「年間20ミリ基準」を司法の場で争う時が来た――福島県南相馬市の住民534人が国を相手に提訴「避難勧奨解除は違法」経産省前で解除撤回を求め訴え 2015.4.17

記事公開日:2015.4.20取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

※4月20日テキストを追加しました!

 国による一方的な「年間20ミリシーベルト」基準が、初めて、司法の場で争われることになった――。

 福島県南相馬市の住民132世帯534人が、2015年4月17日、国の「特定避難勧奨地点」解除は違法だとして、1人あたり10万円の慰謝料と解除の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。提訴に先立ち行なわれた経済産業省前でのアピール行動で、住民の1人は、いまだ毎時10〜20マイクロシーベルトを測定するホットスポットが点在している中、昨年2014年12月末の解除後、住民がほとんど帰還していない現状を訴えた。

 これまでも、解除撤回を求めて行政交渉を重ねてきた住民らが提訴に踏み切った背景には、一方的な解除によって打ち切られた賠償や、解除にあたっては「住民の理解を得ること」という約束を政府自らが反故にしたことへの不満がある。住民の1人は、「ここで南相馬市が許可をしてしまったら、(年間)20ミリシーベルトが国際基準になってしまう」と話し、後の世代に禍根を残さないための、やむを得ない手段でもあると訴えた。

記事目次

■ハイライト

住民らの提訴に対し、政府が司法記者クラブに反論FAXを送付

 提訴当日、原告らが東京地裁に訴状を提出して間もなく、記者会見を予定していた司法記者クラブに、ある1通のFAXが届いたという。「福島県南相馬市における特定避難勧奨地点の解除について」と書かれたそのFAXは、内閣府原子力被災者生活支援チームから送られていた。

▲訴訟当日の4月17日、内閣府原子力被災者生活支援チームから司法記者クラブに届いたFAX

 A4版1枚の文面には、「年間20ミリシーベルトを十分に下回る状況になっていることを確認し、解除に当たっては、丁寧に住民の理解を得るべく、住民説明会を行なった」とある。つまり、今回の提訴に対する政府の反論が箇条書きに記されていたのだ。原告らが集まる記者会見の場に、なぜ、このようなFAXを送ったのか。IWJは内閣府の原子力被災者生活支援チームに問い合わせた。

 「関係者が政府の取り組みを全て知っているわけではない」

 担当者の清水氏によれば、同じFAXは司法記者クラブ以外にも、経産省や福島県政の記者クラブに送付したという。理由を聞けば、報道関係者等が、今回の指定解除に対する政府の取り組みを、すべて知っているわけではないからだという。

 しかし、送られたFAXに書かれている内容は、これまで、南相馬市の住民が繰り返し耳にしてきた政府の言い分であり、住民らの生活や健康を守る新しい取り組みは何一つ、書かれていない。清水氏は、提訴から3日が経っても、いまだに、訴状を見てもないという。提訴に踏み切った住民の気持ちを理解していない、国の危機感の無さが露呈した。

 清水氏は、高線量が残る現状の中で、もし健康被害が生じた場合はどう対応するのか、というIWJの問いに対して、「本当に心配がないと、今後も誠意を持って伝えていきたい」と話し、「政府の対応は大丈夫だという確信を持っている」と付け加えた。

「年間20ミリシーベルト問題」で国と争うのは初

 しかし、内閣府がFAXで主張する取り組みには、多くの論理矛盾がある。

 同日4月17日に、原告団の1人、河崎健一郎弁護士がIWJのインタビューに応じ、提訴に踏み切った理由や裁判の争点となる問題点について説明した。

▲徹夜で訴状を書き上げたという弁護士ら。河崎健一郎弁護士(中央)は「原発事故子ども・被災者支援法」の成立にも携わった

 「今の(南相馬市の)放射線量の状況を考えたら、避難解除はあまりにもおかしいし、意思決定の過程も一方的で、住民の意向を反映していない。行政交渉をこれまでずっと続けてきたが、押し切られる形で解除が行なわれ、賠償もすでに打ち切られている。生活に直接影響がある話なので、黙っているわけにはいかないと相談があり、今回の訴訟提起となった」

 政府は、年間20ミリシーベルトという基準について、国際的・科学的知見を踏まえていると主張するが、元になっているICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に、政府はそもそも反している。これまでもたびたび指摘されてきた事実について、河崎弁護士が言及した。

(…会員ページにつづく)

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「「年間20ミリ基準」を司法の場で争う時が来た――福島県南相馬市の住民534人が国を相手に提訴「避難勧奨解除は違法」経産省前で解除撤回を求め訴え」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「年間20ミリ基準」を司法の場で争う時が来た―福島県南相馬市の住民534人が国を相手に提訴「避難勧奨解除は違法」経産省前で解除撤回を求め訴え http://iwj.co.jp/wj/open/archives/242858 … @iwakamiyasumi
    後の世代に禍根を残さないための勇気ある行動。これが大人の責任。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/590288373752811520

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