2023年6月16日、午後7時15分より、東京都小金井市の小金井・宮地楽器ホールにて、映画『REVOLUTION+1』の上映会、および、上映後、足立正生監督とのトークライブが行われた。
主催は小金井平和ネット、小金井市を中心として、戦争のない平和な世界を目指して、主に、憲法問題やパレスチナ問題をテーマに上映会や講演会などを開催している有志団体である。
当日券もほぼ完売となり、会場は超満員。『REVOLUTION+1』の上映後のトークライブでは、参加者から事前に集めた質問に足立監督が答えるかたちで質疑応答が行われ、会場は、足立監督の声に聴き入る参加者の静かな熱気に包まれた。
「『REVOLUTION+1』という映画のタイトルは何を意味しているのか?」との質問に対して、足立監督は次のように答えた。
足立監督「3つの意味を込めていまして、1つは、山上さんがやったことは革命行為でも何でもない、と。革命行為からは違うものであるというのがありまして、その含みをもたしたこと。
それから、実際に、山上さんがやったことで、何か革命が起こるのかといったら、そういうこともない。むしろ、革命をやるんだったら、例えば、山上さんがこういう事件を起こさざるを得なかったことを反映した、私たちに問われたことからしか始まらないだろうという思いですね。
それから、多少、私的なことを言いますと、私もテロリストとか何とか言われて長くやっております。私も、革命をやめたつもりはまったくないというのがあります。ただし、これまでのやり方では、何の前進も作れなかったという反省もあります。
ですから、『+1(プラス・ワン)』、これから新たに一歩を進めよう、つまり、そういったものを全部込めたんですね」
主人公の「川上」は、作品の中で「星になる」という表現を頻繁に口にする。その「星になる」ということについての質問もいくつかあった。
質問1「山上徹也は今、救われたと思いますか? 星になったのか?」
質問2「『星になりたい』という思いは、足立さん世代の『男』の発想のような気がします。山上君は、むしろ『灰になりたい』、『最悪の事態を0(ゼロ)に戻したい』という思いだったというふうに思えます。山上君は『革命』からは遠い存在なのではないでしょうか?」
足立監督は、これらの質問への回答の中で、次のように述べた。
足立監督「山上さん自身は、自分をどういう具合に言っていいのかわからない。そういうところで星になれるのか。星っていうのは、何億年も前の光の反映の現在、つまり、自分も見つけられないときに、何もわからない抽象的な存在としての星。
なおかつ、その星はこんなに(たくさん)あるわけですよね。その中のどこに行っていいのかわからないって、そのぐらい、何もわからない閉鎖状況。その中で、徐々に自分を見つめていく、あるいは、自分がなぜこうなっているのかを見ていく、というところから、なぜ、山上さんのお兄さんがまた自殺せざるを得なかったのか。そういったことに対して、お母さんがどうやっていたのか。っていうようなところで、『星になる』というのはね、ボロクソ言われましたよ。(中略)
実は、途中まで、映画のタイトルは『星になる』というものだったんだけど、有名なジャーナリストとかが、『今の若者にそんなロマンチックなことは通じないですよ』という具合に批判されたけれども、それはテーマとして残したというのがあります」
作品の最後に登場する「妹」についての質問もあった。足立監督は、この「妹」について、次のように自身の考えを述べた。
足立監督「最後に、山上(作品内では「川上」)が銃撃を起こした後、逮捕されるニュースを見て妹の言うセリフは、私(足立監督)そのものが吐くようなセリフです。つまり、山上さんが、自分に、本当に、正面から向かい合った結果起こしたことであると。事件そのものは、犯罪として同意できないけれども、『自分に向き合って生きる』ということを選んだことを尊敬する、と。
ただし、この問題を起こしたのは、統一教会とか、そういう問題を出す前に、そういったことを全部許していた、この現代における諸矛盾の一番犯罪的なものが何かというところで、『政治を変えないといけない』とか、そういうアバウトなことを言うのではなくて、妹のセリフとして僕が込めたのは、『政治家を変えないといけない』という言い方を選びました」
また、足立監督は、映画の上映の仕方、つまり、映画作製側と観客とのコミュニケーションの仕方について、次のように述べた。
足立監督「この映画を全国の映画館35館くらいは上映するんですが、その中で、私も、日本の今の映画の上映の仕方って非常に硬直しているんですが、監督とか主役の人がいて、舞台挨拶をして、上映して終わって…、僕はそれはやらない。
上映したあと、アフタートークで観た人の話を聞きたい。そこから勉強しよう、と。それから、アフタートークをやってもらっているんですが、アフタートークで話しにも来ない、ずっと待っている人たちがいるので、(そういった人たちに)聞くと、『自分は宗教二世である』と。そういう人たちが本当にたくさんいました。
それから、そういう人たちが言いたいのは、正面から描いてくれて非常にありがたかった、と。自分の問題として見ることができたということ。(中略)
それから、ついでに言いますと、この武蔵小金井で、この映画を上映してもらっている重要さ。僕は、主催者の側に、もっと声を大にして聞いてほしいんですね。この中央線沿線、統一協会の地方支部がいっぱいあります。本当に苦労している、十把一絡げで、そういう見方をしてはいけないんですが、宗教二世の人たちはいっぱいいます。
そういう人たちがいる中で、映画館ではなくて、こうやって『開かれた場所』で上映するということの意義を僕は非常に重要だと思って、今日、皆さんの中に参加させてもらっています。僕が何をできるわけでもないけれども、そういう具合に、今日こうやって観てもらった人の意見を聞きながら、話すっていうのは非常に重要なことだったなと思っています」
トークライブの詳細については、ぜひ全編動画にてご確認ください。