【佐賀県知事選特別企画】写真でみる九州電力玄海原発の今 2015.1.6

記事公開日:2015.1.6取材地: テキスト動画
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(IWJ中継市民・こうの みなと)

 昨年12月25日に告示された佐賀県知事選挙は、1月11日(日)まで、最後まで結果の見えない激しい選挙戦が予想されている。

 立候補を表明しているのは、「元武雄市長・元総務官僚の樋渡啓祐氏(45)=自民党推薦」、「九州大大学院教授・元国土交通官僚の島谷幸宏氏(59)」、「小城市で農業を営んでいる飯盛良隆氏(44)」、「元総務官僚の山口祥義氏(49)=JA佐賀推薦」の4人である。

 1月1日に発表された、地元、佐賀新聞の世論調査によると、原発再稼働容認派の樋渡氏と山口氏がリードしていると伝えられているが、まだ、35%もの有権者が投票者を決めておらず、4候補者の中で唯一、原発再稼働に反対している島谷氏の動向も注目される。

 IWJでは、選挙の大きな争点の一つとなっている場所、「九州電力 玄海原子力発電所」を12月28日に改めて取材した。

■動画 玄海原発を対岸から望む

玄海町を歩く

 原発のある、佐賀県玄海町(人口5,994人)に入ると、「玄海原発再稼働反対」の看板が1つだけ道沿いにあった。逆に、再稼働に賛成する看板は、意外にも1つも見つけられなかった。

 道沿いの電柱には、「不審者を見かけたら110通報」の文字。寄贈は、「九州電柱広告協議会」となっている。筆者のような善良な国民も、間違えられて通報されないか心配である。

 人口約6000人の町にしては、旅館の数が多い。原発の作業員などが利用する。

 玄海原発の正面ゲート。これ以上、写真を撮影しようとすると警備員に止められた。原子炉建屋は外から写真を撮り放題なのに、ゲートのみ写真撮影が禁止とは、なんとも矛盾である。

原発PRセンターの今

 玄海原発に併設する資料館「玄海PRセンター」。巨大な箱モノである。古川前佐賀県知事の父親が、かつて館長を務めていたことでも有名である。

 巨大スロープが伸びる展望台「太陽の塔」は、閉鎖されていた。警備強化の為だろうか。

 「玄海PR」センターの隣には、遊具施設のある公園があり、親子連れも少しいた。

 原発のすぐ隣で、子供を遊ばせることに、私ならば抵抗があるが…。

 玄関を入るとすぐに、パンフレットを渡される。

 年始も1月3日から営業をおこなっている。入館料は無料。写真も動画も撮り放題である。

 正面玄関奥には、MOX燃料(世界一の猛毒プルトニウムを燃料に混ぜたもの)の使用を促す、「プルサーマルでリサイクル」の看板があった。

 大爆発を起こした福島第一3号機と同じく、玄海原発3号機もMOX燃料を使用する原子炉である。

 吹き抜けとなっている「PR館」内には、原子炉の内部が剥き出しになった模型がある。フレームに全部おさまりきれないほど、巨大だ。実物の原子炉も、剥き出しにならないことを切に願う。

 館内では綺麗なお姉さんが、プルサーマル発電の仕組みなど、原発についての説明を丁寧に行ってくれる。

 小心者の筆者としては、「私は、再稼働に反対です」などとは、口が裂けても言えない。

 ウランが濃縮されたイエローケーキ。

 念のため、筆者は、恐る恐るお姉さんに確認してみたが、「模型」とのことで一安心した。

 一緒に展示されている、ウラン鉱石のみ本物とのことである。

 原子炉の中に入れる、燃料集合体の実物。

 MOX燃料用の3号機(手前)と、1・2・4号機(奥)では、微妙に作りが違う。

 放射性廃棄物を保管するドラム缶の実物。今、何本保管されていて、これからどこまで増えていくのか、全く定かではない。

 自分の体内に、どれだけの放射性物質が蓄積されているのかを図る装置が設置されていた。同じ条件で計測してみたが、1回目は「696ベクレル」、2回目は「9396ベクレル」。精度は、全く信用できそうにない。

 世界・日本で起こってきた、原子力事故についての展示パネルが並んでいた。

 福島第一原発の事故も紹介されていたのは意外だった。

 展示パネルには、玄海原発が現在おこなっている安全対策についての説明もなされていた。

 想定されている津波の高さは、海抜「約3m」。本当にたったこれだけであろうか?

