【続報2】関電は制裁金を払って再稼働する可能性も!? 高浜原発差止仮処分弁護団・只野靖弁護士に聞く 2015.4.14

記事公開日:2015.4.14取材地: テキスト
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(取材:ぎぎまき 記事:ぎぎまき・原佑介)

※2015年4月16日、記事内容を一部加筆しました

 福井地裁は4月14日、関西電力・高浜原発3、4号機(福井県)の運転止し止めを求めた仮処分申請で、再稼働を認めない決定を下した。仮処分で原発の運転を禁止する決定は異例。全国で初となる。

 裁判長は昨年5月にも福井地裁で大飯原発3、4号機(同県おおい町)の差し止め判決を言い渡した樋口英明氏だが、今回の決定は昨年のものと何が違うのだろうか。浜岡原発運転差し止め訴訟の弁護団の一人、只野靖弁護士に聞いた。

「今回の決定は出るべくして出た」福井地裁が基準を鋭く批判

 只野弁護士は、IWJの取材に対し、「今回の決定は出るべくして出た」との見方を示す。

 「改めて前年5月の大飯原発に対する差し止め判決よりもさらに深化していて、関西電力の高浜原発だけではなく、国の新規制基準の在り方をするどく批判しているところが新しい点です」

 福井地裁の決定文は、基準地震動の評価の信頼性を指摘し、原発施設の脆弱性、新規制基準の非合理性を指摘している。以下、決定文から抜粋する。

 「万が一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見い出し難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる」

 「本件(高浜)原発の安全施設、安全技術には多方面にわたり脆弱性がある。この脆弱性は、①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する、②外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする、③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにするという各方策がとられることによってしか解消できない」

 「新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることである。しかるに、新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」

 「原子力規制委員会委員長の『基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない』という川内原発に関しての発言は、(中略)文字どおり基準に適合しても安全性が確保されているわけではないことを認めたにほかならない。新規制基準は合理性を欠くものである」

判決結果を覆すまで、関電は再稼働はできない

 続けて只野弁護士は、昨年5月の大飯原発差し止め訴訟との違いについて、「本訴で勝っても、ただちに効力は発揮しない。しかし、仮処分で決定が出るということはただちに効力が生じるということだ」と述べ、「決定を電力会社が覆すまでは、事実上、運転はできなくなった」と話した。

 2014年5月21日、大飯原発3、4号機をめぐり、住民らが関電に運転の差し止めを求めた裁判で、福井地裁は「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」と述べ、「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、運転差し止めを命じていた。関電は判決を不服として控訴。現在も裁判は続いている。

「お金を払えば別」再稼働への抜け道!?

 大飯原発は、関電が控訴したことで再び係争中となり、法的には再稼働が許される。一方、仮処分で運転差し止め判決が下された高浜原発はそうは行かない。しかし、「お金を払えば別ですけどね」と只野弁護士はいう。

 つまり、判決を無視し、再稼働を強行すれば、関電は制裁金を要求されることになる。「関電が仮処分決定を無視し、制裁金を支払ってまでも、運転を強行することは100%ない」と前置きした上で、只野弁護士は、長崎県の諫早湾干拓訴訟を例に挙げた。

 諫早湾干拓訴訟とは、漁業不振の調査のため、諫早湾の排水門開門を命じた2010年の福岡高裁確定判決のこと。判決後、営農者らの反対を理由に、国が排水門を開門しなかったため、漁業者側が佐賀地裁に「間接強制」を申し立て、佐賀地裁は昨年4月、国に、1日45万円の支払いを命じた。国は今でも制裁金を払い続けるという形で、排水門の開門に応じていない。

  • 毎日新聞 2015年04月14日 諫早湾干拓:国制裁金に国税が課税 漁業者反発(ページ削除)

 実際に制裁金を支払っているケースがある中で、関電が再稼働を強行することは、本当にあり得ないのか。

 只野弁護士は、「それは、全く現実的ではない」と語る。なぜなら、原発が停止していることによって、一基あたり、1日1億円の損害が発生していると主張している関電に対し、福井地裁はそれを上回る制裁金の支払いを命じる可能性が高いからだ。

 関電は福井地裁の決定を受け、「誠に遺憾で到底承服できない」と、速やかに不服申し立ての手続きをとる方針を表明。福井地裁には「合理的な由なく審理を終結した」と批判するコメントを出している。今後の関電の動向に注目だ。

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