2022年5月11日、福島第1原発事故の東電刑事裁判で、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東京電力の旧経営陣に対する控訴審で、被害者参加代理人の弁護団が、東京高裁に「被告人有罪」の結論を導くことが可能であるとする意見書を提出した。
弁護団はその後、午後2時より、東京・司法記者クラブにて、記者会見を開催した。
被害者参加制度は、刑事事件の被害者や遺族が、裁判で被告人に対して質問するなど、直接裁判に参加できる制度。
この控訴審は、6月6日の公判で結審される予定だが、現在、並行して、6月末までに最高裁判決が予定されている福島原発事故集団訴訟と、7月13日に地裁判決が予定されている東電株主代表訴訟が行われている。
弁護団は、この2つの訴訟の判決内容を踏まえないままの結審は不合理であるとして、この日、結審せずに次回期日を指定するよう「続行期日の指定」を求める上申書も提出した。
福島原発告訴団弁護団は、2022年4月5日、裁判所に伝えるべき事実関係や重要証拠を指摘し、別件の東電株主代表訴訟での証人尋問などから、新たな事実関係を指摘する意見書を提出した。
- 福島原発告訴団弁護団意見書(福島原発刑事訴訟支援団、2022年4月5日、PDF)
この日の会見で、被害者参加代理人として登壇した海渡雄一弁護士は、提出した上申書の内容について、次のように説明した。
「上申書については、結審を延期してほしいという内容。延期してほしい理由は単純で、恐らく6月中に(福島原発事故集団訴訟の)最高裁の判決が出るだろうと。そして、東電株主代表訴訟の判決が7月13日に出る。この両方ともが、東電刑事裁判と争点が共通している。ほとんど同じ証拠を用いて裁判が行われている。(中略)
この福島原発事故という一連の事故について、東電の役員、国には、どのような法的責任があるのかが問われている2つの裁判についての、重大な司法判断というものを、東京高裁は東電刑事裁判の審理対象にすべき。そのためには、少なくとも、7月の後半に期日を入れてさえくれれば、それで結審されることに、こちらとしては何ら意見をするつもりはない」。
また、意見書の内容について、海渡氏は、「前回、4月5日に提出した『意見書』は370ページあった。これが今回、約半分の188ページになっている。
これは、刑事裁判での証拠にもとづかないで、株主代表訴訟の審理などにもとづいて書いた部分を削除し、代わりに、新しい調書にもとづく論述を入れた。
両方の書面について、裁判所も少しは感じるところがあると思うんですよね。
東京高裁は、とにかく、2つの訴訟(福島原発事故集団訴訟と東電株主代表訴訟)の判決を東電刑事裁判の証拠調べの対象としてほしい。そのために、結審期日をもう一期日、7月の後半以降にずらすべきだ」。
会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。