1月11日に投開票を迎える佐賀県知事選挙に立候補した無所属の山口祥義(やまぐち・よしのり)候補が2014年12月29日(月)18時30分から、佐賀県鹿島市の鹿島市生涯学習センター・エイブルで、総決起大会(個人演説会)を開いた。
佐賀県知事選挙では、他に、自民党・公明党の推薦を受けて立候補した前武雄市長・樋渡啓祐(ひわたし・けいすけ)氏、九州大学大学院教授の島谷幸宏(しまたに・ゆきひろ)氏、農業の飯盛良隆(いさがい・よしたか)氏の4人が立候補している。
(IWJ中継市民・こうの みなと)
※1月2日テキスト追加しました!特集 IWJが追うオスプレイ問題
1月11日に投開票を迎える佐賀県知事選挙に立候補した無所属の山口祥義(やまぐち・よしのり)候補が2014年12月29日(月)18時30分から、佐賀県鹿島市の鹿島市生涯学習センター・エイブルで、総決起大会(個人演説会)を開いた。
佐賀県知事選挙では、他に、自民党・公明党の推薦を受けて立候補した前武雄市長・樋渡啓祐(ひわたし・けいすけ)氏、九州大学大学院教授の島谷幸宏(しまたに・ゆきひろ)氏、農業の飯盛良隆(いさがい・よしたか)氏の4人が立候補している。
■ハイライト
山口候補は、これまで自民党の有力な支持母体であった、JA佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」(正組合員数・准組合員数合わせて約8万5千人)や、「佐賀県有明海漁業協同組合」(正組合員数・准組合員数合わせて約2千人)の推薦を受け、自民党本部が強く推薦している樋渡氏との分裂選挙となっている。
ステージ上には、中野吉寛・佐賀県農政協議会会長、徳永重昭・佐賀県有明海漁業協同組長が隣同士で肩を並べた。また、樋口久俊・鹿島市長、石井秀夫・佐賀県議会議員、土井敏行・佐賀県議会議員などの地元有力政治家も登壇し、応援のスピーチをおこなった。
応援スピーチに登壇した、中野吉寛・佐賀県農政協議会会長は、山口氏を推薦したいきさつについて触れ、県内9つ全ての自治体の市長または議長から、「候補者を選ぶにあたって加勢をしてくれ」と要請されたという。
中野会長は、「『農協が駄目』『TPPは賛成』『有明海諫早干拓の開門には反対』『オスプレイは大賛成』『原発も賛成』だと言っている人を、私達が応援するわけにはいかない」と強調。その理由として、「私たちには、5万~6万人の農家の方が期待をしておいでになる。そういった期待に応えるためにも、有権者の方達と十分に話し合いのできる心の広い候補者でないと駄目」と話し、山口氏を推薦するに至った経緯を説明した。
さらに、対立候補の樋渡氏を12月28日、応援に来た菅義偉官房長官にも言及し、「あなた方はミスキャストをしている」と、直接、菅官房長官に苦言を呈したことを明かした。
続けて登壇した、徳永重昭・佐賀県有明海漁業協同組長も、「漁業も、農業と同じくTPPをはじめ多くの経済的問題を抱えている」と話し、TPP参加反対の意思を明確にした。
また、佐賀空港への配備が計画されているオスプレイについても触れ、「国策は国策として認めるが、私たちの意見をちゃんと取り入れて、みんな納得のいく判断をしてもらいたい」と、山口氏に注文をつけた。
佐賀空港は、生産量日本一を誇る「佐賀ノリ」の養殖海域にあり、強力な風圧が発生するオスプレイが接近することにより、海苔網が吹き飛んでしまうのではないか等の懸念が持たれている。
割れんばかりの拍手の後、決意表明に臨んだ山口氏は、「今回の選挙は、自分の故郷自体が非常に危ないというお話をみなさんからお聞きし、故郷の土となるべく、自分の気持ちを振り絞って決断した」と話した。
旧自治省(現総務省)のキャリア官僚であった山口氏は、「有珠山噴火」、「新潟県中越地震」、「東海村JCO臨界事故」など現場の第一線で携わってきたことを強調。その経験から、「住民の命が救われたときに、公務員をやっていてよかったなと心の底から感じた。県民のみなさんには、様々な思いがあるが、現場の意見を取り入れて政策として集約していきたい」とした。
また、山口氏は、「来たるべき時代は、農林水産業。TPPはしっかり反対して、守っていきたい」と述べ、TPP反対を明言した。
12月28日に発表された、地元、佐賀新聞社によるアンケートで、山口氏は「TPP交渉推進のため、主要5項目の一部関税引き下げを容認するか」「JA全中は一般社団法人化すべきか」「企業による農地取得制度は緩和すべきか」という3項目全てに「△」と回答し、態度を明らかにしていなかった。しかし、この決起大会で、TPPについては「明確に反対」とした格好だ。
しかし、支持母体の農協・漁協関係者が強く懸念している、「原発再稼働問題」、「オスプレイ問題」については、山口氏の口から一切語られることはなく、参加者からの質疑応答の時間も全く設けられなかった。
決起集会で明らかにされなかった、「原発再稼働問題」、「オスプレイ問題」について、山口氏の見解を改めて確認するため、決起大会終了後の会場ロビーで、IWJはマスコミの囲み取材に参加した。
対立候補の樋渡氏・島谷氏にも質問している旨を伝え、山口氏本人は、一旦はIWJの取材に応じた。
TPPについては、「反対、反対、反対…」とコメントし、明確な意思を再確認できたが、「原発」に質問がおよんだところで、陣営スタッフから「時間がない」ことを理由に、強引な形でインタビューを中止させられてしまった。このときの時刻はすでに20時前だったため、その後、夜の時間帯に山口氏が分単位のスケジュールを抱えていたとは考えにくい。
その後、山口氏は、足早にエスカレーターを駆け下り、白いプリウスで会場を後にした。
前述した佐賀新聞社によるアンケートで、山口氏はオスプレイに対する3項目の質問についても全て「△」と回答し、態度を明確にしていない。
また、「玄海原発の再稼働には賛成か」との質問に対しては、はっきり「○」と回答している。
IWJとしては、山口氏の真意を確認しようと試みたが、山口陣営のスタッフに事実上質問を拒否された。
支持母体である地元農協・漁協の強い政策的要請に対して、山口氏が応えられる県知事となれるのかどうか、疑問を持たざるを得ない決起集会の結末だった。