「どう考えても、38.5%の関税が9%にまで下がれば、影響があるに決まっている。それを『ない』とか『小さい』とか書くのは不誠実だ!」――。居並ぶ官僚に対し、宮崎岳志・民主党衆議院議員が責め立てた。
2015年11月5日、TPP交渉の「合意」内容について、民主党経済連携調査会(古川元久会長)が関係各省庁の担当者からヒアリングを行った。
農林水産物の品目別の影響については、コメ、麦、牛肉・豚肉など重要5品目を含む計40品目について官僚から説明があった。農水省が「分析」した資料では、TPPによる影響の説明に4種類の文言が繰り返された。
「輸入の増大は見込み難い」「影響は限定的」「特段の影響は見込み難い」「当面、輸入の急増は見込み難い」
根拠のない、判で押したような分析結果が読み上げられると、民主党議員からは怒気を含んだ声で批判が相次いだ。
宮崎議員の言う、関税が38.5%から9%に下がるのは牛肉だ。牛肉の関税率は、日米交渉で1991年に70%に設定され2年連続で10%ずつ下げた後、1994年から20年後の現在までの下げ幅は、11.5%だ(50%→38.5%)。
これが、TPPで16年後までに29.5%も下がるという。海外の安価な農産品が大量に流入することは、想像に難くない。「輸入の急増は見込み難い」などという官僚の主張が夢物語であることは、誰の目にも明らかだ。
緒方林太郎議員も「(日本の)牛肉の消費量は2000年から2013年までに20万トン減った。これから人口も減る。セーフガードを措置するといっても、その頃には国産牛肉が押しのけられて、日本の畜産がボロボロになっているのではないか」と詰め寄った。
- 日時 2015年11月5日(木) 14:00~
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
TPPによる影響――農水省は、評価分析も対策もコピペばかり!?
「もう少し丁寧に分析すべきだ」と批判したのは、佐々木隆博議員だ。
「牛肉もりんごも魚も合板も、まともに外国産の影響を受ける品種などがあり、それで暮らしている人々がいる。マクロで『限定的』というのは乱暴すぎる」
これに対して農水省の官僚たちは、おしなべてTPPによる影響を小さく評価しながら、やはり金太郎アメのように「長期的には(国産品の)価格の下落も懸念される」ことから、「さらなる競争力の強化」「生産性向上等の体質強化対策」が必要と、繰り返した。
これには、福島伸享議員が「安倍さんのせいで一つに洗脳されているんじゃないかというぐらい、全部がコピー・アンド・ペーストのよう」と皮肉った。また、「影響はないが、長期的にはあるかもしれないから対策が必要、という論理は、まるまるおかしい。まるでこれからの予算要求のための文言づくり。こういう影響があるから対策が必要と、はっきり言うべきだ」と、政府の姿勢を批判した。
対策の「コピペ」文言には、小山展弘議員も苦言を呈した。
「『生産性の向上等の対策・強化が必要』と説明するが、規模を拡大して生産性を向上すればするほど苦しくなっていくところも出てくる。あまりにも画一的に答えすぎだ。もっと誠実に答えてほしい」。
相次ぐ指摘にも、省庁側から納得のいく答えは出なかった。民主党からは、「細やかな分析」を行い、提出するよう「宿題」が出された。
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