「政党と組織の力は、もう盤石ではない。地方から変わる時代だ」──「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」共同代表で、政治学者の佐々木寛教授が新潟知事選を振り返る 2016.10.17

記事公開日:2016.11.14取材地: テキスト 動画 独自
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(取材:安道幹 文:関根かんじ)

 「地鳴りが聞こえるような……。市民のほうから、われわれを後押ししてくれる感じだった」──「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」共同代表の佐々木寛氏(ひろし)氏は、選挙戦をこう振り返った。

 世界最大規模の柏崎刈羽原発を抱える新潟県で行われた、2016年10月の知事選挙は、泉田裕彦前知事と同様、同原発の再稼働に慎重な姿勢を見せていた米山隆一候補が、与党(自民・公明)と連合新潟から推薦を受けた、前長岡市長の森民夫候補に6万票の差をつけて初当選を果たした。

 投開票から一夜明けた10月17日。米山新知事誕生の影の立役者であり、今後、米山新県政の政策ブレーンの一人となる新潟国際情報大学・佐々木寛教授に、IWJ記者がインタビューを行った。

 今回の知事選では、一度は出馬を表明していた泉田前知事の電撃的な出馬撤回に大きな衝撃が走った。その後、民進党新人の医師、米山隆一氏が「泉田路線の継承」を掲げて出馬を表明したが、民進党は推薦せず、自主投票を決定。米山氏は同党を離党して立候補することとなった。

 対して、自公と連合が支持した森民夫候補は、当初、楽勝ムードと言われていたが、結果は米山氏が52万8455票、森氏は46万5044票で、米山氏が勝利。組織票を固める従来の選挙戦略に一石を投じたこととなり、佐々木氏は、「政党と組織の力は、もう盤石ではない。制服や背広を着ている人の政治から、普段着の生活者の政治へと、社会が成熟したのだ」と語った。

 「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」を立ち上げた理由について、佐々木氏は、「国政同様、地方政治にも市民活動が必要だと感じたから」と話し、6万票差で勝利した要因として、与党の結束不足を挙げた。

 また、今国会では政府・与党によるTPP批准の強行採決が喫緊の課題となっているが、佐々木氏は「選挙運動で農協などを回ったが、新潟では皆、TPPには反対だ。夏の参院選でも『自民党にお灸をすえる』という声が上がっていた。それが今回も続いていたのではないか。今だから言えるが、この知事選では自民党員から『今回、われわれは(票固めを)やらないから、(そちらが)絶対勝ちますよ』という連絡まであった」と明かした。

 その上で、知事選の最大の争点である柏崎刈羽原発の再稼働に関しては、「米山氏は、住民の安全が完全に守られないなら再稼働は反対、という立場。安全性を重要視し、かつ厳格に規定している。避難計画だけではなく、もう少し厳しいことも考えているようだ。現実的には、再稼働はできないだろう」と述べた。

▲新潟国際情報大学・佐々木寛教授
▲新潟国際情報大学・佐々木寛教授

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2016年10月17日(月)11:00~12:00
  • 場所 新潟市内

「新しい」という言葉に「新しいやり方」という願いを込めた〜かつてなかった「知事を誕生させるため」の市民運動

──「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」共同代表の佐々木寛(ひろし)氏に、今回の知事選について、お話をうかがいます。まずこの会は、どういう組織でしょうか?

佐々木寛氏(以下、佐々木氏)「安保法制の時に、市民連合の新潟版が結成され、今年7月の参議院選挙では、支援した森裕子候補が当選しました。しかし、新潟県知事選は、立憲政治など政治の根幹に関わってきた市民連合とは違い、原発再稼働が争点です。

 原発反対を訴える我々のような運動だけが『市民』という言葉を独占するのではなく、知事選を通じて原発再稼働の可否を判断するのが『市民』なのだと考えました。それで新たに発足させたのが、『新潟に新しいリーダーを誕生させる会』だったのです。

 『新しい』という言葉には『新しいやり方』という願いが込められています。環境、消費者、原発など、市民の運動はいろいろあります。しかし、今まで『新しい知事を誕生させる市民運動』はなかったのではないでしょうか。従来の市民運動は、政治からある程度の距離を取って、遠くから批判する、というスタンスでした。

──安法法制では、ママの会やSEALDsなど、市民が政治に関わっていく形がいろいろできました。それが、今回は知事選、つまり地方政治にもコミットメントしていく流れにつながったと言えそうですね。

佐々木氏「こういった運動は、お互いに共鳴し合っています。たとえば、森裕子参議院議員が生まれなかったら、今回のようなことは起きたのか? 今の政治システムは限界にきています。特に地方では、それに対する方策として、こういった活動が起こってくると思います」

「まるで地鳴りが聞こえるような…でも、半信半疑だった」〜市民から背中を押された選挙活動

──米山候補と森民夫候補の得票には6万票の差がつきました。これについては、いかがですか?

佐々木氏「率直にいうと、大差で勝つか、僅差で負ける、と感じていました。選挙活動中は政党などから(票読みの)数字が上がってきます。それが、参議院選挙に較べて、ものすごく手応えがあったんです。

 地鳴りが聞こえるような……。相手(市民)から押してくれる感触でした。電話や街宣をしたスタッフも、『みんな、応援してくれている』と言うのです。しかし、私は半信半疑で聞いていました。

 ゼロからのスタートが数日間で追いついた。それからずっと均衡状態が続き、不安になりました。今回、自民党は、小泉進次郎議員などのスター議員を応援に呼ぶ戦略をとらなかった。それが不気味でした。こちらが一生懸命に街宣をしても、自民党は虎視眈々と票を固めている印象があって怖かった。(自民党のような)選挙のプロは、堅実に票を取るものと思っていたのです」

──しかし、結果は6万票の差をつけて勝ちました。勝因はどこにあったと思いますか?

佐々木氏「自公サイドが、思ったよりも結束できていなかった。自民票の3割が米山候補に流れています。組織票が固まっていなかったのではないでしょうか。

 森候補が好きではない、というレベルから、泉田知事が官邸に呼ばれ、東京で決めたことを地方に押しつけるやり方への反感が高まったことなど、いろいろあったと思います」

新潟でTPPは大きな問題。自民党に裏切られた思いの保守層も多い。「今回、われわれは(票固めを)やらないから、そちらが絶対勝ちます」と言った自民党員も!

──夏の参議院選挙の時、「自民党にはTPPで裏切られた」と、保守層の一部の票が森裕子候補に流れたと聞きました。新潟でTPPはどう受けとめられているでしょうか?

佐々木氏「農協などを回って驚いたのですが、TPPにはみんな反対。参議院選挙の時は、『自民党にお灸をすえる』と言っていました。それが今回も続いていた。今だから言えるのですが、自民党員から『今回、われわれは(票固めを)やらないから、(そちらが)絶対勝ちますよ』という連絡まであったのです」

──それは、どういうことなんでしょう?

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