【全文文字おこし掲載】「共謀罪は自由な情報発信を殺す」――ジャーナリストら14人が共謀罪に反対する共同声明を発表!岩上安身も呼びかけ人として参加「密告の横行で個人的な人間関係も破壊される」 2017.4.27

記事公開日:2017.4.28取材地: テキスト動画
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 今国会で審議中の「共謀罪(テロ等準備罪)」法案について、4月27日、キャスターやジャーナリストら14人が記者会見を行い、「私たちは『共謀罪』法案に大反対です」とする声明を発表した。

 記者会見にはジャーナリストの田原総一朗氏やキャスターの金平茂紀氏、漫画家の小林よしのり氏らが参加。金平氏からの呼び掛けに応じて会見に参加した岩上安身は、米NSA(国家安全保障局)による世界的な盗聴の実態を指摘。そのうえで、共謀罪が招く日本の「監視・密告社会」化に警鐘を鳴らした。

■ハイライト

  • 出席者 青木理氏、岩上安身氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、小林よしのり氏、斉藤貴男氏、神保哲生氏、田原総一朗氏、津田大介氏、鳥越俊太郎氏、安田浩一氏、吉岡忍氏、他
  • 日時 2017年4月27日(木) 13:00~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

記者会見で発表された声明文全文

 私たちは「共謀罪」法案に大反対です

 私たちは、放送やインターネット、執筆活動などを通じて、広義の報道に携わっている者です。私たちは、現在、国会で審議中の「共謀罪」法案に大反対です。「テロなど準備罪」などと言い換えていますが、法案の骨格や内容は、過去3回廃案になった「共謀罪」法案と本質的には何ら変わっていません。

 「共謀罪」は、まだやっていないことが取り締まりの対象になります。

 「共謀罪」は、私たちの内面の自由、プライバシーを踏みにじる道具になります。捜査機関に際限のないフリーハンドが与えられ、監視社会が現実化するおそれがあります。監視のまなざしは人々に内面化されていきます。人々は心を閉ざす方向へと向かいます。何とか自分を守るために。となれば、私たちジャーナリスト、表現者は、取材活動がままならなくなります。私たちの仕事は、真実を知るために多様な考え方の人々の心の内面に入って行くことが常だからです。

 結果として、取材し報じられるべきことが伝えられなくなります。つまり、「共謀罪」は、言論の自由、表現の自由、報道の自由を著しく破壊するものなのです。監視は人間の自由を殺す、とは歴史の教えるところです。

 この時点で何も言葉を発しないのは、未来に大きな禍根を残すことになると思います。だから、私たちはここで声をあげることにしました。

 世界に目を向けると、シリアや北朝鮮をめぐる情勢など、「共謀罪」を新設したい勢力には「追い風」が吹いているようにも見えます。強い力に擦り寄っていく人々もメディア上を跋扈(ばっこ)していて、「共謀罪」の本質を隠しているようにも見えます。

 「共謀罪」はテレビを殺します。「共謀罪」はラジオを殺します。「共謀罪」は自由な情報発信を殺します。人々のコミュニケーションを権力の監視下に置くこの「共謀罪」法案の新設に私たちは、強く、深く、長く、反対します。

2017年4月27日 

・呼びかけ人一同(4月27日午前10時現在)
青木理/阿武野勝彦/飯田能生/岩上安身/大谷昭宏/金平茂紀/岸井成格/熊谷博子/倉澤治雄/小林よしのり/斎藤貴男/桜井均/清水潔/下村健一/白石草/神保哲生/曽根英二/武田砂鉄/田勢康弘/田原総一朗/立岩陽一郎/三上知恵/水島宏明/安田浩一/安田菜津紀/吉岡忍/吉永みち子/綿井健陽

 

記者会見での発言・全文文字おこし

金平茂紀氏(以下、金平)「今日はお忙しいところ、共謀罪に反対するメディア関係者の記者会見にお出でいただきまして、ありがとうございます。私は金平と申します。この会場を10時45分には明け渡さなければならず、時間が限られています。また、何人かの方は途中で中座されるので、最初にフォトセッションみたいなものをやりたいというふうに思います。

 最初にこの横断幕『私たちは共謀罪法案に大反対です』『監視は自由を殺す』を持って、カメラの方々が映しやすいように並びます。それからすぐに会見を始めたいと思います。

青木理氏(以下、青木)「では続いて、青木理と申します。僕は発言される方をご紹介していきます。スケジュールの都合上、30分ぐらいで出なければならない方が3人ほどいらっしゃるので、その方々からお一人ずつ、3分ぐらいでお願いします。

 そう、そう。最初に声明文を読むんでしたね。では最初に声明文の読み上げを、岸井さん、よろしくお願いします」

岸井成格氏(以下、岸井)「ご指名の岸井です。声明文を読まさせていただきます。

『私たちは「共謀罪」法案に大反対です

 私たちは、放送やインターネット、執筆活動などを通じて、広義の報道に携わっている者です。私たちは、現在、国会で審議中の「共謀罪」法案に大反対です。「テロ等準備罪」などと言い換えていますが、法案の骨格や内容は、過去3回廃案になった「共謀罪」法案と本質的には何ら変わっていません。

 「共謀罪」は、まだやっていないことが取り締まりの対象になります。

 「共謀罪」は、私たちの内面の自由、プライバシーを踏みにじる道具になります。捜査機関に際限のないフリーハンドが与えられ、監視社会が現実化するおそれがあります。監視のまなざしは人々に内面化されていきます。人々は心を閉ざす方向へと向かいます。何とか自分を守るために。となれば、私たちジャーナリスト、表現者は、取材活動がままならなくなります。私たちの仕事は、真実を知るために多様な考え方の人々の心の内面に入って行くことが常だからです。

 結果として、取材し報じられるべきことが伝えられなくなります。つまり、「共謀罪」は、言論の自由、表現の自由、報道の自由を著しく破壊するものなのです。監視は人間の自由を殺す、とは歴史の教えるところです』

 さて、次の一行は削除させていただきます。『正直に申し上げますが、もう遅きに失したかもしれませんけれども』という部分ですが、議論がありまして、後ろ向きな印象を与えて、廃案にすることを諦めてしまったような感じを与えるかもしれない、という意見がありましたので、この一行を削除いたします。続けます。

 『この時点で何も言葉を発しないのは、未来に大きな禍根を残すことになると思います。だから、私たちはここで声をあげることにしました。

 世界に目を向けると、シリアや北朝鮮をめぐる情勢など、「共謀罪」を新設したい勢力には「追い風」が吹いているようにも見えます。強い力に擦り寄っていく人々もメディア上を跋扈(ばっこ)していて、「共謀罪」の本質を隠しているようにも見えます。

 「共謀罪」はテレビを殺します。「共謀罪」はラジオを殺します。「共謀罪」は自由な情報発信を殺します。人々のコミュニケーションを権力の監視下に置くこの「共謀罪」法案の新設に私たちは、強く、深く、長く、反対をいたします。

 2017年4月27日』以上です」

青木「ありがとうございました。では最初に田原総一朗さんから、一言いただきたいと思います」

田原総一朗氏(以下、田原)「安倍首相は『この法案はテロリストを対象にしたものであり、一般の国民はまったく関係ない』と言っています。しかし、テロリストは『テロリスト』というバッジをつけているわけではなく、一般国民の中に潜りこんでいる。だからテロリストを取り締まろうとすれば、当然、一般国民のプライバシーに、深く、広く入り込まざるを得ないし、おそらくそのつもりだと思う。

 私はこの中で、戦争を知っている最後の世代だと思います。小学校5年生の夏休みに玉音放送がありました。戦争を知っている最後の世代としては、どうしても治安維持法を思い浮かべます。治安維持法についても、今の安倍さんと同じことを言っていた。『これは、国体を壊そうとする共産主義者を取り締まりの対象にしている。一般国民はまったく関係ない』と言いながら、2回改正して、政府に批判する者を、満州事変が始まってからは、戦争にいささかでも反対する人間をぜんぶ逮捕した。私の知り合いでも、拷問されて亡くなった人が少なからずいる。

