東京オリンピックの2020年に石炭火力発電の建設ラッシュ? 諸外国が抑制に向かう中、日本は安倍政権下で43基もの新設計画 2015.4.9

記事公開日:2015.4.10取材地: テキスト動画
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(IWJ・青木浩文)

 気候ネットワーク主催で行なわれている連続セミナーの第5回目が2015年4月9日(木)、主婦会館にて開かれた。最終回となる今回のテーマは、「火力発電を巡る諸問題」。講師は気候ネットワークの伊東宏氏と平田仁子氏が務めた。

 2015年末、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の「第21回締約国会議(COP21)」がフランス・パリで開催される。そこでは、2020年以降の新たな枠組みづくりが話し合われることになる。

 会議に先立ち、各参加国は自国の温室効果ガスの削減目標を3月末までに提出することが求められていた。すでにアメリカ、ロシア、EU等34カ国が提出済み。一方、日本は提出ができておらず、いまだ議論の途上にある。

記事目次

■ハイライト

  • スピーカー 平田仁子氏(気候ネットワーク)、伊東宏氏(気候ネットワーク)

石炭は原子力と同じ重要なベースロード電源

 2014年4月に改定された「エネルギー基本計画」では、石炭火力発電は原子力発電と共に重要なベースロード電源と位置づけられた。しかし、石炭火力発電は発電方式の中でも最もCO2排出が多い。温暖化対策の観点から、石炭火力発電に対する早急の見直しが必要とされていると、気候ネットワークは伝えている。

 気候ネットワークでは、石炭火力発電が現在および将来にもたらし続ける環境影響の把握を試みるため、既存の石炭火力発電の調査を行い、伊東氏から発表された。

 (特定非営利活動法人 気候ネットワーク、2015 年4月9日)

 次に、平田氏が日本の石炭火力発電に関する動向と将来における課題を説明した。

「原発推進で温暖化防止」の傍ら「石炭推進で温暖化促進」の矛盾

 1990年以降、温暖化対策の必要性が叫ばれてきたが、日本の電力消費量は右肩上がりで増加し、CO2排出量もそれにともなって増えてきた。この期間、2011年の東日本大震災の直前まで、日本は温暖化防止対策として原発推進を中心に据えて遂行してきた。そうすることにより、CO2が削減されると提唱してきたからだ。しかし実際は、原発を推進してもCO2排出量は増えたのが現状であると、気候ネットワークの平田氏は強調した。

 また、その傍らで日本は温暖化促進となる石炭火力発電所を増やしていった。この結果、2013年のCO2排出量は、1990年に比較して10%以上増やすことになってしまう。このような「方針の一貫性のなさ」が、日本がCO2を削減できなかった理由の一つだと、気候ネットワークは創立以来、訴えてきていると平田氏は語った。

新規の火力発電所が中止に――京都議定書の効果

 1980年代から90年代にかけて、石炭火力発電所の建設計画は増えていった。しかし、京都議定書が発効(1997年12月11日署名)されてからは、新規の計画はゼロとなる。これは、京都議定書の効果であったと平田氏は見ている。

 2009年、福島県小名浜で新規の石炭火力発電所の計画がもちあがった。その際、環境アセスメントのプロセスの中で、当時の環境大臣が、CO2排出が大きな懸念であるため、より効率の良いものにするようにとの意見書を提出した。

 しかし、これでは採算に合わないと判断したのか、事業者が自らこの事業を中止してしまった。それ以降、事業者が石炭火力発電所を自ら計画することはなくなる。

安倍政権による政策転換――石炭火力発電所新設へ

 2011年、東日本大震災後に政府の政策が大きく転換する。

(…会員ページにつづく)

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