「石垣市長選の選挙期間中、『石垣島に自衛隊基地を作る』という報道があった。それを自民党県連が問題にし、石破幹事長が日本新聞協会に圧力をかけた」──。山城博治氏は「最近、沖縄の地元紙に対する権力側の攻撃が露骨になってきた」と懸念を表明した。
2014年3月8日、大阪市東淀川区の協同会館アソシエで、「辺野古埋め立て許さない!オスプレイNO!全国キャラバン出発集会」が開催され、沖縄平和運動センター議長の山城博治氏が講演を行った。主催の沖縄意見広告運動は、山城氏を隊長に、3月24日から全国キャラバンを展開する。
山城氏は「尖閣をめぐって紛争が起きれば、与那国、石垣、沖縄は壊滅する。しかし、圧倒的に、本土の世論は政府と同じ。沖縄に基地を押し付けておけばいい、戦争になったら沖縄で止めればいい、という考えだ」と指摘した。
また、集団的自衛権の行使について、「尖閣の問題は、安保で間に合う。沖縄の米軍は、日米安保条約で日本を守るためにいる。他国への派兵はできない。『沖縄から公海に出て、そこで(派兵の)指令を受ける』というのが彼らの理屈だ。もし、日本が集団的自衛権を行使できたら、米軍は自衛隊も連れて、戦争へ出撃することになる」と危機感を募らせた。
- 講演 山城博治氏(沖縄平和運動センター)
- アピール
- 日時 2014年3月8日(土)18:00~
- 場所 協同会館アソシエ(大阪府大阪市)
- 主催 沖縄意見広告運動・関西事務所
安倍内閣になり、右翼の恫喝が始まった
まず、司会者から本集会の趣旨、沖縄意見広告運動の活動を紹介した。開会あいさつには、連帯ユニオン関西支部副委員長の柳充氏が立ち、「安倍首相は、戦争のできる国作りを着々と進めている。一番怖いのは、教育改革をもって洗脳しようとしていることだ。消費増税も、社会保障費より軍事費のためだ」とスピーチをした。
続いて、山城博治氏が登壇。「この全国キャラバンを通して、さまざまな問題を、みんなで考えるように啓発したい。原発をなくし、戦争をしないことを訴えていきたい」とし、次のように続けた。
「オスプレイが普天間基地に配備されて2年近く経過した。最近、在特会や右翼団体が、オスプレイ反対運動をしているゲートなどに押しかけてきて、小競り合いが起きるようになった。今までは、こういうことはなかった。安倍内閣になってからだ。彼らは、カメラがないところで刺青を見せ、『命はないぞ』と恫喝するなど、すさまじいものがある」。
基地反対運動に「刑事特別法」を適用?
山城氏は「尖閣の状況は、臨戦体制だ。日中どちらかが発砲したら、即、戦争になるような緊張感を、沖縄にいると感じる。安倍首相は、むしろ、それをけしかけている。戦争をするためには『軍備、法制度、反対世論の抹殺』の3点セットが必要だが、これがそろったら戦争が始まる」と述べた。
「安倍首相はひどすぎる。4月から辺野古基地建設を強行するというが、国会では『反対運動には刑特法(刑事特別法)を適用しろ。事前に、反対する人間を摘発しろ。名護市から野党議員や活動家を閉め出せ』などと発言している。これから、反対運動が弾圧されることは明らかだ」と危機感を表明。「それを踏まえて弁護団を呼び、市民で勉強会を催し、刑特法の対抗手段を考えている。市民が団結し、決して屈服してはならない」と訴えた。
『沖縄タイムス』『琉球新報』を弾圧する動き
続けて、「沖縄県議会が始まった。仲井眞知事は『信頼がなくなったから辞職しろ』と言われても、開き直って辞任しない。彼は元官僚だけあって、百条委員会で追求しようとしても、上手に逃げる」と批判した。
また、「一昨日、県議会の一般質問で、自民党県連の照屋守之幹事長が『沖縄タイムスと琉球新報の報道は偏向しているから規制せよ』という異例の発言をした。これは、言論弾圧ではないか。このような権力側の強引さは目に余る」と強く憤った。石垣市長選の際、琉球新報の『石垣島に自衛隊基地建設の予定』という報道に対し、自民党の石破幹事長が、日本新聞協会に圧力をかけたことにも触れた。
