「汚染水問題に抜本的解決策は見当たらない。原発は人類の手に負えないものと再認識すべきだ」~汚染水流出問題を考える府民の集い 2013.9.23

記事公開日:2013.9.23取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 京都市下京区の下京いきいき活動センターで、9月23日、「汚染水問題を考える京都府民の集い-福島原発汚染水流出問題は解決できるのか-」が開かれた。福島第一原発の高濃度放射性汚染水の問題で、外洋への流出を知らせるニュースが流れたのを受け、市民の間には事故の真相や海外の反応を知りたい欲求が高まっている。集会では2人の専門家が、こうしたニーズに応えようとした。

■全編動画

  • 内容
     「福島原発の汚染水とその漏えい」木原壯林氏(京都工芸繊維大学名誉教授)
     「世界から見た福島の汚染水問題」アイリーン・美緒子・スミス氏(グリーン・アクション代表)
  • 日時 2013年9月23日(火)
  • 場所 下京いきいき活動センター(京都府京都市)
  • 主催 汚染水問題を憂うる京都府民有志(告知

 「今日は、かつて東海村の原研(日本原子力研究所)に勤めていた木原壮林さんに『サイエンス』の立場から放射性汚染水問題を解説してもらおうと思う。また、反原発の非政府組織、グリーン・アクション代表のアイリーン・美緒子・スミスさんにもスピーチをお願いする。原発事故の海外からの見方について語ってもらいたい。この集会が、汚染水問題をきちんと議論するための情報を提供できる場になれば、と思う」。主催者を代表した内富一氏によるあいさつで、集会はスタートした。

 木原氏は開口一番、「福島第一原発から流れ出た放射性汚染水は、やがて全地球規模での海洋汚染に発展する」と切り出し、「汚染水問題は、政府や東電にとって手に負えるものではない。だから彼らは、真実を隠蔽して、世界を欺こうとしているのだが、国民はそれをとがめようとしない」と懸念を表明した。「汚染水300トンがタンクから流出したニュースがあったのは、参院選の後のこと。これは事実隠蔽の象徴ではないか」。

ALPS(アルプス)は本当に頼りになる?

 木原氏は、メルトダウン時に行われた、ヘリコプターや消防車を使った大量の冷却水注入だけでも、福島第一原発の敷地内の土壌を「放射能汚染」させるのに十分だったとし、「汚染された土壌から、地下水とともに放射性物質が海に流出している、と見るのが妥当だ」と主張した。また、「メルトスルーした核燃料は、たまたま地下水によって冷却されている可能性がある」とも指摘。「現在、山側の地中に遮水壁を作って、地下水の流入を食い止める案が浮上しているが、それを行えば核燃料の冷却が損なわれ、別の深刻な問題が発生する恐れがある」と警告した。

 木原氏は、東電や政府が掲げている「汚染水対策」は、どれも完璧ではないと訴えた。まずは、水ガラスを注入した土の壁。「地下水の詳しい流れが不明なのに加え、壁をどこまで深くすれば有効かという疑問も残る」。そして、原子炉建屋の手前で流れ来る地下水を汲み上げて、海に捨てればいいとの考え方については、「タンクからの汚染水流出で手前部分も危険であることは、すでに明らか。地元漁民は猛反対している」とした。また、地中に管を並べて打ち込み、冷却剤を循環させ周辺土壌を凍らせる遮水壁にしても、「トンネル工事で実施済みとはいえ、1キロメートル以上のものを作った実績がない。冷却剤を循環させ続けなければならないのもネックだ」と指摘した。

 さらにまた、汚染冷却水の除染と再利用にも、多くは望めないとの見方を示した。「多核種除去装置 ALPS(アルプス)はトリチウムを除去できない。吸着剤の再生や、ろ過装置の目詰まりといった点で装置の維持が難しいため、トラブルが多発するだろう」とし、「東電や開発者の東芝、そして政府は『アルプスさえ完成すれば、永遠に除染できる』といったトーンで喧伝してきたが、大間違いだと思う」と述べた。

米国は汚染水問題の発生を予見していた

 木原氏は、福島第一原発の今後について、東北大の三村均教授が「2号機原子炉からの燃料取り出し開始が10年以内、3号機原子炉の取り出し完了が20~25年後」との見通しを立てていることを紹介し、「これは、かなり楽観的なシナリオだと思うが、この通りに事態が進展したとしても、燃料の取り出しが終わるまでには長い年月がかかり、その間、汚染水問題はくすぶり続けることになる」と説明した。

 木原氏は汚染水問題を含む、放射性物質の除染や拡散防止に有効な手立ては、「少なくとも今の時点では見当たらない」とした。その上で、「原発は人類の手に負えるものではない」と力説。「今すぐ、原発を推進する大企業から5兆円程度を調達し、優秀な人材を集めて新技術を開発してほしい。完全遠距離操作による、福島第一原発の完全廃炉化を目指すべきだ」と訴えた。

海外からの協力を拒んだ鎖国気質が致命傷に

 「福島原発事故による汚染水問題は、日本ならではの『鎖国気質』で大方説明がつく」。アイリーン・美緒子・スミス氏はこう強調し、原発事故の処理を巡り、「米国をはじめとする各国からの協力申し出を、日本政府や東電が初期段階で拒否したことが、ある種の致命傷となって、今に響いている」と力を込めた。

 「米NIC(国家情報会議)が、福島の原発事故から間もない時期に、汚染水問題が発生する可能性を日本に指摘していた。だが、東電や当時の政府は耳を貸さなかったのだ。海外には、汚染水問題を含む日本の原発事故の行方を、非常に気にしている優秀な専門家が大勢いる。彼らの中にはわざわざ来日し、講演などを通じて提言を行った向きもあるが、日本側が、それをまったく受け入れようとしなかった」と、対応のまずさを指摘した。

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