各国の首脳やグローバル大企業による「タックスヘイブン」(租税回避地)利用の実態を暴露し、世界中を震撼させている「パナマ文書」。英国のキャメロン首相の亡父がパナマに投資会社を設立していた他、中国の習近平国家主席の義理の兄が「タックスヘイブン」として知られるバージン諸島にペーパーカンパニーを設立していたことが明らかになるなど、各国の首脳に批判が集まっている。
※本稿掲載後の2016年9月22日、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)は、タックスヘイブンとして知られるカリブ海バハマに法人登記された約17万5千社の資料「バハマリークス」を公開した。IWJはこれに関しても調査を進め、稿を改めて報道してゆく。
しかし、「タックスヘイブン」は、もちろん、日本の企業と無縁ではない。日本の大企業のほとんどは「タックスヘイブン」に子会社を持っていると言われ、その数は、公表されているだけで、時価総額上位50社のうち、45社が354社の「タックスヘイブン子会社」を保有していることが明らかとなっている。
▲日本の主要50社のタックスヘイブン子会社(「しんぶん赤旗」2013年8月25日付けより)
国税庁に申告された「タックスヘイブン子会社」の数は、2014年度で9270にものぼり、この10年で約2倍の数に膨らんでいるのだ。特に、「タックスヘイブン」として有名なケイマン諸島に対する日本の証券投資残高は、2014年末の時点で63兆円と、米国に次いで世界2位の規模を誇るのである。日本のマスメディアではほとんど報道されない驚愕の事実、日本は大企業と大金持ちの租税逃れの「先進国」である、という事実である。
そのような中、「タックスヘイブン」を利用している日本の法人として、一般の企業ではなく、なんと巨大宗教法人・創価学会の名前が浮上した。租税回避を行う人物や法人名のリストのある「パナマ文書」に、与党として安倍政権を支える公明党の支持母体・創価学会の名前が掲載されている、という疑惑が浮上したのである。これは、ゆるがせにできない事態である。
ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)による「パナマ文書」データベースの公開が日本時間5月10日午前3時に迫るなか、IWJでは独自に取材を敢行し、創価学会による租税回避の疑惑を追った。
「創価学会株式会社」が「タックスヘイブン」の温床地であるパナマに登記!?~全世界の企業情報の公開を行っている「オープン・コーポレーツ」に明記
Twitterを中心に、インターネット上で話題が持ち切りとなっているのが、パナマ共和国に存在するという「SOKA GAKKAI, INC」という法人である。「INC」とは「incoroprated」の略で、「株式会社」あるいは「有限会社」を意味する。したがって、「SOKA GAKKAI,INC」とは、直訳すると、「創価学会株式会社」となる。
「SOKA GAKKAI, INC」という法人の詳しい情報が掲載されているのは、世界の企業情報の公開を行っている「オープン・コーポレーツ」という組織のホームページである。この組織は、企業情報のオープンデータ化の促進を通じ、ネットワーク社会における企業情報の流通基盤を構築することを目的としている。
この「オープン・コーポレーツ」のサイトで「SOKA GAKKAI,INC」で検索すると、当該企業がヒットする。「Registered Address」すなわち「登記上の所在地」は、他ならぬ「Panama(パナマ)」である。
▲「OpenCorporates」で公開されている「SOKA GAKKAI,INC」の情報
なお、「オープン・コーポレーツ」が公開している情報によれば、「SOKA GAKKAI,INC」という名前の法人は、パナマだけでなく、米国のケンタッキー州とフロリダ州にも存在していることが分かる。さらにニューヨーク市には、「LOTUS SOKA GAKKAI, INC」という法人が存在している。「LOTUS」とは日本語で「蓮の花」を意味する。蓮の花は、仏教における解脱の象徴ともいわれる。
現在のところ、この「SOKA GAKKAI,INC」という法人の名称そのものは、ICIJが2013年から公開している「オフショア・リークス」のデータベースには、その名前は登場しない。
では、はたして、この「SOKA GAKKAI,INC」の正体とは一体何であるのだろうか?
英紙「サンデー・タイムズ」の「パナマ文書」データベースで法人の存在を確認!
もう少し、詳しく調べをすすめていこう。
「オープン・コーポレーツ」には、この「SOKA GAKKAI,INC」の「Directors/Officers」(監督者)の欄に、10の法人の名前が記載されている。IWJが調べたところによると、この10の法人のうち、4つの法人が、なんと英紙サンデー・タイムズの「パナマ文書」データベース上に存在することが判明したのである。
英紙サンデー・タイムズは、IWJが4月28日に発表した「IWJ検証レポート・『パナマ文書』徹底追及シリーズ第1弾」で報じたように、ICIJから「パナマ文書」のデータを提供された各国の報道機関が報じた情報をかき集め、独自にデータベースを構築している。
▲「OpenCorporates」に掲載されている「SOKA GAKKAI,INC」の「Directors/Officers」
▲英紙サンデー・タイムズの「パナマ文書」データベースより。「LA REPRESENTACION~」という法人名が一致していることがわかる
「OpenCorporates」に掲載されている「SOKA GAKKAI,INC」の「Directors/Officers」として登場する法人のうち、英紙サンデー・タイムズの「パナマ文書」データベースと完全に合致するのは、以下の4つの法人である。
- LA REPRESENTACION LEGAL DE LA SOCIEDAD LA TENDRA EL PRESIDENTE Y EN SU AUSENCIA EL SECRETARIO, O BIEN, LA PERSONA QUE ELLOS DESIGNEN
- PANAMA OFFSHORE LEGAL SERVICES (POLS)
- PRESIDENT SERVICES INTERNATIONAL, INC
- SECRETARY SERVICES INTERNATIONAL, INC
これらの法人の正体は不明だが、「SOKA GAKKAI,INC」と関連した実体のないペーパーカンパニーの可能性が高い。
創価学会を直撃取材!気になるその回答とは・・・
はたして、「SOKA GAKKAI,INC」とは、創価学会の関連会社なのか。そして、創価学会は、「タックスヘイブン」を利用した租税回避を行っているのか。IWJでは、こうした疑問を創価学会に直接ぶつけた。