 今回の法案は、構造が治安維持法にそっくりです。だから、それを知っている私としては、体を張って反対しなければならない。ちょっと宣伝します。実は明日『朝まで生テレビ』の30周年ですが、共謀罪についてやります。どうも失礼しました」

青木「ありがとうございました。もうお一人、早めに出なければならない大谷さんに、お言葉をいただきたいと思います。よろしくお願いします」

大谷昭宏氏(以下、大谷)「大谷でございます。日程の都合がありまして、諸先輩より先にお話しさせていただきます。この法律の危うさについては、おそらくこれから我々の仲間が話してくれると思いますので、2点だけ申し上げます。

 いま国会の審議は、法務大臣がまともな対応が出来ないために、林眞琴刑事局長が法務大臣よりはるかに多く答弁しています。国会議員の質問に対して当該所管の法務大臣が答えられない法律を国民に押しつけようとしている。国民はいったい自分たちが何をしたら罰せられるのか、なぜ罪に問われるのか、わからない。

 国会議員でも分からないものを役人だけが分かっていて、国民はある日あるとき逮捕されて『なぜ?』と聞いたら、『おまえはこのテロ等法に触れている』と言われて初めて気が付く。そんな愚かな法律があるかということが一点です。

 私は大阪府警を長いこと担当していました。警視庁の担当が長かった青木さんとも、いつも話していることなんですが、この法律が出来たら、いったいどういう捜査をするのかについてです。ある団体が組織的犯罪集団であるかないかをどう判断するかというと、暴力団は看板掲げたり、バッジ付けたりというかたちで、はっきりしています。暴対法に、組織の中に何割の前歴者がいるかとか、そういう基準があります。しかし、この共謀罪には何の基準もない。

 すると、その団体が犯罪に走るかどうかを、警察はどうやって捜査するのかというと、盗聴、盗撮、スパイを潜り込ます。この3点しか方法はないんです。これらは全て違法な捜査です。簡単に言えば、この法律が出来たとたんに警察は違法な捜査を始められる。GPSさえも、最高裁が待ったをかけているというのにスパイを潜り込ませられる。

 戦前の治安維持法と同じ方法をとる。まして現代ですから、ハッカー、盗撮、盗聴という違法な捜査を認めることになる。これまで警察を取材してきた人間としては、これは絶対に看過できないということを申し上げて、中座することをお許しいただきたいと思います。ありがとうございました」

青木「ありがとうございました。これ以降、五十音順にさせていただきます。では、岸井さん、よろしくお願いします」

岸井「岸井です。皆さんもおっしゃっていて、改めて言うまでもないことですが、ご承知の通り、これまでの国会審議を聞けば聞くほど、取材を続ければ続けるほど、テロ対策とはほとんど無縁…というよりも、何の関係もない『テロ』という名目で偽って、3回廃案になった、あの共謀罪を生き返らせようという意図が非常にはっきりしている、という感じがします。

 聞いたところでは、当初は『この国会でどうしても』というのではなく、『なかなか難しいだろう』という感じでした。ところが、『テロ対策とすれば、なんとかいけるんじゃないか』となってから、バタバタと国会に持ってきた。ご承知の通り、もともと自民党の原案には『テロ』の『テ』の字もない。そういう法案なんですよ。

 もう一つ目の問題は、『テロ等対策』の『等』は600いくつあったものを半減させて277です。何を根拠に、どういう犯罪が対象になるかを、どうやって決めたのかについて、大臣は『そんな基準はありません』と、国会答弁で答えた。どんなことでもテロ対策という名目で、共謀罪に当てはまってしまうという。こんな法律は聞いたことがない。

 先ほど大谷さんもおっしゃっていましたが、大臣の答弁が二転三転して、この人は何も分かっていない。最近、本当に皮肉な冗談で、金田大臣を評価する声があります。こんなでたらめな法律は、まともに答えられるはずがないから、本当に正直な大臣なんじゃないかと。何を聞かれても、テロに持っていく答弁をどうやって作るかといっても、それは無理です。

 国会審議の参考人招致というのは、与野党が合意しなければ決められないんです。それを、野党の賛成も合意もなしに、与党の多数で押し切って、刑事局長を同席させ、ほとんど刑事局長が答えている。そして、刑事局長が答えたことをそのままオウム返しに大臣がしゃべるという、本当におかしな国会審議をやっている。こんなことを数の力で押し通して、許されるのか。考えられないですよね。

 既に日本弁護士連合会、日本ペンクラブも、廃案に向けて頑張ろうと決めています。我々の気持ちもまったく同じです。こんなものを通したら、本当にえらいことになる。

 もう一点、あえて申し上げますと、私たちはこれまで何度か、このような会を持ちました。特定秘密保護法、集団的自衛権の閣議決定、安保法制のときです。そして前回は電波停止発言について。高市大臣の、憲法違反の発言です。『たった1つの番組でも、偏向を直せと言っても直らない場合は、その局の電波を止める』と。偏向しているかどうかを誰が判断するのかという質問に、『それは政府です。そういう権限が誰総務大臣にはあります』と。こういう乱暴なことを平気で言うんです。

 こういう一連の流れは、安倍政権4年間のアメリカとの一体化から来ている。安保法制、集団的自衛権、秘密保護法、共謀罪、すべて連動している。これらが一体のものとして出てきているという視点を持つ必要があるというように思っています。以上です」

青木「ありがとうございました。じゃあ、続いて小林よしのりさん、よろしくお願いします」

小林よしのり氏(以下、小林)「この共謀罪が、世論調査ではもう、賛成のほうがパーセンテージは多くなってしまっています。これを突破しなければ、どうにもならない。共謀罪に反対している人は左翼だという認識で、保守がこれに反対するはずがないと思っている。一般の90%以上の人が、『自分は一生テロも犯罪もするはずがないから、関係がない』と思っています。『そんな人は、さっさと捕まえればいい』としか思ってない。だから、関心がない。

 わしは国会に参考人招致で呼ばれて話しました。人数構成では自民党の人のほうが多いんです。わしは自民党の議員には左翼と思われていませんから、真剣に聞いてくれるんです。ヤジが来るか、意地悪な質問をされるかと思ったんですが違いました。わしがこの共謀罪の危険性というのを、どちらかというと右の方向から訴えたからなんですね。

 ふつうは、ほとんど90%以上の人が、もの言わぬ市民として暮らして一生を終えますよ。けれども、何かあったとき、例えば、わしが関わった薬害エイズ事件のようなことがあれば、自分の子供が、国家権力から非加熱製剤入りの注射を打たれて、無差別テロのようなことをされてしまっているわけですよね。こういうときは、権力と戦わなきゃいけなくなるんですよ。

 だから、もの言わぬ市民のはずが、被害を被ったときは、もの言う市民に変わるんです。そんな場面を、ふつうの市民が想像できるかどうか、ここにかかってるんですよ。ものを言わねばならない市民に誰もが変わる可能性がある、ということを、マスコミの人たちがちゃんと伝えてくれないと。

 わしは薬害エイズの訴訟を支える会の代表でした。代表としてテレビで『天誅』とか言うと、パフォーマンスかどうか、内心はわかりませんよね。でも、脅したいから『ぶっ殺す』という、右翼が使う言葉を口に出します。すると、この団体が変容したと公安から見られて、監視対象になってしまう。学生たちと『無害なガスはないか』みたいに、実際に『謀議』を企てているんですから、通信傍受されてしまったりするわけです。

 一般の人にもそういう切羽詰まった事態に迫られることもあるんです。自分たち、子供たちの被害に対して、究極の戦いを迫られるときも来るんです。そういう人たちもいることを考えないと民主主義は成立しませんよ、と言っているんです。常に安全に暮らせる多数の人たちだけで民主主義は成り立たない。権力の被害者になるマイノリティをどうやって救うかってことを考えないと、民主主義は健全に機能しません、と言ったわけです。

 こういう話をしたら、自民党の議員は誰ひとり首を振る人間なんかいなかった。ウンウン頷いてましたよ。自民党の議員がね。だから、マスコミの説明の仕方に問題があると思うんです。もっとちゃんと啓蒙してほしい。『自分たちは関係ないって思っているかもしれないけど、それは分からんよ。あなたの子供は、どんな目に遭うかもぜんぜん分からないんだから。そういう時にちゃんと救える社会にする必要がある』と。