さらに、2月12日、石原慎太郎議員が、衆議院予算委員会で「自衛隊の交戦規定を作れ」という発言をしたことを問題視。「平和憲法、などと発言したら、ヤジや怒号でかき消されるのが、今の国会」と憤り、「平和な暮らしを守るのは軍隊ではなく、平和を通じて、中国、台湾などと一生懸命、話し合うことだ」と主張した。
次の沖縄知事選は「オール沖縄」で迎え撃つべし
「日本政府が丸ごと攻めてきているのなら、沖縄全部が一丸とならないと抵抗できない。オール沖縄だ」と力説する山城氏は、今年11月の沖縄知事選挙の候補者について、「オール沖縄にふさわしければ、誰でもOKだ。保守を立てれば『規制緩和の推進だ』、共産党や社民党が出たら『応援できない』などと言い合っていたら、勝てない。次に負けたら、沖縄は死ぬ」と言明した。
「そもそも、名護市の稲嶺市長は自民党保守で、以前は、自分たち労働者側とよくぶつかっていた。稲嶺市長のキャッチフレーズは『海にも陸にも基地をつくらせない』。『辺野古新基地建設反対』という表現だと、革新のイメージが強すぎて、保守層がついて来れないからだ」と述べ、これからの選挙戦略を語った。また、元自民党県議会議長の仲里利信氏が、稲嶺市長の応援をしたことには、「新しい沖縄の動きが出てきている」と評価した。
「沖縄には泣いてもらう」と安倍首相
「第2次世界大戦では、軍部や政府幹部が責任を追求されるのを恐れ、ずるずると引っ張り、300万人もの犠牲者が出た。今、日本政府を見ていると、あの時と同じような人間たちが、また、同じことをやろうとしているように思える。安倍首相は、戦争をしたくてしょうがない」。
このように現状を危惧した山城氏は、最後に「尖閣諸島周辺の操業を認める日台漁業協定が、昨年4月にスタートしたが、台湾漁船があまりにもえげつなく操業するので、沖縄の漁業は被害甚大だ。ところが、安倍首相は『沖縄には泣いてもらおう』と言った」と憤り、「戦争をさせない。暴走を許さないように、活動を続けていく」と決意を表明してスピーチを終えた。
基地反対運動を、秘密保護法で弾圧
続いて、キャラバン隊のアピールに移った。沖縄意見広告運動関西事務所の西山直洋氏らが、「沖縄の民意を全国に伝えていく。3月24日、四国から始める。4月12日からは第2弾として、中国、九州を回る」と予定を発表した。
前衆議院議員の服部良一氏は「和歌山県が、白浜での災害対応訓練に、オスプレイを取り入れるという。日本の平和をしっかり闘いとることが、ますます重要になった。特定秘密保護法は、基地反対運動の弾圧につながる。廃止を訴え、安倍政権を引き下ろすため、とことん戦っていく」と訴えた。
京丹後市経ヶ岬の米軍Xバンドレーダー基地反対・近畿連絡会事務局長の山本氏は、「基地予定地では、地権者の最後の1人が土地を譲らなかった。防衛庁は、その土地を図面からはずして、今年4月から着工する。しかし、昨年12月、土地の賃貸借契約に応じた1人が更新を拒否。米軍基地計画撤回署名運動を始め、宇川町は、237軒のうち225軒が反対署名をした。また、米軍住宅建設予定地がある集落では、過半数の反対票を集め、阻止しようとしている」などと現況報告をした。
続けて、500回目を迎えた「辺野古に新基地を作らせない大阪行動」の参加者が、警察の弾圧や右翼の嫌がらせの酷さ、名護市での活動で感じた沖縄市民の熱い思いを語った。岩国労働者反戦交流集会実行委員会の田島氏は、山口県のとても保守的な土地柄と、その中での活動の様子を報告。最後に、全日本港湾労働組合大阪支部の山本委員長が、閉会のあいさつを述べて終会した。