 シールで訂正される前の数字が、非常に気になる。

 平成27年度完成目途で、「免震重要棟」を建設中とある。

 少なくとも、それ以前の再稼働は、絶対に認められてはいけないはずだ。

 原発敷地内に止められたトラックの上には、「移動式大容量ポンプ車」の文字が見える。

 「PR館」最上階にある展望室から見える、4つの原子炉建屋。

 左から、2号機(手前・円柱形)、4号機(奥・球体)、1号機(手前・円柱形)、3号機(奥・球体)。

対岸の岬から玄海原発を考える

 玄海原発のゲートを出て、左に数百メートル行くと、すぐ唐津市になる。

 原発からは二本のルートで、巨大な送電鉄塔が延々と続いている。

 ベストセラー小説「原発ホワイトアウト」でも描かれているように、2つのルートの送電鉄塔が、同時に一塔ずつ倒れでもしたら、原発は巨大なエネルギーを放出する逃げ場を失い、大参事に至る可能性が高い。

 今、「脱原発」「反原発」を唱える人でも、真剣に想定したり、議論したりしていないのは、原発リスクに戦争リスクが掛け合わされることだ。

 IWJ代表の岩上安身が入手した日米合同演習「ヤマサクラ」の資料には、日米軍が中国軍と開戦したあと、中国軍が上陸をはかり、日米軍が迫撃するというシナリオが描かれている。そこにはこの福岡地方を上陸と迫撃のポイントとして作戦計画が立案され、演習が行われているのだ。

 九州北部沿岸が激戦地となったら……。テロリスクどころの話ではない。原子炉建屋を狙って直撃しなくても、砲撃や爆撃で鉄塔や送電線が倒され、停電したら、それでアウト。

 入り江を挟んだ対岸の岬からも、4つの原子炉がよく見える。MOX燃料を使用する3号機までは、直線距離でわずか800m足らずしかない。

 仮に、ここへテロリストが乗り込んできて、対戦車ミサイルでも発射しようものなら、原子炉建屋には、簡単にダメージを与えられてしまいそうな距離である。

 原発の周辺には、無数の風車が点在するが、全て運転を停止していた。

 図らずも、原発の発電量がゼロでも、また風車の発電量がゼロでも、電力供給には、全く問題がないことを証明している。

 玄海原発3号機から、九州経済の中心地、福岡市の福岡市役所までは、直線距離で僅か53.3㎞しかない。しかも、その間はほとんど海で、遮るものは僅かしかない。

 福島県飯舘村は、福島第一原発から40㎞以上離れていたが、深刻な放射能汚染により、未だ、多くの住民が帰宅できない状態が続いている。

 もし、玄海原発で福島並みの大事故が起こった場合は、風向き次第では、人口152万人を超える大都市・福岡市が、深刻な放射能汚染に見舞われ、ゴーストタウンとなることも十分に考えられる。九州の政治、経済の中心部が失われてしまうのだ。どれほどの損失になるか、見当もつかない。

 そのような安全保障上、重大なリスクを冒してまで玄海原発を再稼働させるべきなのか、1月11日(日)、佐賀県民は大きな判断を委ねられている。

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「【佐賀県知事選特別企画】写真でみる九州電力玄海原発の今」への1件のフィードバック

  1. くろすけ より:

    原発が日本を狂わせた!

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