけです。その次は、いよいよ彼らの目指す方向に変えるだけです。本当に思うのは、彼らが『集的自衛権を解禁するんだ』『武力を強くするんだ』というなら、『米軍にお帰りいただきましょう』というのが普通だと思うんです。でも今は、『親米で武力を強くする』というんで、こんなことやった日には、アメリカさんに言われて海外に戦争しに行くだけですよ。それはすごく危険だな、と思います」

原「独立国のやり方ではないですね」

小口「ありえないですね。なんで彼らが日米地位協定の改定を一緒に叫ばないのか分からないし、なんで彼らが一緒に反辺野古を叫ばないのか、すごく不思議です。

 岡田さんが最初に言ったのが正しいと思っていて、『立憲主義を尊重しない、日本国憲法を正しく理解していない。あの安倍首相のもとではどんなものでも憲法改正はだめだ』と思います。議論もできない。(国会議員には)憲法尊重擁護義務というのが、まずあるわけです」 原「それをまず分かっていないから、守ることもできないんですね」

小口「分かっていない人たち、そして違憲状態の国会のもとでやる話じゃないです。そんな緊急性のある話じゃないですからね」 原「変えたいがために、なんとか必死に変えられるところを探しているという感じですよね。はい、ありがとうございました!」

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