政府が国民に付けた「背番号」の配布が、いよいよ始まった。マイナンバーの「通知カード」の郵便局への差し出しがスタートした2015年10月20日、高市早苗総務大臣は、「国民生活にとって重要な基盤となる制度だ」と胸を張った。しかし、この制度には情報流出リスクなど多くの問題が指摘されており、これに対して政府は国民に対して十分な説明ができているとは到底言えない。
高市大臣はこれまで、各自治体の庁内ネットワークの強化や都道府県単位などにインターネット接続口を集約することで、高度な監視体制を敷くと強調している。しかし「マイナンバー先進国」である米国では、6月に約2150万人の社会保障番号(SSN)が流出。10月にはCIA長官の私用メールが高校生にハッキングされ、10人以上の情報機関高官の社会保障番号が流出したことが発覚している。
万が一、日本でマイナンバーが大量に流出してしまった場合の責任の所在はどこにあるのか。このような場合にも、流出させてしまった自治体役所が謝罪するだけなのか——IWJ記者の質問に対し、高市大臣は「やはり総務大臣が責任を負うべきものだ」と断言した。
そして、その「万が一」が起きない努力として大臣は、「各自治体にも、しっかりと徹底をしながら、そして総務省では(セキュリティ対策の)研究開発もしており、しっかりと、最高のセキュリティ水準が維持できるよう、他国の例も十分に勉強しながら、頑張ってまいりたい」と述べた。
- 日時 2015年10月20日(火) 14:15頃~
- 場所 総務省(東京都千代田区)
大臣「番号変更はできます」 でも最終判断は「自治体」!?
さらにIWJ記者はもう一点、マイナンバー制度の重大な瑕疵を明らかにした。
マイナンバーは住民票に登録された住所に通知が届くため、例えばDVを受けてシェルターなどに避難している被害者の通知カードが、加害者のもとへ届いてしまう可能性がある。
総務省は通知カードが送付される住所地の変更を申し出る「居所登録」を今でも受け付けていると言うが、通知カードの送付準備はすでに始まっており、今から申請された分について変更は間に合わない。
10月6日の会見での、この点に関するIWJ記者と大臣の質疑応答は以下のように行われた。
IWJ記者「番号変更の手続きがDV被害者とかの場合に考えられるということをおっしゃられていたと思うのですけども、先日内閣官房に確認したところ、実際に変更すると認める際の具体的な基準はまだ無いと。明確に被害が出たら変更に応じると言われました。総務省では、内閣官房とは違って、番号が漏れたらもう変更するということでよろしいのでしょうか」
高市大臣「意図せずナンバー入りの住民票を発行されて、それを第三者に提出してしまったような場合に、やはり自分の個人番号が第三者に知られてしまったということで、番号の変更をお願いしたいという方もいらっしゃると思いますので、ここはしっかりと適切に対応してくださいという助言を行っておりますから、各自治体でその必要がある場合には、番号の変更はできます」
高市大臣は「番号の変更はできます」と断言したのだ。
しかしその後、IWJが総務省に問い合わせたところ、「実際に変更するかどうかは、自治体の判断になります」との回答だった。大臣と官僚で認識が食い違っている状況が明らかになった。
また、番号変更に関する先の質問に対し高市大臣は、10月13日に茨城県取手市が、本人の意思確認をせずにマイナンバーを記載した住民票を誤発行してしまったケースに触れ、各自治体に再発防止と適切な事後対応の助言を行ったことに言及。
「意図せずナンバー入りの住民票を発行されて、それを第三者に提出してしまったような場合に、番号の変更をお願いしたいという方もいると思うので、ここはしっかりと適切に対応してくださいという助言を行っている」と述べた。
これに関しても、IWJ記者が三鷹市や逗子市の市町村に確認をしたところ、「ケースバイケース」という非常に曖昧な答えしかなされなかった。
政府と自治体の間にも、大きな認識の差があることが明らかにされた。このような状況で、本当にマイナンバーを与えられる人たちの安全は守られるのだろうか? 大いに疑問だ。
大臣と自治体のコメントは、食い違っていないかとおもうのですが。。。
各自治体でその必要がある場合には、番号の変更はできます
2015/10/20 マイナンバーをめぐる政府と自治体の認識が食い違い! 「番号変更はできます」と大臣は明言、でも自治体の対応は「ケースバイケース」! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/271160 … @iwakamiyasumi
IWJの記者が質問しなければ分からなかった事実。
https://twitter.com/55kurosuke/status/657664043956719617