「私たちにまだ力は余っている!」 共謀罪廃止に向けて、私たちはこれから何が出来るのか ~海渡雄一氏、小池振一郎氏が語る廃止運動の課題と展望―7.11集会 2017.7.11

記事公開日:2017.7.12取材地: テキスト動画
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(取材:阿部洋地 文:栗原廉)

緊急特集 共謀罪(テロ等準備罪)法案シリーズ|特集 共謀罪・盗聴法・マイナンバー
※7月18日テキストを追加しました。

 共謀罪法案(テロ等準備罪)は、その必要性や内容が曖昧なまま危険性が指摘される中、ついに7月11日に施行が開始された。

 一方、同11日には東京都・文京区民センターで共謀罪NO!実行委員会が「共謀罪は廃止しなければならない7・11集会」を開催。委員会代表を務める海渡雄一弁護士と、小池振一郎弁護士がそれぞれ登壇し、共謀罪法案の問題点を指摘するとともに、警察の捜査活動を監視する人権委員会の設置が必要であることを訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 「共謀罪は廃止しなければならない ―廃止運動の課題と展望―」 海渡雄一氏(弁護士、共謀罪NO!実行委員会)
  • 「警察を監視する第三者機関の設置を!」 小池振一郎氏(弁護士)

「まだ力は余っている、もっとやらなきゃという雰囲気が反対運動には残っている」~海渡雄一弁護士が振り返るこれまでの運動の展開

 共謀罪NO!実行委員会の委員長も務める海渡氏は、まず始めにこれまでの共謀罪反対運動の展開を振り返り、評価点と反省点をまとめた。今回の反対運動は立ち上がりが非常に速やかであり、また総がかり実行委員会との共同で全国的に野党共闘の形を取った市民集会を展開できたことを強調、2015年の戦争法反対のつながりから元SEALDsの若者や他の市民運動の参加者とも連携し、反対運動を実施できたと述べた。

▲海渡雄一弁護士

 日弁連としては、戦争法反対の時のように市民運動の核として機能できなかった反省はあるが、読売・産経を除く多くの報道機関で反対論陣が張られ、海外では米国政府の情報収集活動を告発したエドワード・スノーデン氏やプライバシー権に関する国連の特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏から法案に対する懸念が表明されたことにも言及した。

 なお、2015年の戦争法反対運動と比べて、国会を埋め尽くすほどに市民が集まらなかったという意見に対しては、沖縄問題との共同での反対運動では18,000人が国会前に集ったことを挙げ、無茶苦茶な国会での審議プロセスがなければ、最終局面では戦争法反対時と同様であったのでは、と海渡氏は推測している。

「森友問題、加計問題が示す後ろ暗い現政権の政治手法」~共謀罪を廃止しなければならない理由

 上述のように、多くの反対や疑問の声が共謀罪法案に対して挙がる中で、なぜ安倍政権は法案成立をここまで性急に進めたのか? 海渡氏はその疑問に対して、「今回の安倍首相の(国会を急いで閉会するという)対応は、あくまでも加計学園を巡る国会での追及に幕引きを狙ったものであり、市民もそのことに気がついている。そのために、報道各社の調査でも内閣支持率が下がってきている」と自身の文責を明らかにした。

 その上で、共謀罪に関わるいくつかの主要な問題点を海渡氏は解説した。

 まず、法律の定める構成要件が、刑罰法則の明確性の原則に反していることが挙げられる。条文において組織的犯罪集団は、「結合関係の基礎としての共同の目的が別表第3の票に掲げる罪を執行することにあるもの」と定義されているが、法務省刑事局長の通達では「結合関係の基礎としての共同の目的とは共同の目的と同義である」とされ、拡大解釈による適用が可能となってしまうことに警鐘を鳴らしている。

 また、「準備行為は犯罪行為の構成要件である」旨が、政府答弁や刑事局長通達から明らかになっている。これにより、法の適用範囲を狭められる一方で、刑事法の専門家からは、「犯罪の本体は計画の方であって、準備行為は単なる処罰条件としか読めない」という指摘が複数あったと海渡氏は述べ、裁判所にまで通る構成要件にならないのではないかと、疑念を呈している。

 次に、2017年法は2006/7年の与党案(※)と比べ、人権面の配慮において大幅に後退していることに海渡氏は懸念を示した。

※2006/7年の与党案:「当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」に懲役、または禁錮刑を科すというもので、「実行行為の着手」や「犯罪の準備行為」といった客観的要件がなくても謀議参加者の処罰を可能とする犯罪類型。対象は「長期4年以上の懲役又は禁錮の刑」で、対象は600種類以上にのぼった。当時の法務省が、「会話による相談がなくても、目くばせするだけでも共謀は成立しうる」との見解を示し、物議をかもした。

 具体的には、密告処罰の規定が加えられていること、二重処罰の禁止がなくなっていること、組織的犯罪集団の定義を十分に限定していないことなどが挙げられ、民進党が示した別案(組織的詐欺罪と人身取引予備罪を設けることでTOC条約に批准する)が正しい方針であることを強調した。

 既に前川前事務次官に対する読売新聞による「個人攻撃」としか言いようのない新聞記事が出たことや、東京新聞の望月記者に対して菅官房長官が公安に身辺調査を行うように指示したと言われていることからも明らかなように、安倍政権は法案の施行前から公安情報を使って政敵と見なした者に対する攻撃を加えている。現政権のそうした活動を強化する共謀罪については、断固廃止しなければならないことを、海渡氏は指摘した。

「大多数が反対であることを署名運動で可視化したい」~ 海渡雄一弁護士が語る共謀罪廃止に向けたこれからの運動の展開

 共謀罪の廃止に向けて今後取りうるいくつかの手法も、海渡氏は提案した。

 まず、大多数の市民が反対していることを明らかにするために、他の市民運動との協力の下に全国的な署名運動を展開すること。

 また、共謀罪の廃止法案を作成し次の国会で提案する。その場合、例え次の国会で法案が成立しなくとも将来の選挙で政権交代が達成されれば廃止へ持ち込めると海渡氏は見ている。

(…会員ページにつづく)

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「「私たちにまだ力は余っている!」 共謀罪廃止に向けて、私たちはこれから何が出来るのか ~海渡雄一氏、小池振一郎氏が語る廃止運動の課題と展望―7.11集会」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    海渡雄一弁護士「安倍政権は法案の施行前から公安情報を使って政敵と見なした者に対する攻撃を加えている。現政権のそうした活動を強化する共謀罪については、断固廃止しなければならない」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/388962 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/55kurosuke/status/887232683230740480

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    日本の刑事訴訟手続きは「中世」とも称される中で、これに共謀罪の適用が加わる。さらに、合意を裏付けるには日常的に証拠を集める必要があるため、法律による日常的監視の合法化が進むことにも警鐘を鳴らしている。
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/388962 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/887232699194253312

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