2023年7月17日(月)午後6時30分より、福島県郡山市の郡山教組会館において、「ALPS汚染水」の海洋放出に関する国・東電と住民との意見交換会が開催された。
参加者は、経済産業省資源エネルギー庁参事官 木野正登氏、東京電力株式会社リスクコミュニケーターの佐藤氏、住民代表の質問者5名である。
始めに主催者より、以下のように現岸田政権による原発政策転換への批判が述べられた。
「岸田政権は、原発推進に舵を切った。老朽原発でもいいというふうなことも言っている。その中で、様々な(汚染水ではなく)ALPS処理水の安全キャンペーンというものも、行われている。
私は非常に危険なものだと思っているが、『大丈夫かもしれない』という雰囲気が作られていると思う。しかしそうではない、過ちがまた繰り返されれば、大変な事態に繋がる。
これは地球全体の問題。海は繋がっているので、世界中の問題。そういうところに大きな影響を及ぼすかもしれないことを、安易に決めてはならないと思っている」
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続いて、経産省木野氏より、アルプス処理水の定義・処理の概要説明があった。(6:15~)
「溶けてしまった燃料デブリというものが存在する。これは熱し続けるため、水をかけ続けている。このかけた水はまた循環して冷やしてまたかけている。
これだけだと全然量は増えないが、この建物に雨水や地下水が入り込んでしまっている。これが余計な水となって汚染水が増える原因となっている。
この汚染水をポンプで汲み上げ、ALPSという多角垂直設備を通して、トリチウム以外の放射性物質を規制基準まで浄化処理できる能力がある。その処理したものがALPS処理水である。
タンクの数は1000を超えており、敷地をかなり圧迫している状況。今後使用済みの核燃料、燃料デブリといったものを取り出して、この第一原発の敷地の中に保管しなければいけないが、その敷地の確保もしなくてはならない」
東電佐藤氏からは、海洋放出の手続きと処理方法について説明がなされた。(18:42~)
「まず海洋放出の手続き、設計、それから運用管理、こちらをきちんと行って十分になるような回数まで希釈して、安全ということを確認した上で(放出に)合意するということ、それから回復モニタリングを評価するとともに、情報発信を分かりやすい形でしていくということを考えている。
これらに加えて、転換した海水で海洋生物の飼育試験を行って、悪影響がないことを目に見える形で、お示しをしていきたいというふうに考えている」
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これら説明後の質問者・会場参加者による質疑応答は、極めて激しいものになった。
<関係者の定義と意見書の聞き取り状況>(31:02~)
質問者「国と東電は県漁連と漁業者との理解なしにはいかなる処分も行わないとの約束を、関係者との理解なしにはと書き換えて約束をしながら、県漁連・全漁連の反対の中で、放出設備と海底トンネルの建設を強行した。
関係者については、漁業者だけであるかのように極力狭めてきていて、最近では関係者の線引きはできないなどと言っているが、原発事故の被害を受けた福島県に限らず、原発事故の被害者は、すべて関係者であると思うがどうなのか?」
経産省木野氏「確かに関係者だが、やはり人によって受ける影響の度合いを背景が異なるということで、関係者の範囲を明確に線引きすることは、困難であると考える」
会場「質問に答えてないじゃないか!?」
東電佐藤氏「関係者と関係者の理解についてはそれぞれ受け手によって、様々な受け止めがあるというふうに考えているので、一概には申し上げられない」
会場「何も答えてないじゃないか?」「被害者は関係者じゃないのか?」
質問者「私は加害者が、勝手に当事者抜きで関係者の線引きや規定をする権利はないと思っている。その前提で質問する。千葉県59市町村中、汚染水の海洋放出に反対、または慎重な対応を求めた自治体議会はいくつあるのか? 経産省、お答えいただきたい」
経産省木野氏「今そのデータを持ち合わせてないので、すぐにオープンにはできない」
質問者「これは意見書を国に提出している。59市町村中43自治体議会が意見書を出しており、全体の7割に上っている。そしてこの意見書を出した議会に対して説明を行ったのか?」
経産省木野氏「議会に対して説明を行っているところもあるが、その40いくつというのは説明していないので、すべてではないと思っている」
質問者「なぜすべてに行わなかったのか?」
経産省木野氏「議会から要請をいただいたものの議会については説明させていただいているが、すべてについては、説明を行っていない。すべてやる必要があったと思う」
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最後に主催者からも、今回の意見交換会開催に当たり、経産省と東電側からさまざまな注文が付けられた経緯が語られた。(2:17:03~)
「経産省の窓口になっている方から、このような注文が入った。対象者の安全を守る観点から、個人が特定されるような行為、写真撮影や動画撮影については控えていただくよう、参加者の方に周知徹底して欲しいということだった。
対応者の安全を守る観点とは何なのか? 対応者とはもちろん国や東電から出向かれた方のことだが、SNSで誹謗中傷の対象になるとか夜道で狙われるとかそういうことなのか?
そういうことであるなら、私たちもこの場に名前を明らかにして、顔も名前もさらして、そしてこの場所に立っている。そうした危険も私たちは私たちでやはり同じ。
誹謗中傷の対象になり、今一方であるところでは加害者、風評被害の加害者扱いのようになっているので、そのような中で私たちは決意を持ってここに立っている。
国や東電の方々も、そういった決意を持って、ここに臨んでいただきたいと強く要望する」(後略)