小野寺五典防衛相が「朝鮮戦争」の可能性を否定せず! 開戦のタイミングは「今年の暮れから来年にかけて」!? 10月の富士山会合発言の根拠をIWJが直撃! 2017.11.17

記事公開日:2017.11.17取材地: テキスト動画
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(取材:澤理恵・文:IWJ編集部)

※2017年11月18日、テキストを追加しました。

 「残された時間は長くない。今年の暮れから来年にかけて、北朝鮮の方針が変わらなければ緊張感を持って対応せねばならない時期になる」

 小野寺五典(いつのり)防衛大臣は、2017年10月28日、国際関係や安全保障について日米の政府関係者や有識者が話し合う国際会議「富士山会合」において、朝鮮戦争の再開を予言するような発言をした。

 年末から年明けにかけて、開戦の可能性があるかのようなこの小野寺大臣の発言の根拠と真意について、11月17日の記者会見でIWJ記者が質問をぶつけた。

▲小野寺五典防衛大臣(2017年11月17日IWJ撮影)

■全編動画

  • タイトル 小野寺五典 防衛大臣 記者会見
  • 日時 2017年11月17日(金)10:30~
  • 場所 防衛省(東京都新宿区)

外交努力のタイムリミットは「暮れから来年にかけて」!? その根拠をIWJ記者が直撃! トランプ大統領のアジア歴訪後に判断が!?

 IWJ記者は、「10月28日に行われた『富士山会合』で年末から年明けにかけて開戦があるかのような発言をされましたが、それはどのような根拠があるのでしょうか。可能性は何パーセント程度なのでしょうか?」と、質問をぶつけた。

 小野寺防衛相は、「日本においての攻撃が弾道ミサイルで行われる場合には、私どもミサイル防衛のシステムでしっかり対応をする」と答え、その上で「トランプ大統領は『全ての選択肢はテーブルの上にある』と言っている。外交の努力を続けているけれども、それにも一定の時間的制限もある」と、富士山会合での発言の意図について説明した。

 さらに、IWJ記者が「時間的制限があるというが、なぜ、年末と年明けにかけてなのか?」と、重ねて質問すると、小野寺防衛相は次のように答えた。

 「トランプ大統領の日中韓における北朝鮮問題に関する協議、その後のASEAN会合で国際的圧力の強化を要請している状況において、北朝鮮が今の核ミサイル、日本にとっては拉致問題の解決について政策の変更がなければ、トランプ大統領として外交努力に一定の期間があると考えれば、私どもとして安全保障状況環境が厳しくなる」

 一方、トランプ大統領は、北朝鮮を「テロ支援国家」として再指定することの是非について、11月のアジア歴訪の最後に決断を下すとされていたが、歴訪の総括を行った11月15日の声明では、再指定の是非については触れなかった。サラ・ハッカビー・サンダース米大統領報道官は、11月20日の週初めにもトランプ大統領が判断を公表するとの見通しを示している。

 岩上安身は、以下のように指摘している。

 「米国が北朝鮮に対して先制攻撃をかけるという脅しも含めてプレスを強めているのは、米本土に届くICBM(大陸間弾道弾)の完成段階に至っているからである」

 「米国は、米国自身の足元に火の粉が及ぶに至って、北朝鮮を『壊滅』させるオプションを含めて『すべての選択肢がテーブルの上にある』と言い出すようになったのである」

米軍が先制攻撃を行った場合、大都市と原発へのミサイル被弾リスクや被害想定、避難計画などは!? 政府は真剣に想定しているのか!?

 IWJ記者は、続けて「米軍が先制攻撃を行った場合に、自衛隊は後方支援などを行い、参戦することになるのでしょうか? その場合は、日本に対しての攻撃を加えると北朝鮮は繰り返し警告していますが、大都市と原発へのミサイル被弾リスクや被害想定、避難計画などは具体的に政府として真剣に想定されて、また備えられているのでしょうか?」と、質問した。

 小野寺防衛相は「米国がどのような意図をもって対応するかは分かりませんが、通常、どの国も自国防衛のための対応をされると思いますし、日本も同じことをすると思います」との言及にとどめた。

 北朝鮮のミサイルが原発に被弾した場合のリスクについて、IWJでは繰り返し報じている。

▲広瀬隆氏(2017年10月20日IWJ撮影)

北朝鮮のミサイル攻撃を受けたら日韓で死者210万人、負傷者770万人! 充分なミサイル防衛システムもない中、安倍総理は北朝鮮を挑発し、改憲を訴え!

▲東京の被害想定(「38ノース」より)

 米ジョンズ・ホプキンス大学米韓研究所「38ノースプロジェクト」は、「ソウルと東京の上空で核爆発が起きると、死者210万人、負傷者770万人にのぼる」と、分析している。

 このような甚大な被害予測がされている中、日本の防衛大臣は、「今年の暮れから来年」にかけて開戦の可能性を示唆している。いかにして開戦を避けるかを考えるのではなく、攻撃されたら反撃も辞さないと言ってはばからないのだから、驚きである。

 また、安倍晋三総理は、11月17日、第195回特別国会の衆参両院の本会議で、所信表明演説を実施した。その中で、「北朝鮮による挑発がエスカレートする中にあって」「ミサイル防衛体制をはじめとする我が国防衛力を強化していく」などと強調した。

 しかし、現状の日本の「ミサイル防衛システム」では、北朝鮮のミサイルを撃ち落とすことなど不可能である。とりわけ、原発への被弾リスクは、あまりに大きすぎる。日本の海岸線に並べられた原発には、PAC3は配備されていない。全原発は、ほぼノーガードの状態である。北朝鮮を挑発し、開戦危機を煽る一方で、「防衛力を強化していく」などと言うのは悠長すぎる。

 小野寺防衛相は、あたかもミサイル防衛システムによって、北朝鮮のミサイルを迎撃できるかのように語るが、日本に向けて撃たれる北朝鮮のミサイルは、高高度を飛ぶロフテッド軌道を通過するので、日本の迎撃ミサイルはイージス艦搭載のSM3も、PAC3も、そもそも届かない。

 岩上安身は、トランプ大統領の要求に唯々諾々としたがってミサイル防衛システムのさらなる大量購入をする日本政府を、以下のツイートで厳しく批判している。

 また、ロフテッド軌道で飛ぶミサイルを撃ち落とすことができないこと、開戦した場合の原発への攻撃を北朝鮮は明言しており、日本政府は本気で原発へのミサイル着弾を想定した対策(最終的には原発の廃炉のみならず、使用済み核燃料をミサイルの標的にならない場所へ撤去する)に全力で取り組まなくてはならないはずだ。

 米国にどこまでもつき従って戦争へと突き進む安倍政権の安保政策の危険性について、IWJは繰り返し報じてきた。11月6日には、14度目の訪朝に成功したジャーナリストの浅野健一氏に、岩上安身がインタビューをした。浅野氏へのインタビューは、今後の外交政策・国防を先見する、示唆に富む数々のメッセージが溢れている。

 安倍総理は、所信表明演説の最後で改憲に触れ、与野党が「共に知恵を出し合いながら、ともに困難な課題に答えを出していく。そうした努力の中で、憲法改正の議論も前に進むことができる」と、与野党議員の喝采と怒号の中で訴えた。

 9条改憲と緊急事態条項を急ぐのは、目前の北朝鮮有事と無関係ではないだろう。米国が北朝鮮に武力行使を行えば、集団的自衛権を容認する安保法制によって、日本の自衛隊は参戦せざるをえなくなる。その時、日本という国家・社会が総力戦を遂行できる体制を築き上げておこうという思惑があることは疑問の余地がない。

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