築地市場で約30年間、仲卸の仕事に従事してきた中澤誠氏をスピーカーに招いての講演会「築地市場から食の流通を考える」が、2014年8月30日に東京・高円寺のセシオン杉並で開かれた。
「築地市場の鮮魚類の取扱量が、バブル期をピークに、なぜ下降に転じたかについて論じてみたい」と表明した中澤氏は、国の「規制改革」で変化した築地市場と食の流通について言及した。
また、築地市場移転の問題にも触れた中澤氏は、すでに豊洲新市場建設工事が始まっている中で、移転反対の世論を軽視していない農林水産省が「工事中止」の勧告を行うかどうかが焦点だと指摘した。
- (講演に先立って上映されたDVD「ドキュメント築地市場移転」は録画に含まれません)
- 講演 中澤誠氏(東京中央市場労働組合書記長)
- タイトル****
- 日時 2014年8月30日(土)
- 場所 セシオン杉並(東京都中野区)
- 主催 水脈の会
セリ取引で守られてきた中小零細店
スピーチ序盤で中澤氏は、今の築地市場が機能的に決して劣っていないことを、画像を使って説明した。「築地市場のような『吹きさらしの構造』の方が、食品は安全だという説がある。風を遮るものがないと、複数の菌が混在しやすくなるため、ある種のバランスが保たれる」。最近主流の、その場所を密閉して内部を殺菌するやり方だと、特定の菌が異常繁殖する恐れがあるというのだ。
そして、スピーチの主題のひとつである、地域密着型の鮮魚店や寿司店が潰れている現状については、まず、築地市場の場外にある(=市場に隣り合う)飲食店の人気が相変わらず高い点を捕まえて、このように話した。
「東京の各地域に存在する比較的規模の小さい鮮魚関連店を、仲卸を通じて守るために存在するのが、築地市場であることを認識してほしい。つまり、築地場外の飲食店が、東京のあちこちから人を集める(=各地域の客を奪う)のは、本末転倒的な現象なのだ。築地でお寿司を食べて美味しいと感じたら、そのあとは2度3度と、ぜひ地元のお寿司屋さんに足を運んでほしい」。
築地市場で長い歴史を持つセリ取引(大勢の買い手による競争値での取引)は、中小零細店向けの制度だ、と中澤氏は口調を強める。そして、築地を含む日本の卸売市場では、伝統的なセリ取引が、近年、相対取引(売買業者による直接取引)によって凌駕されつつあることに懸念を表明した。
卸売市場を通さない相対取引が増えているということは、「これを全部買うから、いくらで売ってくれ」と、大手量販会社が購入力にものを言わせる「買い叩き」が横行していることを物語っている、と中澤氏。2000年の大店法廃止を後ろ盾にした大手スーパーの商圏拡大や、回転寿司チェーンの台頭などによって、中小零細の鮮魚関連店らが苦境へと追いやられている実態を強調した。
「規制誕生」の理由を忘れてしまった日本人
魚屋さんや寿司屋さんの激減は、被ばくの影響かと思いきや新自由主義の影響だったとは。
お店を閉めていくのを目の当たりにすると、
街や家族の年中行事や冠婚葬祭に密接に関わってきた、ハレとケが寂しくなっていく感じ。
お客さんのおもてなしに魚屋さんにお刺身の盛り合わせを頼んでおいたり、お祝いにお寿司を食べに行ったり。
身内の中だけの記憶かと思えばそうでもなく、入学式の帰りにお寿司を食べに行った日のことを、何年たっても板前さんがが覚えている。
街や家族の思い出がお店にも綴られていた。 閉店したお店を、店主を、ご馳走を、忘れないようにしようと家族で話しました。
それとともに、まだ残っている地元のお店ののれんをくぐって、またハレとケを共有していきましょうと。