「人間かまくら」が再び!TPP承認案・関連法案が衆院TPP特別委員会でついに「強行採決」!「非は政府側にある」と野党が猛抗議も、山本有二農水相の「発言撤回」で幕引き!?大荒れの委員会の一部始終! 2016.11.4

記事公開日:2016.11.5 テキスト
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(文:原佑介 記事構成:岩上安身)

特集 TPP問題

 本日11月4日16時30分、TPP承認案・関連法案が、衆院TPP特別委員会でついに「強行採決」された。昨年夏に安保法制を押しきる際に使われたあの「人間かまくら」が、再び委員会の場で再現された。

 山本有二農水相の「強行採決するかどうかは佐藤勉さんが決める」「(強行採決と)冗談を言ったら、クビになりそうになった」といった発言を問題視し、民進党や共産党などは2016年11月4日、大臣の辞任と審議の一時停止を要求したが、与党はこれを退け、委員会での締めくくり質疑を強行した。

 山本大臣は委員会で、「私の不用意な発言により、再び大変ご迷惑を掛けたことを心からおわび申し上げる。発言について謹んで撤回させていただく」と述べ、「冗談」発言を撤回したものの、「職責を全うするため、誠心誠意努力を重ねていきたい」と辞任については否定した。

 山本大臣による発言の「撤回」で幕引きとし、審議を強行しようとする自民党の塩谷立(しおのや・りゅう)委員長に対し、民進党などの理事は「大臣はけじめを」「非は政府側にある」「このやり方はなんだ」と抗議したが、塩谷委員長は取りあわず、「民進党は質疑を行ってください」と述べ、審議を継続した。

 民進党と共産党は審議を拒否し、退出したが、塩谷委員長は「空回し」状態のまま議事を進め、時間を消化したのち、強行採決を実施。議場に戻った民進、共産議員らが猛抗議し、怒号が飛びかう中、自民、公明、維新の起立多数でTPP承認案・関連法案は可決された。

 山本大臣の「強行採決発言」が問題視され、本人も謝罪・撤回に至ったというのに、結局は「強行採決」で承認案を可決。「強行採決発言」はさんざんマスメディアも問題視したが、実際の「強行採決」には、どれだけ大きく取り上げ、避難するだろうか。審議も尽くさない、国民に情報も開示しない上での採決は、形式的な「審議」や「公聴会」の手続きが整っていても、中身がまったくないのだから、それはやはり「強行採決」である。

10月17日には、安倍総理自身が「我が党においては(1955年の)結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と答弁していた。もちろん、昨年夏に安保法制を強行採決した当の本人が言う言葉だから、最初から破綻しているのだが、それにしても言うこととやることのギャップがひどすぎる。

国民が中身のわからない契約(条約)に、強引にサインをしたのだから、これが強行採決でないはずはないが、この採決に例のごとく、自公政権の補完勢力である維新の会が「野党」として賛成に回ったことで、「与党だけの強行採決ではない」と開き直ると思われる。維新の会は、こうやって、アリバイ作りのアシストにせっせと励む「自民別働隊」であることが、今や誰の目にも明らかである。

 何度も言うが、これが「強行採決」でなかったなどとはいわせない。衆議院議院運営委員会の佐藤勉委員長(自民党)でさえ、「どうしてこういうことが起きたのか、私もよくわからず、驚きを隠せない。力不足で申し訳なく思っており、きょう特別委員会で採決が行われたことを陳謝したい」と述べている。議運さえ蔑ろにし、委員会が独断的に強行採決に踏み切ったことは明らかである。

 4日の本会議採決は見送られたが、委員会での可決を受け、週明けの衆院本会議通過はこれで決定的となってしまった。

 民進、共産、自由、社民の国会対策委員長は大島理森衆議院議長に対し、「衆議院の特別委員会での採決は、不正常な状況で強行されたもので認められない」として、本会議で採決を行わないよう求めたが、大島議長は「平穏な状況での採決ではなかったが、評価については差し控えたい」とし、「まずは与野党で協議してほしい」と述べるにとどめたという。

