いったい何度目の「速やかな合意に意欲」「最後のチャンス」なのだろうか。
いや、そもそも誰の利益のための「合意」「チャンス」なのか。
米国でTPP交渉を主導するフロマン通商代表は2015年9月22日に行った講演で、TPP交渉の速やかな合意に改めて意欲を示した。他方、日本側の甘利明TPP担当大臣は、18日の閣議後会見で、「現体制での最後のチャンスだ」と強調した。TPP参加12カ国は、来週9月末にも米アトランタで閣僚会合を開く方向で調整している。
TPP交渉に前のめりな日米両国政府は、これまで何度も「これが最後」と、早期妥結を訴えかけてきた。日米両国が前のめりな姿勢を見せるたび、皮肉なことに交渉はますます難航し、漂流化の可能性が公然と噂されるようになった。そんななか、日本は積極的に米国やその他関係各国と2国間交渉を行い、「譲歩」を進めている。仮にTPPがご破算となっても、2国間合意によって、多国籍企業による収奪の構造を固定化する腹づもりだ。
そう。TPPはグローバルな巨大資本による、ローカルな中小資本や諸国民からの収奪を、国家が制度化して後押ししてゆくことに他ならない。損失を被るのは一般の国民である。
農業だけでなく、食の安全、公的医療制度や保険、労働、公共事業、知的財産に関わる制度などに重大な影響を及ぼすTPP。国民の生存権や幸福追求権などを侵害するものであるとして、山田正彦元農水大臣など1600人以上が原告として立ち上がった「TPP交渉差止・違憲訴訟」の第1回口頭弁論を9月7日に行われ、その後、原告らが報告集会を行った。
弁護団長である山田氏、傍聴人が法廷に入りきらないほど集まり、さらにこの報告集会も満員となったことをあげ、「国民のみなさんがTPPに非常に不安を持っている。これは何とかしなければいけないという気持ちの表れだ」と語った。今後の裁判日程は、次回が11月16日、さらに2月22日が決まっている。