 しかも、権力が、恣意的な形で『こいつらは変容したからテロ集団だ。だから監視してもいい』と言うことができる。『そういう世の中にするとまずいですよ』とわしは訴えたけれども、マスコミの人たちも、もっと国民に分かるようなかたちで伝えてほしいと思います。以上です」

青木「ありがとうございました。続いて、斎藤貴男さん、よろしくお願いします」

斎藤貴男氏(以下、斎藤)「私は1999年に『プライバシー・クライシス』という本を書くための取材を始めて、20年ぐらい監視社会の取材をしているので、分かっているつもりですが、この共謀罪が本当に通ったら、表現の自由だけではなく、内心の自由も、さらに人権そのものまでも完全に侵害されることになるだろうと思います。

 私たちはすでに、政府にとっては単なる番号に過ぎません。名前というのは、親からもらったニックネームに過ぎないわけで、政府にしたらマイナンバーの何番なんですね。別に、欲しいとも言ってないのに『マイ』なんて言わされていますが、これは『スティグマナンバー』つまり、奴隷の刻印番号だと私は思っています。

 他にも、今はそこら中にある監視カメラ網、その顔認識システム、GPS捜査とか、目の虹彩、網膜、指紋、声紋、掌紋など、いわゆるバイオメトリックスが全て連動して、私たちの一挙手一投足が政府に見張られ、それが民間にも開放されて、マーケティングの役に立たされていく。

 そうなったら私たちは、人間というよりは単に息をする財布であり、政府の思い通りにただ操られるだけの生き物になります。共謀罪というのは、その最後の仕上げだと思います。ものを自由に考えたり、主張したりということは、もう一切許されなくなる。許されるにしても、それはお上の判断次第。お上が『こいつは別にそれほど邪魔にならないからいいか』と思えば、放っておいてくれるだろうし、そうでないと思えば捕まえる。気分が悪ければ捕まえる。ちょっと反対運動が盛り上がってきたと思ったら、片っ端から捕まえる。そういうことに必ずなります。

 すでに昨年、刑事訴訟関連法制が通りまして、司法取引もできるようになりました。盗聴法も拡大されました。まだ法律にはなっていませんが、警察庁内部には、会話傍受という計画もあります。警察官が何か怪しいと睨んだ人間の自宅や事務所に勝手に忍びこんで、盗聴器や監視カメラを付けてもいいというものです。

 警察庁はまた、全国民のDNA型データベースの構築も検討しています。GPS捜査も最高裁で否定はされましたが、これを早く法制化しなさいという意見がついています。これも非常に不気味です。

 テロ等準備罪とか言っていますが、私に言わせれば、もちろん治安維持法なんです。けれども、それでは今の若い人には分かりにくい、と言うならば、自由禁止法、絶対服従法と呼んでも過言ではないと思います。

 2013年の麻生さんのナチス発言を思い出してください。ナチスの手口に学んで、いつの間にか憲法が変わっているようにしようと、彼は言ったわけです。実は、ナチス憲法というものは存在しません。世界一民主的と言われたワイマール憲法が無効化されたんですが、日本では緊急事態条項もないのに、何でもかんでも強行採決で、実質的にすでに憲法は無効化されているのも同然です。共謀罪はそれにとどめを刺すものです。

 私は、自分たちが表現者、言論人だからという理由だけで反対してるのではありません。人間が人間であるためには絶対譲れないことを守るために反対しているつもりです。私の父はシベリア帰りで、昭和31年までシベリアにいたんですが、帰ってきてから昭和54年に亡くなるまでずっと公安の監視下にありました。お国のために戦って、捕虜になって、11年間の強制労働に耐えて、帰ってきた人間が、死ぬまでお巡りさんに見張られていたんです。私の就職にもおおいに影響しました。共謀罪ができたら、マイナンバーや監視カメラと合わせて、日本中の人が私たちと同じような目に遭います。

 そして、政府や企業の要職とか、まともな仕事は、すべて有力者の関係者だけで占められることになるでしょう。普通の人がのし上がる道は一切残されなくなります。以上です」

青木「ありがとうございました。ちょっと段取りが悪くて、五十音順のはずだったんですが、お一人飛ばしてしまいました。岩上さんお願いします」

岩上安身(以下、岩上)「ジャーナリストでインターネット報道メディアIWJ代表の岩上安身と申します。よろしくお願いします。テレビのキャスターの方々が中心になって声を上げている模様を、これまでも繰り返し、中継してきました。今回は金平さんから電話がかかってきまして、非常に切迫した口調で、さっきの弱気な文言『もう遅いかもしれないんだけど、なんとかやりたいんだ。後悔したくないんだ。テレビだけではなく、インターネットメディアからも出てくれないか』というお話で、もちろんすぐ『参加させていただきます』と、ご返事をしました。

 テレビ局のキャスターとは落差のあるインターネットメディアですが、一般の人から見れば、顔と名前を出して活動している人間は、特別な人間で、逮捕されることも辞さない覚悟ができている人間なんだと、一線を引かれていると思います。しかし、覚悟なんかできておりません。たいへん怖いと思いながらやっている、普通の市民の一人です。

 そういう一人として思うのは、呼び掛け文は素晴らしい文章なんですが、『表現の自由、言論の自由、報道の自由を著しく破壊するものである』とあり、これだけだと、マスコミ従事者、フリーのジャーナリスト、あるいは小林さんのような表現者、といった人たちだけが対象なんだ、と思われてしまうのではないかということです。1億1千999万人ぐらいは関係ないと思われがちですが、そうではなく、共謀罪は2人以上の会話、手紙、メールを対象とするわけですから、本質は、コミュニケーションの自由を侵すということです。

 内心の自由だけではなく、コミュニケーションの自由をすべて奪う、あるいは監視下に置くということです。マスコミュニケーションだけでなく、通常のコミュニケーションも全て含まれます。1億2千万人のあらゆる人が使うメール、SNS、電話、さらに口頭のコミュニケーションが対象になります。遅きに失してないと思いますので、これを強く、お伝えしたい。

 密告も奨励されますから、家庭内、友人間、恋人間、親しい間柄の会話も、すべて油断のならないものとなります。私はソ連を取材していたことがあるので、密告社会というものを見てきました。あらゆる公的、社会的な人間関係、親密な、個人的なつながりを破壊しつくします。人を信じるということができなくなります。

 ここだけの話というものが通用しなくなります。家庭内からも密告は生まれ、逮捕されることもあります。そういうことに対する恐怖心というものは、これまで自由で平和な社会にいた私たちにはピンとこない。しかし、そこをお伝えしていかなければいけないと思っております。まだ遅くない。

 一般の人々のコミュニケーションこそが対象で、これが大量監視システムによって行われます。ある個人、例えば斎藤さんに狙いを定めたら、息子も公安監視下に置いて、一人だけを狙うというものではありません。我々の通常のSNS、メール、通話を大量に記録し、それを後から検索して、欲しいところをピックアップします。それを通じて人間関係を全てたどれるというシステムがあるわけです。

 そのシステムが、スノーデンが託したアメリカのNPO『インターセプト』によって明らかになり、あの腰抜けのNHKですら報じました。こういう大量監視システムをアメリカは学習し、日本にもやらせて、そこに上がってきた情報をアメリカは全ていただき、日本の要人、政府、企業、ありとあらゆるところに盗聴を行い、さらには日本が日米同盟から離脱するようなことがあったら、あらゆるインフラにマルウェアを仕掛けて、徹底的に破壊する。そこまでしようとしていることを視野に置かなければならない。

 では、共謀罪はいったいどこから始まったのかというと、海渡弁護士によると、初め日本政府はやる気はなかったそうなんです。ところが、あるとき日本と米・カナダ政府との非公式会議があって、そこからコロッと変わって、どう考えても理屈に合わない内容の法案を理屈に合わない理由で導入するということになった。ある法務官僚が『やらなくてはならなくなって、たいへんだよ』と、漏らしていました。つまり、自分たちがやるべきだと思っているのではなく、アメリカのためです。我々国民の情報がそっくりアメリカに伝えられる。これが大きな問題です。

