「TPPは失うものは過去最大で、得られる利益は一番少ない」 全産業で10兆5000億円減、GDP4兆8000億円減、190万人が雇用喪失 ~大学教員の会が独自の影響試算を発表 2013.5.22

記事公開日:2013.5.22取材地: 動画
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(IWJ・佐々木隼也)

 安倍総理は5月17日、農業分野の成長戦略として、今後10年間で農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を打ち出した。しかし5月22日、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の作業チームが発表した独自の影響試算によると、農家の所得は増えるどころか、全国で3483億円減少するという結果になった。作業チームの鈴木宣弘・東大教授(農業経済学)は安倍総理の成長戦略について、「所得倍増は、架空のアドバルーンであって全く根拠はない。TPPで所得は大幅に減少するのにどうやって10年で倍増できるのか」と厳しく批判した。

 同会の関耕平・島根大准教授と三好ゆう・桜美林大専任講師によると、今回試算に含んでいるのは、米、小麦、大麦、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵の8品目。果樹や砂糖など影響額が大きいものを試算できなかったため、この数字は実額よりも控えめな試算額となっているという。

 政府は、TPPにより農林水産分野で約3兆円の生産減少としつつも、輸出の増加や安い外国産品の流通による経済効果で、トータルではGDPが約3.2兆円増加とする影響試算を発表していた。しかし、この政府試算では関連産業や雇用への波及効果は含まれておらず、農家の所得への影響も考慮されていない。大学教員の会は、この点に着目し、醍醐聰・東大名誉教授と鈴木宣弘東大教授が中心となり、独自に政府試算の検証と試算を行った。

 同会の土居英二・静岡大学名誉教授(経済統計学)らが、政府試算をベースに全産業の生産減少額を計算したところ、約10兆5000億円にのぼった。さらに就業者に与える影響(雇用効果)は、農林水産業で約140万人、全産業で約190万人の減少。GDPに与える影響は約4兆8000億円の減少となり、GDPを1.0%押し下げるという試算となった。土居名誉教授は「TPPによる関税撤廃の影響は、農林水産業にとどまらず、その2倍以上の規模の6兆円を超える額が、第二次、第三次産業に及ぶ。政府は安い外国産品により家計・企業が助かり、生産・消費の増加につながるとしているが、おそらく輸入のマイナスを相殺できない」と語った。

■全編動画

  • TPPが国益に反すること示す再試算結果(GTAPモデルによる)
      発表者:鈴木宣弘氏 (東京大学教授/農業経済学専攻)
  • 大学教員作業チームの発表
    1.産業連関表を用いたマクロの影響試算
    (1)生産、雇用、GDPへのプラス・マイナスの影響
    (2)都道府県別にみた影響
    発表者:土居英二氏(静岡大学名誉教授/経済統計学専攻)
  • 2.農業経営統計を用いた所得ベースの影響試算
    (1)全国ベースの影響試算
    (2)北海道の影響試算
    発表者:関 耕平氏(島根大学准教授/財政学専攻)、三好ゆう氏(桜美林大学専任講師/財政学専攻)
  • 3.政府試算との対比で作業チームの試算結果が意味すること
    数値の背後にある実態/数値からは見えない実態
    発表者:醍醐聰氏(東京大学名誉教授/財務会計論専攻)
  • 日時 2013年5月22日(水)
  • 場所 東京都内

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