「凡庸であってはならない」――。自民党・安倍政権が主張する憲法96条先行改正論に反対する「96条の会」発起人で、憲法研究者の奥平康弘東大名誉教授が講演を行い、改憲論議が盛んな現在の日本社会に対して、このような言葉で警鐘を鳴らした。
この日、奥平氏が講演の中で紹介したのが、ドイツの哲学者ハンナ・アーレントの著作『イェルサレムのアイヒマン』。ナチス・ドイツの親衛隊(SS)の隊員であり、数百万のユダヤ人を強制収容所に送ったアドルフ・アイヒマンは、戦後、イスラエルの諜報組織モサドにより捕らえられ、イスラエルの首都エルサレムで裁判にかけられた後、絞首刑に処された。そのアイヒマンを、アーレントは「アイヒマンは極悪人では決してなく、凡庸な小役人に過ぎなかった。しかし、凡庸であったからこそ、ためらいなくホロコーストに関与し得た」と分析している。
奥平氏は、憲法改正が叫ばれ、ヘイトスピーチが平然と行われる現在の日本社会には、まさにアイヒマンが体現するような「凡庸」さが蔓延していると指摘する。そして「思考しないということは、現在の危機を助けるということだ」と語り、個人として思考し、「凡庸であること」を避けることが大切だ、とこの日のシンポジウムに詰めかけた聴衆に訴えかけた。
パネルディスカッションに登壇した一橋大学・阪口正二郎教授(憲法学)は、昨年4月に発表された自民党の憲法改正草案の内容を批判。また、現在の安倍政権は解釈改憲により集団的自衛権の行使容認を狙っていると指摘した。
先日、安倍総理の肝いりで小松一郎元駐仏大使を登用した内閣法制局長官の人事について阪口氏は「集団的自衛権の行使を容認させるためのもの」と明言。政府にとって解釈改憲の最大のネックは内閣法制局であり、その長官に行使容認派の小松氏を据えることで、政府主導で集団的自衛権行使容認を進める意図があると指摘した。
奥平康弘名誉教授のいわれる「凡庸」を脱するきっかけは手の届く処まで来ている。と思います。
篠田英朗氏(東京外大)よる「自民党改憲草案の世界」の分析が新鮮でとても印象に残りました。
APIのICUの学生さんが「なんで戦争があるんだ?」と言ってましたが、それは「資本」だと思います。資本は敵も味方も関係ない。ただ儲かればいいのですから。