 もう一つ、この共謀罪に関して指摘しなければいけないことは、ありとあらゆる人のコミュニケーションが対象になるはずですが、政治的権力者、経済的権力者の犯罪は除外されているんです。警察の特別公務員職権乱用罪、暴行陵虐罪、あるいは政治家の公職選挙法違反、それから政治資金収支法違反、政党助成金違反、これらの罪は今回の227からパスされているんです。警官や政治家という非常に強い権力を持っている人間が対象になるものや、企業の汚職に関わるようなものは外されている。

 商業賄賂罪、会社法、収賄罪その他も省かれている。これは事前に、大企業、経団連に見せて、外してくれと言われたんでしょう。これこそ共謀です。これは、日本とアメリカ政府の共謀であり、日本の経済的な強者、公務員、政治家の間で、自分たちは外してもらうという共謀が行われたということです。自分たちの犯罪類型は除いて、ごく一般の人々を対象にするという、たいへんなダブルスタンダードになっている。こういう点も指摘しないわけにはいきません。

 法の下の平等を損ない、権力犯罪は見逃される、非常に不公正なものになっている。例えば、今回の森友事件は、安倍総理夫妻と官邸と財務省と大阪府とその他が共謀して行った犯罪だと思いますが、こうした事件は問わないようにする。権力の犯罪は追及できなくなるということです。

 権力の犯罪を追及しようとする言論も徹底的に叩かれるようになる。『これおかしいんじゃないの』という編集会議の、立ち上がりの段階で潰されてしまう。さらに、そういうメディアを応援しようと、『東京新聞いいね』『日刊ゲンダイいいね』と言う人々や、SNSを駆使してデモを計画しようする人々も、全て監視下に置かれてしまう。こうした大量監視のシステムを、アメリカが絡んでいるということを含めて、根本から徹底的に批判すると同時に、共謀罪の廃案に向かって、我々は努力していかなければいけないと思います。

 共謀罪は、日本が米国の戦争の鉄砲玉として利用されていく道の一環です。軍機保護法に代わる秘密保護法、大本営に代わるNSC、そして治安維持法に代わる共謀罪というふうに、全てが一揃いになっている。共謀罪は、ジャーナリストだけに降りかかる災いではないということを改めてここで訴えて終わりたいと思います。ありがとうございました」

青木「では、続いて金平さんお願いします」

金平「私は長い間テレビの報道に携わっていて、皆さんの側から見てきました。これまでも情報公開法、特定秘密保護法、電波の停止発言のときには、テレビで仕事をしている人に声をかけて、こういう記者会見を開きましたが、共謀罪というのはそれらに比べてレベルが全く違う、稀代の悪法だと思います。

 すでに何人かの方がおっしゃったように、これは平成の治安維持法です。まだやっていないことについて、人間の内面を裁くという、とんでもないことが起きようとしています。つまり、国策に従わないものは犯罪予備軍であるということです。そこには必ず首謀者がいて、共謀的な連携関係があるに違いない、という捜査機関の思い込みが、異様な形で、膨らんでいくのを、私たちは歴史上見てきました。

 今の時代ですと、メールでのやり取りとか、ツイッターでのつぶやき、フェイスブックでの『いいね』、LINEで繋がっているとか、そういうものが全て共謀的な関係の傍証にされてしまう、監視社会が生まれる恐れがあるということに対して、とてつもない危機感を抱いています。実際に、治安維持法下の特高警察が、ガサ入れをやっていたときの話ですが、当時は社会主義者を取り締まっていたので、本箱にあった『昆虫社会』という本を押収していったそうです。捜査機関の想像力というのは、私たちには想像もつかない形で、あらぬ方向に膨らんでいくわけです。

 声明文の中に『監視の眼差しが人々に内面化されていく』という部分があります。パノプティコンという監視システムがありますが、人は、自分から見えない者に監視されているという思い込みがあると、監視されていようがいまいが、自分から監視者に合わせて自分の自由を放棄するほうに進みます。メディアの自粛とか、自己規制、忖度というような言葉がありますね。監視の眼差しを内面化することが起きている。

 例えば、今村復興大臣の発言を聞いた政治部の記者たちが、『いや、もっと全体的な文脈を見てから判断しようじゃないか』とか、『うちが最初に報じるのはちょっと待とうじゃないか』とか、突出することへの恐れが、いま実際にあります。『東北で良かった』という発言と、『辺野古が唯一だ』と言う政府と、どこに違いがあるのかと、個人的には思っていますが。

 報道放送に関わってきた人間として、将来、『いったいあの時、マスメディアの人間たちは何をしていたんだ』と言われることにならないように、ここで声をあげることが重要だと思っています。私たちは特権的な地位にあるわけではなく、むしろそっち側にいる人間だと思っています。いま報道現場で起きている萎縮とか、自己規制、忖度を考えると、非常に危機的な状況にあると思っています。ですから、この共謀罪法案について、しっかりと問題提起をして、国民の自由が脅かされる危険性を伝えていかなければならないとい思います。

 余談ですが、今日この集団はまったく共謀罪的な集団ではありません。中心になる首謀者もいませんし、会場作りも、早く来てみんなでやって、声明文も『ここ削ったほうがいいんじゃないか』などと、直前まで揉めているような集まりです。昨日バイトを雇ってFAXしたときも、会社のを使わず、コンビニに行って送りました。

 そのぐらい、どうでもいいような僕らの集団ですけれども、権力を持っている人たちというのは、想像力があらぬ方向に働いて、こういうことをやるには首謀者がいて共謀的な関係にあるに違いない、というふうに考えるんですね。繰り返しになりますが、私たちは全く共謀的な関係にはありません。むしろこれまで敵対的な関係にあった人たちもいて、共謀罪ということの恐ろしさについての認識だけで一致して、いまここに座っているというわけです。私からは以上です」

青木「ありがとうございました。では、続いて神保哲生さんよろしくお願いします」

神保哲生氏(以下、神保)「ジャーナリストで、ネットメディア『ビデオニュース』の神保です。共謀罪の問題点は皆さんから全て挙げられると思うので、私から特に言うことはありませんが、共謀罪がなんでまずいのかということを話しているということ自体が、そもそも非常に不思議です。

 まず、立法事実がない。何のために作ったのか全く分からない。それなのに、それに賛成か反対かという話が、なぜ必要なのかということが分からない。その目的も全くわからない。いま治安が史上最高に良い状態なわけです。テロは日本では起きていない。しかも、この法案はテロ対策法には全くなっていない。条文にはテロ対策が、事実上一つも入っていないわけです。

 条約の署名が必要だといいますが、そのパレルモ法は組織暴力に対する条約であって、そもそもテロを防ぐ条約ではないわけです。そのために必要な『テロ準備罪』と、主要メディアが平気で呼んでいる。そのこと自体が僕には信じられないです。これに反対をしなければならないこと自体が信じられない。ありえない。『バカ言ってんじゃないよ』の一言で終わりにならなければおかしいのに、これだけ人が集まって、その法律のどこがおかしいのかということを真顔で議論していることが非常に不思議で、外国人記者から『どうなってるんだ』と言われます」

 それを指摘した上で、一つだけ言っておきますと、今の国会でも、天下の悪法がいっぱい通っています。大げさではなく、本当に国家百年の計に関わるような法律が、あたかも法案自動成立装置であるかのように国会をどんどん通ってます。それは、福島先生には申し訳ないけれど、野党に力がないことも大きな問題です。自民党内に対立勢力がないことも問題でしょう。

 例えば、種子法は廃止になってしまいます。家庭教育支援法も天下の悪法です。さらに、水道民営化法。これには賛否両論ありますが、今のままでは明らかに危ない。森友事件の陰で、ということもあるんでしょうけども、本当は国家百年の計に関わるような、大きな影響のある法律が、一般の人々の目に触れる審議がほとんどないまま、どんどん通ってしまっている。国会が法案自動成立装置になっている。

 ただ、そんな中でも、共謀罪だけについては、どうしてもやっぱり言っておかなきゃいけないことがあると思う。変な法律が通って、悪法も法なりとなってしまった場合でも、ほとんどの法律はやっぱり悪いということが後から分かる。検証が可能なんです。共謀罪が通ったとして、次から次へと共謀罪違反で人が逮捕されるのであれば、共謀罪は危ないと誰でも分かるんですが、共謀罪はそういうふうに使われないんです。

