「これは政治権力とメディアの戦争だ!」 田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、青木理氏、大谷昭宏氏らテレビ関係者が高市総務相「停波」発言に怒りの抗議会見! 2016.2.29

記事公開日:2016.3.17取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ、記事構成:山本愛穂・佐々木隼也)

※3月17日テキストを追加しました!

 「国民は政府の言う『公平・公正』という言葉に騙されてしまう。政治的な『公平・公正』というのは、一般的な意味とは違う。権力が力をつけると必ず腐敗し、暴走する。それにブレーキをかけるのが、ジャーナリズムの『公平・公正』だ。それを忘れたらジャーナリズムではない」──。

 毎日新聞社・特別編集委員の岸井成格(しげただ)氏はIWJの記者の質問に対し、力強く答えた。高市早苗総務相の「電波停止」発言に対し、怒りと危機感を露わにしたのは、岸井氏だけではない。

 2016年2月29日、東京都千代田区の日本記者クラブで、青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏らテレビ放送関係者が、高市大臣の「電波停止」発言に抗議する記者会見を開き、現安倍政権下での報道圧力と、報道現場の萎縮の実状を語った。

記事目次

■ハイライト

声明文 「私たちは怒っている!」高市早苗総務相の発言は、放送法違反!公共放送に預かる放送局の電波は国民のものであって、所管する省庁のものではない!

▲「私たちは怒っています!」と書かれた横断幕を掲げる6名。左から、青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏

 会見の冒頭、登壇者の6名は「私たちは怒っています!」と書かれた横断幕を掲げ、鳥越俊太郎氏が声明文を読み上げた。

 以下、声明文の全文を引用する。

【声明文】「私たちは怒っている──高市総務大臣の『電波停止』発言は憲法及び放送法の精神に反している」

 今年の2月8日と9日、高市早苗総務大臣が、国会の衆議院予算委員会において、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性について言及した。誰が判断するのかについては、同月23日の答弁で「総務大臣が最終的に判断するということになると存じます」と明言している。

 私たちはこの一連の発言に驚き、そして怒っている。そもそも公共放送にあずかる放送局の電波は、国民のものであって、所管する省庁のものではない。所管大臣の「判断」で電波停止などという行政処分が可能であるなどいう認識は、「放送による表現の自由を確保すること」「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」をうたった放送法(第1条)の精神に著しく反するものである。さらには、放送法にうたわれている「放送による表現の自由」は、憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」の条文によって支えられているものだ。

 高市大臣が、処分のよりどころとする放送法第4条の規定は、多くのメディア法学者のあいだでは、放送事業者が自らを律する「倫理規定」とするのが通説である。また、放送法成立当時の経緯を少しでも研究すると、この法律が、戦争時の苦い経験を踏まえた放送番組への政府の干渉の排除、放送の自由独立の確保が強く企図されていたことがわかる。

 私たちは、テレビというメディアを通じて、日々のニュースや情報を市民に伝達し、その背景や意味について解説し、自由な議論を展開することによって、国民の「知る権利」に資することをめざしてきた。テレビ放送が開始されてから今年で64年になる。これまでも政治権力とメディアのあいだでは、さまざまな葛藤や介入・干渉があったことを肌身をもって経験してきた。

 現在のテレビ報道を取り巻く環境が著しく「息苦しさ」を増していないか。私たち自身もそれがなぜなのかを自らに問い続けている。「外から」の放送への介入・干渉によってもたらされた「息苦しさ」ならば跳ね返すこともできよう。だが、自主規制、忖度、萎縮が放送現場の「内部から」拡がることになっては、危機は一層深刻である。私たちが、今日ここに集い、意思表示をする理由の強い一端もそこにある。

金平茂紀氏「遅きに失したかもしれないが、黙っていることはしない」

 会見で青木理(あおきおさむ)氏は、「ジャーナリズムの矜持に関わることが起きた時には、報道に関わる者は、組織や個人の枠を越えて声を上げるべきだ」と訴え、大谷昭宏氏は、「東日本大震災の被災地を取材すると、NHKに対する不信感やマスメディアの偏向報道への批判が強くなっている」と、現在の報道に対する国民の懸念について述べた。

