2023年5月8日午後1時30分頃より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、院内ヒアリング集会「原発政策の大転換・運転期間延長反対!~原子力基本法・炉規法・電事法などの改定束ね法案の問題点~」が開催され、内閣府の原子力政策担当官とのヒアリングが行われた。
ヒアリングを前に、再稼働阻止全国ネットワークの木村雅英氏と、たんぽぽ舎副代表の山崎久隆氏より、参加者に向けて事前のレクチャーが行われた。その中で、木村氏は次のように述べた。
「何よりこのこと(原子力基本法の改定)について、原子力基本法についてほとんど議論がされていないということと、それから、この担当大臣が、高市(早苗・経済安全保障担当)大臣なんです。
そして、そのことも非常に重要だと思います。実は、国会の議論でも、『高市大臣を呼べ』と、野党議員が何回か言っているんですけれども、本人は出てこないで、副大臣がいつも答弁していました。このことも問題だと思います。(中略)この点を追及したいと考えています」
ヒアリング集会の会場で配布された資料によると、2023年2月28日に、原子力基本法の改定が閣議決定されたが、この改定案は、2022年7月から、資源エネルギー庁と内閣府が秘密会合により検討・策定したものとされている。西村康稔経産大臣も、2022年夏ごろから事務方打合せが開始されたことを認めている。
つまり、資源エネルギー庁が、炉規法(原子炉等規制法)所掌の原子力規制庁、および、原子力基本法所掌の内閣府に乗り込み、それぞれの改定案を提示・検討していたというのだ。
この原子力基本法の改定は、内閣府原子力委員会での議論はまったく行われておらず、公開の場での話し合いもなく、パブリックコメントにもかけられないまま、いきなり閣議決定され、原子力基本法を含む「束ね法案」である「原発推進等5法案(GX電源法案)」が4月27日に衆議院で可決され、5月10日より、参議院での審議が行われている。
また、事前レクチャーでは、山崎氏が次のように語った。
「電力会社の中にも、『脱原発派』もたくさんいるわけで、そういったところに対して特に逃げられないという構図を作っていこうということが、この『原子力基本法』の改定趣旨だろうというふうに思っています。
その先にあるのは、当然、多国間でいうならば、日本の場合は、アメリカの核の傘、それから、日本単独でいうならば、オーストラリアやブラジルのように、原子力潜水艦や原子力空母を有する。
それに加えて、防衛費2倍といって、約5年間で40兆円ですか、巨額のお金は積み増ししていますけれども、そういったもので太平洋を米軍と一緒にですね、中国と対抗して軍事大国になっていく。
そういう流れの中で、原子力発電所があれば、当然攻撃を受ける標的になるリスクが高まるということは、誰の目にも明らかですから、こういったものも軍事力を持って防衛するという方向にどんどん進んでいくであろうということは、そういったこととあわせてですね、『原子力基本法』改正の趣旨の背後にも隠れているんじゃないか。(中略)
それから、明確化したいのは、やはり、国の予算の中でいったい何をするべきなのか、ということを、既に、SMR(小型モジュール炉)の開発予算に、西村経産大臣は200億円ぐらい投入するという話(※)をしてますね。フランスと一緒になってやる。そういうような。
- 西村経済産業大臣とパニエ=リュナシェ・エネルギー移行大臣が日本とフランスの原子力協力を深化させるための共同声明に署名しました(経済産業省、2023年5月3日)
だから、法律ができる前の段階から、すでに、海外の原子力メーカーと協力して、日本が直接国のお金を、すなわち税金を投入して、新型炉の開発に予算を使っているというようなことが始まってしまっている、という状況です」
詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。