 犯罪の疑いがあれば、盗聴権限がある。犯罪の行われる前に盗聴しているわけです。共謀罪ができると、共謀罪の疑いがあれば、その段階から盗聴もできると。では、どれだけ盗聴をしたかという証拠が、裁判で出てくるかといえば、出てきやしませんよ。盗聴をもとに証拠を積み上げて、犯罪をでっち上げもできるかもしれないし、別件逮捕もできるかもしれない。盗聴法と似ていて、共謀罪は、それが乱用されて暴走していても、我々にはそれが分からないから、本当に気をつけなきゃいけないということなんです。

 他にもたくさん悪法が通っています。場合によっては百年の計です。水道がどんどん民営化されて、外国資本に支配されたとして、後からそれを取り戻そうとしても簡単には取り戻せない。それでもどういうことが起きたかは分かります。ところが、共謀罪は何が起きているのかが分からない。可視化されてないという意味で、心の中に入ってくる法律であるとか言われます。その意味では明らかに次元が違う。

 繰り返しますが、立法事実もなく、目的もはっきりしない法案が、なぜか国会に上がっていて、いつの間にか5月中旬に通るなんていうことを、平気で皆さんが言っている。それに対して、これだけ人が集まって、いかにそれが悪法かっていうことを言わなきゃいけない。けれども、そもそもそんなこと言う必要がないほど、この法律を作らなければいけないような状況もないし、その目的もはっきりと間違っている。言っていることが全ておかしい。

 しかも、それが通ってしまった場合に、その影響を我々は知ることができない。共謀罪があったから、こんなことになったということが分からないということです。私たちビデオニュースは、小さいと言っても国家百年の計に関わる法律に反対するような番組を作っています。天下の悪法はたくさんある。しかし、共謀罪はやはり次元が一つ違うと思います。そこで、今日、金平さんと青木さんから声をかけられて、『私もぜひ一緒に参加させてください』ということで、末席を汚させていただきました。以上です」

青木「ありがとうございました。では、続いて田勢康弘さんお願いします」

田勢康弘氏(以下、田勢)「田勢康弘です。50年ほど日本の政治を見てきておりますけれども、私は、この法案以前の話で『教育勅語を賛美するような内閣が用意するものは、すべからく信用できない。こんなもの潰さないかん』とずっと思っています。

 もともと私自身は自分の立ち位置を、右でも左でもなく、なるべく真ん中あたりに置こうと、ずっとやってきたんですが、気が付いてみると、いま私はかなり左のほうに位置づけられているんですね。ここにおられる人の大半も『最近あんまりテレビで見ないな』という感じで、世の中全体、特にテレビの業界は忖度が働いて、みんな外されている感じがするんです。世の中、本当に右傾化していると思います。

 一方で、メディアは報道すべきことをきちんと報道してないのではないかと考えている国民がたくさんいると思うんですね。一つ例を挙げますと、カールビンソンに日本の海上自衛隊の護衛艦が二隻ついて、堂々と日本海にやってきた。これを批判している記事を私見たことないんですけども、こんなものを放っておいていいんでしょうか。そんなことがごく当たり前になっている、変な国になっていると思い、参加させていただきました」

青木「ありがとうございました。それじゃあ、続いて、津田大介さんお願いします」

津田大介氏(以下、津田)「はい。ジャーナリストの津田大介と申します。共謀罪は国会であまりまともに議論されていないということもあって、現政権あるいは自民党の狙いがどこにあるのかが、非常にわかりにくい。自民党の考え方を一番素直に本音で語られているのが、もと警察官僚の平沢勝栄さんだと思います。金平さんの報道特集でもおっしゃっていましたけども、平沢さんは、テロ対策のためにこれが必要だということを前面に押し出しています。『今までは犯罪が行われて初めて処罰されていた。テロ対策のために、今後は話し合われた段階で処罰する。これが大きな転換だ。テロを防ぐためには監視を強めるしかない』と。

 『しかし、監視を強めると、プライバシーや表現の自由、あるいは他のいろいろな人権が制限されることになるが、テロ対策、安全のためには人権が制限されることも致し方ない』と、かなり素直な言葉で語られている。そういった真意が国会の議論ではなかなか出て来ないということも、この問題がわかりにくくなっている一つの要因だと思います。

 共謀罪の問題を単純化して語るならば、進めたい側が『安全を取りますか。それとも人権を取りますか』と突きつけているという構図だと思います。もちろん、その議論に乗るか乗らないか、そもそも監視を強めることでどれだけテロ対策になるのか、といった個別の議論はありますが、この構図がなかなか共有されていないと、感じています。

 先ほど神保さんもおっしゃっていましたが、いま日本の治安は体感も含めて最高にいい状態ですよね。組織テロは1995年のオウム事件以来起きていないわけですし、犯罪白書を見れば凶悪犯罪は年々減ってきて、非常に安全になっている。もちろん、それは斎藤貴男さんもおっしゃっていたように、監視社会が強まった結果として、そうなったという面もあるわけですが。ただ、これ以上、監視が必要なのかということです。

 なぜ日本では、テロや犯罪がこんなに少ないのかといえば、法律にも関係はありますが、単純に銃規制が厳しいからです。水際対策もきちんとやっている。失業率も先進国の中では相対的に低い。犯罪率が低い原因がいろいろある中で、テロ対策が本当に必要なのか。必要だとすれば人権の制限はやむを得ない、という構図を理解したうえで、国民が議論をしなければいけない。

 ところが、国会では議論がまったく出来ていない。本当にこれが必要なのか。また、この法律ができることによって得るものと失うものは何なのか。得るものはほとんどないと思います。たぶん警察にしかない。これが出来たらどうなるのかを想像していただきたいと思っています。以上です」

青木「ありがとうございました。では続いて、鳥越俊太郎さん、宜しくお願いします」

鳥越俊太郎氏(以下、鳥越)「鳥越です。二つ申し上げます。まず一つ目に、皆さんもお気付きとは思いますが、安倍政権は戦後最悪の政権です。特定秘密保護法案はじめ、集団的自衛権の閣議決定、安保法制、そして共謀罪。次々と悪法を提出しては、数に任せて国を通過させ、成立させています。こんな内閣は過去にはなかった。悪法が提出されれば、自民党の中にも必ず反論があって、それが国民の広く共通の課題となっていた。

 しかし今は、とんでもない悪法が出てきても、自民党の中で議論さえ起きない。法務大臣が何一つ答えられない状況の下でも、どんどん審議が進む。私たちはいま、そういうとんでもない時代の曲がり角に生きているということを皆さんには自覚していただきたいと思います。戦後70年ずっと見てきて、私はそう思います。

 みなさんがおっしゃるように、今回の共謀罪の最大の問題は、私たちの内面に侵入し、何を考えているか、何をしようとしているのかを、警察、公権力がさまざまな手で察知し、何らかの手を打つ。おそらくこれは、オウム真理教によってサリンを撒かれたという、警察の失態の記憶に一つの原因があると思います。

 また、いまヨーロッパ、中東を中心として起きているイスラム過激派によるテロ行為が、日本人にも不安感を呼び起こしてる。北朝鮮の一連の報道も、テロに繋がるのではないかという不安感を、戦後おそらく一番、社会にみなぎらせている。そこに共謀罪が出てきて、世論調査でも、必ずしも共謀罪に反対ではなく、賛成の方がけっこういらっしゃる、というような状況を作り出している。だからこそ私たちは、国民の皆さんに共謀罪の実態を知っていただきたい。これが第一点です。

 もう一つ。私は、この共謀罪の話を聞いていると、小林多喜二の死を思い起こします。皆さんもご存知でしょう。今から84年前の1933年、築地警察署の中で亡くなりました。彼は何か犯罪行為をしたんでしょうか。彼はまず、共産党への献金ということで捕まりました。そして、彼が書いたものが不敬罪に当たるということで起訴されました。最後は治安維持法によって、築地警察署の中で長く拘留をされました。その間、拷問され、棒で殴られて殺されました。お母さんが遺体を見たときに、全身が真っ黒に膨れ上がっていた。

