なぜ、非常事態に人権を停止し、内閣の権限を強化する「国家緊急権」などを憲法改正で導入しようとするのか。「国家緊急権がない国は日本くらいだ」という指摘もあるが、これは「詭弁」であり、今から憲法に明記する必要はない。
では、その背景にはどのような思惑が潜んでいるのだろうか。
5月1日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で、「災害対策を理由とする『国家緊急権』(緊急事態条項)の創設に反対する被災地弁護士会による共同記者会見」が開かれた。
集会で、兵庫の永井幸寿弁護士は、自民党が創設を目指す「国家緊急権」は「ナチス以上」の強権性を帯びていると指摘した。
- (説明員) 兵庫県弁護士会・永井幸寿氏/兵庫県弁護士会・津久井進氏/新潟県弁護士会・二宮淳悟氏/岩手弁護士会・吉江暢洋氏/仙台弁護士会・山谷澄雄氏/福島県弁護士会・渡邉真也氏
- 日時 2015年5月1日(金) 14:00~
- 場所 弁護士会10階1006号室(東京都千代田区)
戒厳のもとで起きた「朝鮮人虐殺」 過去の反省をわすれてはならない
兵庫県弁護士会の元副会長の永井幸寿弁護士は、国家緊急権の定義について、戦争や災害の際に、国家権力が国家の存立を維持するという名目で、「人権の保障」と「権力の分立」を一時的に停止することであり、つまりは「憲法を一時停止すること」に他ならないと説く。
永井氏は「国家緊急権は歴史的に多くの国で濫用されてきた」と指摘する。
「政府は緊急事態の宣告が正当化されない場合も宣言しがちで、危難が去ったあとも緊急措置を延長しがち。人権を過度に制限し、司法の抑制も効かない場合がある」
かつての大日本帝国憲法では、天皇が「戒厳」を宣言すれば、国の統治作用の大部分が軍事官憲に移譲することが許された。当初は「戦争、もしくは事変」に限定されていたが、のちに拡大し、震災などの際も発することができるようになった。
関東大震災(1923年)で戒厳が実施され、軍の指示のもと、市民らが組織した自警団が朝鮮人らを大量虐殺したことは忘れてはならない。
緊急事態時の総理権限と知事、市町村長の市民を「処罰」もできる「強制権」
こうした濫用の反省を踏まえ、現行の日本国憲法では、あえて国家緊急権を設けなかった。しかし、非常事態への対応は必要であることから、厳重な要件のもと、災害対策基本法などの一般法で、緊急事態への対応が法整備されている。そう永井氏は説明する。
災害対策基本法では、「国の経済および公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚」な災害が発生した場合などは、内閣総理大臣が「災害緊急事態」の布告を発することができると定められている。
国民に物資をみだりに購入しないことの協力要請、行政機関の長などへの指示、自衛隊などの派遣要請、一時的な警察の統制など、こうした権限を総理大臣が持つことができると、現行法ですでに規定されている。
さらに、災害救助法などでは、「都道府県知事の強制権」として、医療従事者、土木関係者、輸送関係者を救助業務に従事させることなどもでき、これに従わない者には罰則を科すこともできる。こうした強制権は、災害対策基本法などで、市町村長にも付与されている。
「平時の憲法体制」しか持たない国は日本くらい? すでに非常事態法は存在する!
「新型インフルエンザ対策特別措置法」などでも同様に、総理大臣や地方自治体の首長の権限を強化し、対策にあたることができると規定されている。もちろん、憲法を改正して国家緊急権を導入しようとする安倍政権も、こうした法律がすでに整っていることは十分にわかっており、内閣府のホームページには、「東海地震対策(※)」のページに、災害対策基本法の「災害緊急事態」の条文が明記されている。
駒澤大の元教授・西修氏が調査したところ、1990年から2008年までの間に新憲法を制定したスイス、フィンランド、タイなどの93カ国では、どの国にも憲法に国家緊急権が含まれているという。産経新聞はこれについて「非常事態に正面から向き合おうとせず、『平時の憲法体制』しか持たない国は日本くらいだ」などとしている。
しかし、永井氏は、そもそも「日本では実質的な災害時の国家緊急権に相当する制度は法律で制定されている」と反論。憲法を改正し、国家緊急権を盛り込む必要性はない、と指摘した。
自民党・国家緊急権はナチス以上!? 全権委任法も含まれた「国家緊急権」の正体
永井氏の危機感は、「ナチス」の陰とともに表れた。
10年以上前になるが、震災時に朝鮮人虐殺を再現したい都知事(当時)による『三国人発言』については決して忘れることが出来ない。また、最近の広島の土砂災害では在日外国人による犯罪を触れ回っていた連中がいたが、災害時に故意に民衆の不安に付け込んで在日外国人を虐殺をさせたい集団がいることを強く意識しなければならない。
また、こういうおかしな集団と自民党政権の政策の根拠になる想定が何故か一致することから、おかしな集団への自民党の関与を強く疑わずにはいられない。自らが放火をしながら他党の仕業だと断定したヒットラーのナチスの手法を思い出し、『ナチスのやり方』云々と発言した議員が現閣僚であることも強く意識すべきである。
自民党が憲法改正で盛り込む「国家緊急権」はナチス以上!? 大震災の被災地で動いた弁護士らが全権委任法も含まれた国家緊急権の「正体」に迫る! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244316 … @iwakamiyasumi
福島原発事故で必要だったのは国家緊急権ではなく「防災計画」。
https://twitter.com/55kurosuke/status/605962459589935104
自民党が憲法改正で盛り込む「国家緊急権」はナチス以上!? 大震災の被災地で動いた弁護士らが全権委任法も含まれた国家緊急権の「正体」に迫る! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244316 … @iwakamiyasumi
国民の自由と権利は「恣意的な」緊急事態によって奪われる。
https://twitter.com/55kurosuke/status/656701215930122241
自民党は平成27年10月に自民党改憲草案Q&A増補版を出しました。改憲草案98条第1項で、緊急事態とは、まず、外部からの武力攻撃、つぎに内乱等の社会秩序の混乱、そして大規模な自然災害としていることから、災害だけでないことが明らかになりました。それぞれ、現行の国内法があります。自民党はそれでは足らないと考えているようです。なお緊急事態の例は、災害ではなくミサイル発射への迎撃です。
もうひとつ、改正草案99条第3項にある、最大限に尊重される基本的人権とは、改正草案の条項であって基本的人権に制限が加わっています。Q&Aには、武力攻撃事態対処法の第4条の後段そのままと解説されています。しかし、武力攻撃事態対処法の第4条前段にはまず、現行日本国憲法の保障する国民の自由と権利の尊重が記されていますが、改憲草案ではそれは一顧だにされていません。
仮に緊急事態の9章だけ優先して改正しようとすると、現行憲法の基本的人権についての条項をひとまず尊重することになります。それを自民党はしたくないでしょう。
そこで、記事にあるように、政府与党が、緊急事態に関する条項だけ改正したのち、現行憲法に違反してまでも基本的人権を、強引なことに、改憲草案にのっとり制約にかかる恐れが確かにあると思います。