2016年2月4日にニュージーランドで行われたTPP署名式直前、国連人権高等弁務官事務所のウェブサイトに、TPP参加12ヵ国の政府に対して「現状では、民主的に選ばれた議会の責務として、TPPの署名を止めるか批准を止めるかの二択しかない」と呼びかける専門家の声明が掲載された。
この声明を出したアルフレッド・デ・サヤス氏は、国連人権理事会から任命された「独立の専門家」として、「民主的で公正な国際秩序」推進のため、その障害となる問題や提案を報告書にまとめ、国連総会や国連人権理事会に提出している人物だ。
サヤス氏は声明の中で、秘密交渉の産物であるTPPは「非民主的であり、『市民的及び政治的権利に関する国際規約』第19条および第25条に明らかに違反」していること、透明性および説明責任をはじめとする国際法の基本原則に違反している可能性があること、投資家が政府を訴えるISD条項は「規制萎縮」を招くため、廃止すべきであるなどの指摘している。
サヤス氏の呼びかけは、各国政府に向けたものではあるが、その中身はTPPについてよく知らず、政府にお任せしてしまっている国民が理解すべきものである。にもかかわらず、またしても、というべきか。一般のメディアではこの声明について黙殺されている。他のメディアが決して取りあげない中、常に一貫してTPP問題を取り上げてきたIWJが全文を訳したので、ぜひお読みいただきたい。