 これは歴史的にも明らかになっています。小林多喜二の死は遠い昔の話のようにも思えます。何も罪を犯してない。しかし、思想が危険だ。誰かと共謀したら事件が起きてしまうから、事前に逮捕して拷問でもなんでもして吐かせてしまおうという時代があったわけです。そういう時代が、いま来ているとは思いません。しかし、この共謀罪がもし成立すれば、何にもしていなくても、罪を犯さなくても、考えていることや、誰かと話してることが共謀罪で警察と検察によって認められ、逮捕されてしまうというような事態が起きてもおかしくないと思います。

 したがって、戦後最悪の、国民の自由に対する挑戦である共謀罪は、なんとしてでも食い止めなければならないと思っています。皆さんもそこをご理解の上、共謀罪については、ぜひ繰り返し、報道していただきたいと思います。以上です」

青木「ありがとうございました。続いて、安田浩一さんお願いします」

安田浩一氏(以下、安田)「安田浩一です。宜しくお願いいたします。既に皆さん、ご存じの通り、現段階において、警備公安警察というのは、もう既にかなり危うい捜査を日常的に行っているわけです。そこに政権が制度的な保証を与えてしまうということ、さらに加えて、新たな権限を付与するということがどれだけ危険なのか、それを我々は認識すべきではないかと思っています。

 共謀段階から捜査するためには、我々の日常的な会話を含むプライバシーに網をかけることができなければ、共謀、共同を立証することはできないわけです。ですから、一般人は無関係ではありえません。何か特別、特殊な人々のみに適用されるものだという認識が社会の一部に存在しますが、そうではない。

 テロリストはテロリストの看板を掲げていません。テロリストにも犯罪者にも日常があり、その日常を私たち一人一人も共有しているわけです。つまり何が摘発されるのかよりも、私たちが日常の捜査の網のなかに含まれるということに、危機感を持たざるを得ません。いわば戦前の治安維持法だと、今の鳥越さんの話にもありました。戦前回帰と言われますけども、さらに何かもう一歩踏み込んで新しい世界を切り開くようなものではないかという気もします。

 私たちの社会がこれまで積み上げてきたものが一つ一つ奪われ、一つ一つ壊されていく。そういう過程にあるような気がします。社会の軋む音をどこでどうやって止めることが出来るのか。小林よしのりさんのお話の中に『保守』という言葉がありましたが、社会を保守するのであれば、私たちの社会がこれまで築きあげてきたものを死ぬまで保守したい、と私は強く思うわけです。

 私たちが守らなければならないものは何か。保守であるのであれば、私たち自身で、私たちの社会が築き上げてきた言論の自由、表現の自由、民主主義を死ぬまで保守する必要があるのではないかと思っています。社会を萎縮、沈黙させることは保守でもなんでもなく、社会を壊すことです。これ以上の社会破壊を許さないという思いで、私も共謀罪に反対しています」

青木「ありがとうございました。続いて、吉岡忍さん、よろしくお願いします」

吉岡忍氏(以下、吉岡)「吉岡忍です。もう皆さん、いろいろ語られてますので、繰り返すことはありませんが、一つ私がどうしても言っておきたいことは、この共謀罪は憲法に違反しています。思想の自由、表現の自由、憲法で定められた19条、21条にある法律です。また、憲法の35条には、令状なしに自分たちのプライバシーや所持品などを捜査されない権利が定められている。ところが、共謀罪では、この令状なしに踏み込んでくる。そういう憲法違反の側面というのを非常に濃厚に持っているということを忘れてはならないと思います。

 第二に、あらゆる法律は憲法に源泉がある。憲法が正当性を与えているわけですが、今回の600から277へ変遷はありますけれども、共謀罪がこういったたくさんの法律を串刺しにして動員することによって、憲法が法律を律している、立憲主義そのものが揺らいでくるという側面を濃厚に持っている。この点もきちんと押さえておかなければならないと思います。

 三番目に強調しなくてはならないことは、ありとあらゆる言論、表現、良心、内面の自由に関わる法律は、常に悪質化するということです。皆さんすでに過去の例を挙げましたが、現在でも例えば国旗国歌法で、あらゆる強制はしませんと言っていたのに、すでに変質をしています。道徳教育は教科ではなくホームルームのような授業であると言っていたはずなのに、いつのまにか、これは教科であるから成績をつけるとなり、この子は良き日本人であるかどうかということに成績を付けるという動きが始まっています。

 こういう良心に関わる、内面に関わる法律は必ず悪質化する。必ず強制力を伴う。これは過去の経験、過去の歴史がそう教えているだけではなくて、今の、現実もそう教えています。共謀罪はそうなっていく可能性が非常に高いと懸念しています。以上です」

青木「ありがとうございました。では、最後に僕も少しだけ。青木理と申します。皆さんがおっしゃったことに、特に付け加えることもありませんが、先ほど大谷さんに触れていただきましたように、警察の取材というのをかつて長くしていました。今日、国会、参議院の議員会館でやっているのは偶然なんですが、国会にも近いということで一言だけ申し上げたいんです。

 僕らが異議を申し立ててきたのが、特定秘密保護法、通信傍受法の強化、盗聴法です。さらに去年の司法取引導入、それから今回の共謀罪。つまりこれは、警察に次々に武器を与えているということなんです。僕は警察を取材してきたからよく分かるんですが、警察は、全国におよそ30万人が北海道から沖縄まで津々浦々情報網を張り巡らせていてる組織です。大半の警察官は武器も持っている。機動隊も擁している。人を逮捕したり、身柄拘束したり、強制捜査する、という強大な権限を持っている、実力組織なんですね。

 警察官の人たちは、おおむねまじめですし、一生懸命仕事してるんですが、強力な実力組織だから、政治がきちんとコントロールをしないと危ないという恐れを、政治家の人たちは本来持っているべきだと思うんですね。

 しかし、特定秘密保護法も通信傍受法も、次々にやすやすと与えているんです。これは、責任ある与党にいる政治家の方々の、ある種の平和ボケだと思っています。共謀罪がどうなるかは分かりませんが、歯止めをかけようとか、恣意的な運用をさせないようにする、といった工夫を凝らしている節がまったくない。このまま警察に次々と武器を与え続けたら、後悔するときがいつか間違いなく来ると思っています。私からは以上です。

 あまり時間はありませんが、質疑応答の時間を取ります。神保さんに仕切っていただこうと思います。よろしくお願いします」

神保「ご指名なので、質疑の部分の司会を務めさせていただきます。時間が限られていますので、どなたに対する質問なのかをはっきりして、演説ではなく明確に質問をしていただきたいと思います。それから、複数の方に質問をするのも結構ですが、全員に対しては時間的に厳しいので、その場合は答える方だけに答えていただくということにします。それでは、質問をお願いします。最初に挙げた方、どうぞお名前と所属を言ってください」

記者「ありがとうございます。ザ・プレスジャパンの桜井まゆみと申します。神保さんと金平さんにお願いします。特定秘密保護法と共謀罪の関係について、特にテレビが特定秘密保護法の検証をしたかどうか。特定秘密保護法から共謀罪に至るまでのメディアは何をしていたのかということについて、反省ともどもお願いします」

神保「金平さんいかがでしょう」

金平「特定秘密保護法に対してのフォローアップが出来てないという批判だと思いますが、そういう面はあります。私が関わっている番組もなかなかフォローアップが出来ていません。何も言い訳はありません。ご指摘については、きちんとやっていきたいと思います。特定秘密保護法、通信傍受法と、共謀罪とは、三位一体どころではなく、共謀罪のあり方を補強していく道具としての法律として機能していくだろうと、私は思っています」

神保「僕は、特に付け加えることはないです。特定秘密保護法は、さっきの話で申し上げましたとおり、実際の運用状況を検証するのが非常に困難なので、我々も多くが反対していたわけです。既に運用が始まっているんですが、実際どの程度乱用があったのかを知るのは簡単ではないという状況です。そこは力不足だと思います。だから、今回の共謀罪もすべきではないという立場です。