 金平茂紀氏は、国境なき記者団が毎年発表する、世界の報道の自由度ランキングで、2015年、日本は180ヵ国中61位だ。とても恥ずかしい」と口火を切った。そのうえで「今、特別に息苦しい時代だ。その原因はメディアやジャーナリストの内側から生まれてきている」と、報道現場の自粛を指摘しながら、「2001年、個人情報保護法案が国会に提出された時は、各放送局の主要キャスターがこの法案に反対するために顔を揃えたが、今では、そういったこともない」と嘆いた。

 そして、「今回のアピールの相手は、私たちの前にいる、報道陣たちではないか」と、会場の記者たちに辛辣な問いを投げかけた金平氏は、「遅きに失したかもしれないが、黙っていることはしない」と、報道の委縮の前で口を閉ざすことはしないと、自身の決意を述べた。

「憲法、放送法の精神を知らないとしたら大臣失格。意図的に言論統制をしたいと思われても仕方ない」岸井成格氏が高市総務相を痛烈批判!

▲コメントする岸井成格氏(中央)と、金平茂紀氏(左)、田原総一郎氏(右)

 「憲法、放送法の精神を知らないとしたら大臣失格。でなければ、意図的に言論統制をしたいと思われても仕方ないのではないか」――。

 歯切れよく高市大臣を徹底批判したのは、岸井成格氏だ。

 岸井氏は、長年アンカーを務めた「NEWS23」を、3月末で降板することが決まった。同氏の降板劇の裏には、右派の作家や評論家らが集う「放送法遵守を求める視聴者の会」が、2015年11月14日付の産経新聞朝刊と、同15日付の読売新聞朝刊に寄せた、岸井氏に抗議する「意見広告」が影響しているのではないかと見る向きもある。

 岸井氏は、「政治家や官僚は、大事なことは隠す。場合によっては、嘘をつくもの。これを前提に取材しなければ、本当の報道はできない。事実を伝えることがメディアの使命で、国民の負託に答えること。逆に言うと、政府、政治家の言うことをそのままタレ流していることこそ、真に公平性を欠くことだ」と釘を刺した。

 そのうえで、「事実を伝えることが、メディアの使命。政府、政治家の言うことを、そのままタレ流していることこそ、公平性を欠くことだ」と指摘し、権力と放送法の誤解釈を盾に、報道への脅迫とも違わない発言を繰り返す高市総務相を痛烈に批判した。

田原総一朗氏も「抗議をしないと、政府は頭(ず)に乗る」と辛口批判!

 田原総一郎氏は、岸井氏のほかに今年3月で、国谷裕子氏(NHK)、古館伊知郎(テレビ朝日)らが番組を降板することに触れて、「骨のある人たちが去ってしまう。高市発言を受けてテレビ局が自粛したとしか思えない」と憤った。

 田原氏は、「本来なら全テレビ局が、断固、抗議をして、高市総務相に恥ずかしい思いをさせなければならないはずだ」と、語気を強めた。

もはや、日本は末期症状?!~鳥越俊太郎氏 「これは安倍政権のメディアへの恫喝、脅しだ」~田勢康弘氏「安倍首相は、(国会の)本会議場で拍手をしていなかった議員をチェックする

 鳥越俊太郎氏は、これは安倍政権のメディアへの恫喝、脅しだと声を荒げ、「安倍政権は奢り高ぶり、国民をなめ切っている」と憤った。

 「間接民主主義国家では、政治権力をチェックするのはメディアの使命だが、安倍政権になって、メディアが政権をチェックせず、官邸は報道番組をすべてチェックしている。このまま行くと、日本はナチスのようになるかも知れない」。

 厳しい表情で、今後の日本の未来に警鐘を鳴らず鳥越氏の気迫に、報道陣で埋め尽くされた会見場は、しんと静まり返った。
 
 最後に、欠席した田勢康弘氏からのメッセージが読み上げられた。

 「安倍首相は、(国会の)本会議場で拍手をしていなかった議員をチェックする。ものが言えない自民党議員が、民主党議員に『もっと切り込め』と忠言までしている。総理と会食するマスメディアの社長が、ものを言えないのと同じだ」

報道現場に充満する圧力と自粛の実態を関係者が匿名告発!「高市発言は、夏の参院選への言論統制が目的だ」

 会見ではさらに、報道関係者から匿名を条件に寄せられた、現場の悲痛な訴えが紹介された。

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