「立憲主義は、この数ヶ月で私たち市民のものになった」~立憲デモクラシーの会主催による「公開シンポジウム 安保法制以後の憲法と民主主義」 2015.10.30

記事公開日:2015.11.3取材地: テキスト 動画
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(安道幹)

※11月3日テキストを追加しました!

 「これは長期戦になる。我々がするべきは、知の量と質を高めることだ。そこに足を踏まえ、対抗していく力を作っていく」――。

 2015年10月30日(金)、東京都千代田区の日本教育会館で、立憲デモクラシーの会主催による「公開シンポジウム 安保法制以後の憲法と民主主義」が開催された。冒頭、東京大学名誉教授の樋口陽一氏による開会の挨拶のあと、各専門分野の立場から、安全保障関連法案の意味付けや反対運動の成果、今後の闘い方などをテーマにパネルディスカッションが行われた。

■ハイライト

  • 挨拶 樋口陽一氏(立憲デモクラシーの会共同代表、東京大学・東北大学名誉教授、憲法学)
  • パネリスト 杉田敦氏(法政大学教授、政治学)/青井未帆氏(学習院大学教授、憲法学)/五野井郁夫氏(高千穂大学准教授、政治学)/山口二郎氏(法政大学教授、政治学、立憲デモクラシーの会共同代表)
  • タイトル 公開シンポジウム 安保法制以後の憲法と民主主義
  • 日時 2015年10月30日(金)18:00〜
  • 場所 日本教育会館(東京都千代田区一ツ橋)
  • 主催 立憲デモクラシーの会詳細

「安保法案は、90年代以降の政治主導の帰結だ」

 政府・与党により強行採決された安全保障関連法案は、安倍政権による強力な政治主導のもとで行われた。なぜ今、このような強権的な政治手法を用いる安倍政権が登場し、安全保障政策の大幅な変更をもたらしたのか。これについて法政大学教授の山口二郎氏は、安倍政権をこの20年にわたる一連の政治改革の”帰結“として位置づける。

 「まずバブルの崩壊や人口減少などを背景に、従来の霞ヶ関にあった多元主義的な自民党政治への批判があった。この20年で方向性を問わないままに選挙改革を行ない、政治主導が進められてきた。そして今、権力がトップダウンで現状変更することをよしとする風潮ができあがり、個人や自由など、権力が本来入ってはいけないところにまで入り込む結果となっている。今回の安保法案は、これら90年代以降の政治主導の帰結だと言える」

海外メディアを巻き込む「参加型民主主義」

 また、法政大学教授の杉田敦氏は、安保法案の可決後の課題として「安倍政権の支持率が下がらないこと」に注目し、その理由を、政権が経済政策を打ち出すタイミングと関連づけて次のように説明する。

 「安保法案や原発再稼動のシングルイシューについては、世論の多数派が反対している。だが安保法案の採決後、内閣支持率が下がらない。経済的争点以外の争点を、自分の選挙の基準にできていないという現実がある。つまり人々の生活が苦しいということでしょう。これを政権側が巧みに利用し、選挙時には経済を争点化し、選挙が終わると憲法をいじろうとする」

 このように述べ、政権側による争点外しと国民側の投票基準が、「日本の代表制民主主義の根本的欠落」を生んでいると指摘する。

 一方、このような「代表制民主主義」の欠落に対して、高千穂大学准教授の五野井郁夫氏は、デモや集会などにより直接行動を行う「参加型民主主義」の重要性を指摘し、SEALDs(シールズ)をはじめとした安保反対の動きが、これまで日本では見られなかった「新しい戦略」を取ったことを次のように評価する。

 「今回のSEALDsシールズをはじめとした反対デモの動きは、まず英語でプラカードを作り、海外のメディアへ訴えかけるというアプローチをとった。BBCやロイターが取り上げたあとに、国内のメディアが報道し、野党が動かざるを得ない状況を作っていった。つまり参加型民主主義が議会制民主主義に影響を与えたと言える。実は台湾や香港での学生運動、中東の民主化運動でも同じ手法を用いている。この動きを今後も追求していくべきだ」

法秩序を回復させる方法

 また、学習院大学教授の青井未帆氏は、「現政権に憲法を守る意欲がそもそも欠落していること」「国会議員の当事者意識が希薄化していること」を批判し、法秩序を回復する手段について提案する。

 「まず選挙権を行使すること、水に流さないことが重要だ。また憲法の中に、内閣がどういう政治を行っていくのか、閣議をどのように運営をしていくのかについて規定は少ない。今後、こういうところに働きかけていくことが重要ではないか。違憲立法審査権を持つ最高裁判所についても、客観的な法秩序を回復する責任を最終的に負っているはず。我々はここにもアプローチしていけるはず」

 最後に、この日会場に来場していた立教大学教授の西谷修氏から発言があった。西谷氏は10月上旬に立教大学が「安全保障関連法に反対する学者の会」の主催するシンポジウムの会場使用を拒否した問題について「極めて恥ずかしいことだとあちこちで報道され、ああいうものはきちんと引き受けてやるのが大学だということが世間一般に広まった」と、問題が前向きに影響している点を指摘し、「今、一方には非常な危機はあるけれども、同時にそのためにいろんな動きが出ていて、その動きが状況を変えていくかもしれない」と、現在の政治状況に対して様々な機会を捉え、声を上げる市民や大学人の動きに期待を寄せた。

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