 共謀罪についてはおっしゃるとおりで、閣議決定されるまで本当に出てくるかどうか分かりませんでした。出す側も、どれくらい反対が出そうかなと空気を読んでいます。どれくらいポリティカルキャピタルがかかるかを見極めながら出してくるので、その前からもっとしっかりやっておけば、出す方も逡巡した可能性があったというのは、その通りだと思いますが、一方で、出るかどうかも分かってないときに、それをメディアが報じても、なかなか読んでいただけないという問題もあります。批判は甘受いたしますが、苦しみながらやっているということもご理解いただきたいと思います。

 はい、どうぞ。お願いします」

記者「日刊ゲンダイの生田と申します。答えられる方に答えていただきたいんですが。世論調査でも、共謀罪に賛成が多数という状況で、反対が多数の法案でも強行するような安倍政権ですから、間違いなく成立に動いてくると思います。『もう遅きに失したかもしれない』という文言を削除されて、廃案にするということですが、会期が6月の18日までで、国民に訴えるとかいう抽象的な話ではなく、どうすれば廃案に追い込めるか、具体的な戦術が分かる方は教えていただきたい」

神保「どなたか、答えられる方はいますか。小林さん、お願いします」

小林「わしも自分のブログの中で『これはもう手遅れかもしれないが。将来、子孫のために、ここに反対していた人間がいるということを証明するために、記者会見に出よう』と書いたんだけれど、民進党の山尾志桜里衆議院議員から『そういう言い方をするな。自分はこれを廃案に追い込む。5月中頃か終わりぐらいまで、これをなんとかしぶとく戦っていく。都議選が始まってしまうと、参院の議長は公明党だから、強行採決はやりたくない。そうなれば、延期か廃案というところまで持って行く。だから、そういうマイナスの言い方をするな。とにかく強気で言ってくれ』という連絡がありました。

 だから、わしは『これを省いてくれ』と。ここで『遅きに失したかもしれません』と書いてしまうと、わしのところに、共謀罪の問題でもっと話聞きたいっていうメディアの依頼が来ているんですが、そんな依頼も来なくなってしまいます。せっかく国民を啓蒙していくチャンスが出来たのに、ここでもう無理だからと言ってはダメです。この法案は流します。わしもそのつもりです」

神保「済みません。司会の特権を乱用して一言付け加えさせてください。1999年の盗聴法のとき、ずいぶん反対したんですが、結局通りました。そして、この間の刑訴法の改正で、盗聴権限の対象となる犯罪が大幅に拡大されてしまった。それは1999年に皆さんが反対して押さえ込んだ部分だったんです。もうそろそろ盗聴への反対はないだろうと、ぐんと広げられてしまった。

 ところが、それが特に大きな問題として取り上げられていない。刑訴法の改正で、司法取引にしても盗聴にしても、新たな捜査権限がどんどん広がっている。そもそも冤罪に対する改革として始まった議論が、なぜか捜査権限の拡大につながっているのに、メディアがそれを叩こうとしない。だから、共謀罪も出されてしまう。

 もし今回、共謀罪は通るんだからと、抵抗をやめると、いま277の対象が、次は、たいした反対がないから、もっと軽い嫌疑にも広げようという方向に行く。共謀罪以外にも同じことはたくさんある。だから、共謀罪だけが問題なのではなくて、捜査権限や国家権限をどんどん拡大されている。そんな中で、共謀罪はもう反対してもムダだから諦めようというのは、あり得ない選択だと思います。

 はい。まだありますか。岸井さん、どうぞ」

岸井「一言で言うと、私の経験からは、どんな機会を使っても、とにかく声を上げ続けるべきですね。私、体調を崩して緊急入院したりして、講演がキャンセルになったりしましたけれども、そういうときに必ずお願いしたのは、とにかく周りの人に共謀罪にはこういう問題がありますって言ってください、声をかけてくださいと。共謀罪の問題が本当に知られていないんですよ。しかもテロ対策だとなったとたんに抵抗アレルギーがほとんど無くなってしまうんですね。

 安保法制のときの私の経験から話します。あれだけ圧倒的多数の憲法学者や法律学者が反対で、6割以上の国民世論が反対で、たいへんな反対運動があって、最終的には8割以上の人が国会あるいは政府の説明が不足していると言っていた。私が司会をやっていた番組でも、安保法制を40回取り上げました。

 別に最初から反対だったわけではなく、ずっと扱っていって、最後に私は『これはもうどう考えても問題が多すぎる。憲法違反もはっきりしている。こんなものを通したらえらいことになってしまう。なんと言っても、1番大きいのは、日米の軍事一体化を完全に実現することが最大の目的である法律だから、メディアはこの廃案に向けて声を上げるべきだ』という発言をしたわけですよ。

 そうしたら、なんと2つの有力な新聞が私を批判する全面広告を載せた。それが波紋を広げ、忖度したり、自粛したりという雰囲気になって、電波停止発言に繋がっていったわけです。高市さんに『偏向している報道番組というのがある。それは放送法4条の政治的中立性に反する』と言われると、どこか萎縮するんです。

 だからその後、去年の参議院選挙は、ほとんどの番組で争点を扱わなくなってしまった。なぜかというと公平に扱わなければならないからです。例えば私の番組で、安倍総理がわざわざ出てこられたとき、街の声を5人拾ったら5人ともアベノミクスに反対だった。すると安倍さんが『ちょっとおかしい。そんなはずはない。絶対おかしい。局が選んで、偏向した番組を作っている』と言ったんですよ。

 すると反対が5人だから、単純に物理的に、賛成を5人探してこなければならない。そうなると、現場はどうしても、それは面倒くさいという感覚が先に立つ。そういう忖度、萎縮で、参議院選挙報道の時間がぐんと少なくなった。その最大の原因が、争点を扱わなくなったことです。そういうことが起きている。だから、機会があれば必ず声を上げ続ける。『これはたいへんなことなんですよ』と言い続けなければならないと思います」

神保「はい。ありがとうございます。じゃあ、どうぞ。一番前の方」

記者「朝日新聞社の豊と申します。岸井さんに質問です。今回のこの共謀罪法案の政治手法に対する質問なんですが、もともとマフィア対策であった組織犯罪防止条約がテロ対策になり、名前が共謀罪からテロ等準備罪に変わる。先日、南スーダンのジュバであった戦闘も衝突になる。トランプ政権が誕生して、いわゆるポストトゥルースとか、オルタナティブファクトだとか言われますが、その観点から日本の政治で起きていること、安倍政権の政治はどう評価できるのかという観点から、ちょっとコメントをいただけますでしょうか」

岸井「いろいろな視点があると思いますが、今日の議論で触れておく必要があるのは、安倍政権の政権運営戦略の基本に、言葉の使い方にものすごく神経を使うということがある。一番悪いのは、国民を騙すことを目的に『この言葉は使わない。この言葉を使おう』ということを、積極的に戦略としている。だから国民は非常に騙されやすいんですよ。

 安保法制もそうです。実態は、米軍と一体化する戦争法です。それによってスーダンにも出ているわけです。集団的自衛権とは、他国のために自衛隊が戦うことです。そんなことは分かり切っているのに、国会では『そうではなく、国民の生命、財産を守るためだ』と言うんですよ。うそばかりの連続で、どの法案も強行採決してしまう。これが最大の問題だと思いますね。安倍内閣は、言葉の使い方を非常にうまく利用して、結果的に国民を騙しているということが非常に多いということが問題です」

神保「ありがとうございます。ぜひ、どのメディアがこの法案を『共謀罪』『テロ準備罪』『テロ等準備罪』と呼んでいるかを確認してみるといいと思いますね。では、そちらの女性の方、どうぞ」

記者「ありがとうございます。山崎と申しまして、山崎ジャーナルと、共謀罪ジャーナルの主催者で、英語で記事を書いています。皆さん、安田さんがおっしゃいました『地平線の向こうに新たな世界を作る』稀代の悪法だと皆さんおっしゃってますが、その地平線を見に行ってきたジャーナリストです。

 アメリカで9・11の後、取材していたアンカーマン、記者、テレビマン、製作者が、実はたくさん投獄されていて、私の同行者もブッシュ大統領の首席補佐官のハトコで、アメリカ人ジャーナリストですが、薬も投与され、精神を病むまで投獄されていました。私は652日間だけでしたけれども、地平線の向こうは、とても語りきれないほど、すさまじい世界でした。共謀罪というのは、誰でも、なんでも、いつでも、ぶち込んで、一生、社会的に復帰できない、それほど激しいもので、多くのジャーナリストが消えていきました。

