流出した「パナマ文書」によって、世界中でタックスヘイブンを利用した大企業や富裕層の租税回避に対する批判が高まり、ネット上では企業の個々の社名も取り沙汰される中、朝日新聞は、「根拠もなしに書き込まれていることによる風評被害が相次いでいる」という表現をとって、NHKの関連会社のように見える会社名などを報じている。
朝日新聞が根拠なし、と主張しているのは、「DENTSU」と「NHK GLOBAL INC」の2社。「電通」と「NHK」との関連を確かめるべく、朝日新聞が電通とNHKにそれぞれ問い合わせたところ、両社とも両社とも関連会社を含め、その会社との関係を否定しおり、それを根拠にあらぬ疑いをかけられた「風評被害」であると記しているのだ。
しかし、電通とNHKの言い分を聞いたからといって、それだけで本当に根拠なき「風評被害」と断定できるのだろうか。「Dentsu」(大文字ではなく「D」以下は小文字)は、今回、パナマ文書の分析にあたっているICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が2013年に公表したオフショアリークス・データベースにも記載されている。このデータベースのリストは、当初ICIJの「パナマ文書」データベースと勘違いされて、ネット上でずいぶん出回った。
次々と明らかになる日本企業名…「DENTSU」や「NHK」の名も!
このオフショアリークス・データベースに記載された「Dentsu Asia Fund I, L.P.」という会社名が関連企業なのか、IWJが電通に問い合わせたところ、電通は次のように答えた。
「お問い合わせの件で弊社の社名が出ているのは、電通アジア1号ファンド(http://www.dentsu-digital.co.jp/fund/dotcom.html)を通して、約10年前にケイマン企業が関与する事業に、数%のマイナー投資をおこなったことによるものです。租税回避を目的にしたものではありません。尚、この投資事業は、不採算に伴い数年前に投資を引きあげています」
つまり、外部の者にはどういう目的で設立されたのかが不透明で、租税回避目的なのではないかと疑われている流出の文書の中に、実際の電通の関連会社の名前が存在したのだ。電通が関連会社を通してタックスヘイブンとして名高いケイマン諸島に資金移動したことは事実であると、当の電通自身が認めたのである。「風評被害」を強調する前出の朝日の記事は、不十分で不完全なものと言わなければならない。
▲東京都東新橋の電通本社ビル
もうひとつ、「NHK GLOBAL INC」という名前もネット上で話題になっている。そのネット上の情報出所は、実は「パナマ文書」データを直接入手したICIJからではなく、英サンデータイムズ紙が作成した「パナマ文書」のデータベースだ。サンデータイムズ紙とは、英国きっての高級紙タイムズの日曜版である。「NHK GLOBAL INC」という会社の名前は、英国の高級紙が作成したデータベースに載っていたのである。それのみを根拠にNHKが租税回避していると決めつけるのは早急だが、疑いを持つには十分な根拠と言える。確認が必要である。
これに関し、NHKは同社のトップページではなく、「クローズアップ現代プラス」という番組のページに回答を載せ、「質問が寄せられている、パナマ文書に載っているとネット上で指摘されている『NHK GLOBAL INC.』は、NHKとは関係ありません」と否定している。しかしNHKは、ここでは、NHKの関連会社との関わりの可能性については触れていない。そのため朝日が「風評被害」と呼ぶような疑いの目がもたれてきたのだ。
▲東京渋谷区のNHK 放送センター
英サンデータイムズ紙はどうやってデータベースを作った?IWJが突撃取材!
では、今度は、サンデータイムズ紙の側に確認を取らなくてはならない。 英サンデータイムズ紙の「パナマ文書」データベースには、「パナマ文書」に関連するオフショア法人3万7000社の名前が記載されている。 IWJは、英サンデータイムズ紙に、「パナマ文書」を直接入手していないはずの同紙が、どのようにそのデータベースの情報を「パナマ文書」から入手したのか、直接、問い合わせた。