2013年9月7日、京都市中京区の堺町画廊で、沖縄県東村・高江の米軍ヘリパッド建設を巡る住民の反対活動について、当事者である伊佐真次氏と安次嶺現達氏が語った。2人は反対活動の様子を記録した映画『標的の村』の、大阪での上映に合わせて関西を訪れた。「今後は、東京や大阪の人たちが、高江が抱える問題をどこまで考えてくれるかが重要」と異口同音に強調し、「本来なら1年間で高江の6カ所にできるはずだったヘリパッドが、6年間で1カ所しか完成していない。これは、私たちが座り込みを継続してきた成果だ」とも、口をそろえた。
- 主催あいさつ
- 映画『標的の村』予告編上映
- 話 安次嶺現達(あしみね・げんたつ)氏・伊佐真次氏(高江ヘリパッドいらない住民の会)
- 映画感想・質問
まず、映画『標的の村』の予告編が上映された。「全国ニュースから黙殺されたドキュメント」とのキャッチコピーがつけられた約2分間の動画は、沖縄の人たちが、在日米軍基地問題とどれだけ戦っているかを伝えるもの。会場のスクリーンには、実際に座り込みを行う高江の住民の姿などが映し出された。
2008年11月、当時8歳だった少女を含む高江の住民15人に、仮処分の申し立てが行われた。国策(基地建設)に反対する住民への国による弾圧で、予告編は、この一件にも触れている。その15人の中には、この報告会の主役である伊佐氏と安次嶺氏が含まれており、2人には後日、那覇地裁から妨害禁止命令が出されている。
「24時間体制で無休」の住民パワー
伊佐氏は「この計画は、訓練場の一部返還をうたった、事実上の新基地建設計画だった」と振り返った。高江でのヘリパッド建設計画が浮上したのは2007年のこと。「その内容は、半分は返還するが、返す場所にあるヘリパッドは別の部分に移設する、というもの。要するに、ヘリパッドの総数に変化はないものだった」。新型輸送機(オスプレイ)の配備など、基地機能の強化という米軍側の真の狙いが透けて見える計画であったことから、これが高江の住民にとって大いなるリスクだと判断した伊佐さんらは、「村・県議会はもとより、防衛省にも出向き、計画の撤回を求めたが、完全に無視された」という。そして、2007年のうちに工事が始まった。
ならば、最後の手段ということで、伊佐氏ら住民有志は、建設現場への工事用トラックなどの進入を阻止しようと、ゲート前への座り込みを開始した。それから6年余り。座り込みは、今も24時間体制で行われている。伊佐氏は「休みは、台風に襲われる時ぐらい。私たちの行動には、盆暮れ正月も関係ない」と、その徹底ぶりを紹介した。そして、「工事の業者には、私たちの思いを誠実に伝えるが、納得しない向きもある」とつけ足しながらも、次のようにアピールした。「本来なら、1年間で高江に6カ所できるはずだったヘリパッドが、6年間で1カ所しか完成していない。これは、私たちが座り込みを継続してきた成果だ」。
普通の人は「裁判」という言葉を怖れる
「ヘリパッドの建設が遅れているうちに、世論が高まることを願う」。伊佐氏はこう訴え、「今回の映画上映は、自分たちの反対活動の支援材料になる」とした。「東京でも大阪でも、映画館は大入りだった。高江の知名度アップにつながると思う」。一方の安次嶺氏もまた、「東京と大阪で、この映画をたくさんの人が見てくれた」と嬉しさを表明し、「映画を見た人が『沖縄の人たちは大変だ』と実感してくれれば嬉しいが、それで終わらせず、その思いを東京や大阪でできる反対活動へとつなげていってほしい」と要望した。
「住民が声を上げると、国が訴える。おかしな価値観が日本の社会にまかり通っており、私たちもその被害に遭った。だが、私たちは間違ったことをしていない」とも述べた安次嶺氏は、「そういう不当な圧力には、仲間が力を合わせて戦うことが大切。座り込みに参加している住民は10家族程度で、高江の全住民約160人から見れば少ないが、参加していない人たちも、本当はヘリパッド建設に反対なのだ。表立って行動しないのは、農業の補助金を得ているなど、役所への遠慮があるから」と説明。さらに、「国は住民に対し、『座り込みに参加すれば、あの人たちのように裁判に引っ張りこむ』と脅しをかけて、高江の民意の分断を図ろうとしてきた」と、自分たちは「見せしめ」にされたことを訴えた。その上で、「普通の人は『裁判』という言葉をとても恐れるが、私たち有志は『絶対につぶされまい』という強い気持ちで団結している」と力を込めて語った。