 それをSundayプロジェクトが2009年4月26日30分番組で報道してくれました。私が田原総一朗さんと大谷昭宏さんのインタビュー受けまして、記者がニューヨークの現場に飛んで、9・11の後、何が起きたかを取材し、私の冤罪を証明する素晴らしい番組を作ってくださいました。それは私の山崎ジャーナルのトップから2番目の記事に常に挙げています。製作者から掲載許可は得ていますので、アメリカで共謀罪が過去70~80年、拡大解釈されてきているかを、ぜひみなさん、ご覧になってください。ここにいる私たち全員に関係があるんです。

 私の弁護士は『自分の富や家族を守るために、クライアントを呼びますか。自分と自分の家族呼びますか』と問われ、司法取引で私は売られました。自分の仲間や友だちを売るか、家族と自分を守るか、そういう究極の選択を迫られるんです。

 質問は、外国特派員協会会長のアズハリさんを誘って来る予定でしたが、前の取材が長引いて来られないので、今日の様子を私はメールでずっと彼に送っていました。すると『これは絵になるので、デモをしてほしいんですけど、ジャーナリストのデモはありますか。あったら、取材します。』とのことです。動画を撮ってたんですが『この写真を使わせてくれるのであれば、スティール写真を借りたい』というので、外国特派員協会に写真をお借りできればと思います。ありがとうございました」

神保「写真は自由に撮っていただいていいです。金平さん、デモしますか。外国特派員協会で会見するのはいいと思いますが、外国人がこの問題を分かっているのか、どれぐらい関心を持つかということですよね」

金平「マーティン・ファクラーという人が、今回の呼びかけに加わっています。日本で働いている外国人記者から見ても、この法律はとても危険なもので、黙っていられないから、文章を読んで賛同しています」

神保「気休めにもならないんですが、それぞれの国が似たような状況にあって、日本だけでこんなことが起きている、酷いというような話にはなってないんですね。世界的にも非常にゆゆしき状況があるという文脈上にも、日本の共謀罪はあるんだと思います。外国の記者で、特にこれを取り上げて大きく問題にしようという雰囲気は、私の知る限りはないですね。

 質問、後もう1問か2問くらいしか受けられないんですが。どなたか、ございますか。そちらの方、どうぞ」

記者「小林よしのりさんにお聞きします。民主主義というのは、権力が裏返って自分にも向かってくるとき、それでも受け入れるということを合意できてこそ成立すると思うんですが、では共産党が政権取ったらとか、民進党が政権取ったときにこれが運用されたらどうなるんだとか、そういうことを含めて、保守の動きというのが、いま一つ見えてこない。共謀罪には、保守も反対していいのではないかと思うんですが、保守の方々にお知り合いが多いと思うので、その辺の保守の反応について教えてください」

小林「保守は最悪に劣化しているんです。もう尋常じゃない劣化の仕方です。これ、安倍政権になって、とことん劣化して、その象徴が籠池理事長ですよ。今の保守は、権力を守るものだと思っているんですよ。国と公が一致しているときなら、わしは別に権力に逆らうこともない。けれど、国と公がずれてしまったら、わしは公に付くと言っているんです。これが本当の保守です。わし一人しかいないんです。みんな国家権力を守ろうとしている。

 野党が政権を取ったら、最初に共謀罪で捕まるのは在特会とかの権力に付いている組織です。そういう、いまいっぱいいる組織が反権力になって、共謀罪で捕まることになるのに、彼らは安倍政権の下に延々といられると思っているんです。本当に堕落の極みという状態です。

 教育勅語の問題だって一緒です。道徳は時代によって違いますから、どの時代にも普遍的な道徳なんか作れるわけがない。それを、教育勅語を暗唱すれば道徳が良くなるとか、本当にバカの極みです。その保守と名乗っている奴らをたたきのめし、本当に健全なバランス感覚の取れた保守というものを作り直すのが、わしの使命なんです。

 いま天皇陛下にも、逆らうんですよ。天皇陛下が退位したい、譲位したいと言っているのに、それを許さないと言う、そんなバカな連中が保守を名乗っている。頭がイカれてます。わしにとって敵です」

岸井「保守本流をずっと取材してきたつもりなので、あえて振り返りますと、保守対革新というのが55年体制ですね。鳩山民主党と吉田自由党が合体し、保守合同で自民党が出来て、38年間ずっと政権を担ってきた。これが保守体制。それに対して、社会党も左右統一され、日本社会党になり、ときに共産党と革新共闘で、ときどき都道府県の知事とか市長に当選する。そういう流れがあった。

 保守合同で、自民党が党是として憲法改正を自民党が掲げたのは事実ですが、そのときは鳩山政権で、幹事長が岸信介です。岸さんの悲願である自主憲法制定が強く出ていて、これが鳩山民主党主導の党是として入ったわけ。しかし、吉田自由党は一貫して護憲なんです。憲法改正を言った人は一人もいない。

 その中でも池田派と言われる宏池会が一番リベラルで、鈴木善幸さん、宮澤さんに引き継がれた。ところが加藤紘一さん、河野洋平さんのあたりから、どんどん分裂騒動が起きてしまった。自民党保守の良さっていうのは、右から左まで非常に幅広いことだった。さまざまな議論があって、政権抗争や派閥闘争の旗印にもなるほど、政策を戦わせてきた。

 宏池会は、麻生さんと岸田外務大臣が継いでいるということになってるけれど、彼らはもはや宏池会ではない。保守リベラルは、自民党にはもういなくなってしまった。これも安倍政権が劣化した大きな理由の一つですね」

神保「では、最後になります」

記者「IWJの浅野と申します。特にどなたに対してというわけではありませんが、共謀罪の成立について、アメリカのトランプ政権も望んでいるのかということを、どなたかにお聞きしたいんですけれども」

金平「トランプ政権の前からNSAとかからの要請がある。エドワード・スノーデン自身が言っています。何日か前にNHKがスクープした番組で、スノーデン文書の中にも実は出ていた。アメリカの要請で諜報機関の情報交流における日米一体化という方向がある。おそらくアメリカのトップが誰になっても、きっと変わらない流れだと思います。それがトランプ政権になって、むしろ加速しているのが現状だと思いますけど。

 斉藤貴男さんが書いておられるんですが、昔の日本型帝国主義『瑞穂の国』みたいに、天皇を頂点に掲げて海外進出をした時代ではなくて、いま頂点にいるのは天皇ではなくてアメリカだという構図が今の状態を正確に言い当てていると思いますね。もう時間ないですね」

神保「はい。ありがとうございました。このへんで会見を終わりたいと思います。今日はどうもありがとうございました」

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  1. 青野寛人 より:

    文字起こしという大変な仕事…お疲れさまです。m(__)m
    Facebookにシェアさせていただきたく存じます。よろしくお願いしますm(__)m

  2. 佐藤美良子 より:

    iwj会員の佐藤です。この場に集われた方々、平凡な一般人でも何名かはご存知の面々、其々が3分という持ち時間の中、現在の日本、あるいは世界の危うい時代を的確に語っておられます。文字起こしされ掲載されておりますができる事なら動画で全文を公開して頂き、多くの方々にシェアし、見て知って頂ければとねがってなりません。

  3. 藤原 誠二 より:

    今後、この活動を支援、直視していきたいです。過去の悲劇を歴史は繰り返す可能性があると言うことです。
    知識人を弾圧、言論弾圧、検閲社会が昔、日本であったことを、現在の市民は忘れています。
    戦後,70年を過ぎて、社会の制度が経年劣化してきました。記者クラブ所属以外、日本放送連盟含めて、国営放送の受信料金の件でも、考えさせられます。戦前、戦中、強制強要され政府に批判的な発言思想を徹底的に取り締まりした、憲兵隊などの特高警察がいた時代へ皆様がしっかり公権力を監視しないと、知らない間に監視社会になっていますよ。
    自由な意見、主義主張が言えない国は他国にはあります。日本人は莫大な血と涙と汗によって平和な世が終わりを告げようとしている気がしてなりません。

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