 政府は米大統領選が行われる11月8日までに衆院通過を目指したい考えだ。米大統領選に影響を与えようというもくろみがあからさまである。いったい、誰の利益のために、こんなに急いでいるのか。

 以下、4日の委員会での強行採決の模様を報じた実況ツイートを整え、加筆したうえで掲載する。

TPP承認案・関連法案が衆院TPP特別委員会で「強行採決」!「非は政府側にある」と野党が猛抗議も、山本有二農水相の「発言撤回」で幕引き!?

【速報1】衆院TPP特別委が始まる模様。「おかしい」「こんな議論おかしい」「こんなの認められない」と紛糾中。(14:30)

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【速報2】山本有二農水相が発言「「私の不用意な発言により、再び大変ご迷惑を掛けたことを心からおわび申し上げる。発言について謹んで撤回させていただく」と述べ、「冗談」発言について撤回。

 委員長は「民進党は質疑を行ってください」と議事進行を促すが、野党は「大臣はけじめを」「非は政府側にある」「このやり方はなんだ」と進行を認めず。

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【速報3】民進党側は「理事会をやり直せ」「円満にやりましょう」と要求。委員長は「民進党の質疑時間に入っています」と議事の進行をあくまで促す。安倍総理は腕と足を組み、静かに時間が過ぎるのを待つ。

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【速報4】民進党は「本会議も開かれていないのにおかしい」と猛抗議。議場は混乱しているが、音声は止まらず。衆院中継の音声も流れ続ける。民進党の質疑時間として速記が続いている証左か。

【速報5】「休憩にしましょう」と求める民進党に対し、委員長は「民進党の質疑時間に含まれています。民進党さんも議運を促してくださいよ」と反論。民進党は「さきほどの山本大臣の謝罪など意味がない。そもそもなぜ紛糾しているのか。政府に非があるんでしょう」

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【速報6】民進党は「委員会は官邸の下請けじゃない」「認めませんからね」「理事懇からやり直しましょう」「議会の権威に関わる」「強行採決ならぬ強行質疑だ」と抗議を続ける。

 委員長は「本会議が始まればここは休憩します」。

【速報7】民進党議員らが委員長席から撤退。抗議し、議場から退出か? 委員会室が静まり返る。(14時54分)

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【速報8】民進党不在で時計だけが回る。質疑時間を消化し、時間が来たら委員会で強行採決か。

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【速報9】塩谷立委員長「民進党の質疑時間を終わります。続いて共産党の質疑ですが、出席されていないため、このまま進めます」。(15時49分)

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【速報10】現在「空回り」中の共産党の質疑時間が14分間、その後は10分間の日本維新の会による質疑が予定されている。

【速報11】維新・松浪健太議員「他の野党が欠席する中、苦渋の思いで質疑にあたります」。山本大臣が改めて「私の不徳のいたすところであり、謹んで撤回する」と述べ、「冗談」発言を謝罪・撤回。(16時3分)

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【速報12】日本維新の会の松波健太議員の質疑終了後、16時11分。塩谷委員長が「質疑が終局することに賛成の諸君は起立を」と促し、起立多数で野党の質疑時間が終了。安倍総理は委員会室を退室した。野党議員は委員長に詰め寄り「冗談じゃない」と激しく抗議。

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【速報13】野党議員による質疑終了後、与党議員らが賛成討論を開始。その間にも野党議員らは「このやり方はあまりにもおかしい」などと抗議の手をゆるめず、「強行採決反対」などのプラカードを掲げながら塩谷委員長を取り囲み、「人間かまくら」状態に。

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【速報15】16時30分、起立多数でTPP承認案・関連法案が大混乱の衆院特別委で「強行採決」によって可決した。維新の会の付帯決議も可決。議場から「安倍強行内閣だ」と野党が猛抗議中。31分、塩谷委員長が退席、委員会は散会した。

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