【佐賀県知事選】自民党陣営分裂 カギを握る農家票の行方 争点は原発再稼働、オスプレイ、そしてTPP 2014.12.25

記事公開日:2014.12.26取材地: テキスト
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(IWJ中継市民 こうの みなと)

 衆院選出馬のために、11月25日、佐賀県知事を辞職した、古川康氏(佐賀2区・自民党より当選)の後任を問う選挙が、12月25日(水)、いよいよ告示された。年末年始を挟んだ1月11日(日)まで、最後まで結果の見えない激しい選挙戦が予想されている。

 佐賀県は県全体の人口を合わせてもわずか約83万人たらずで、人口約152万人を有するとなりの福岡市の約半分程度の自治体規模でしかない。全国で6番目に人口の少ない県で行われる今回の知事選であるが、2つの大きな国策の是非が争点となっている。

 それは、「玄海原発の再稼働」と「オスプレイの佐賀空港利用」である。

 3期11年続いた前任の古川康氏は、中央政府に対して、非常に従順であった。九州電力が大きな支援団体だったということもあり、玄海原発には、基本的には賛成の立場だった。また、オスプレイについても、退任直前に、「佐賀空港にオスプレイなどの自衛隊機を配備しても民間利用に支障はない」と、受け入れに前向きな発言をおこなっている。

 安倍政権から押し付けられた非情な2つの国策に対して、候補者たちが どのような政策を掲げて選挙を戦うのか注目する必要がある。

「原発」と「オスプレイ」 2つとも反対しているのは島谷氏のみ

 現在までに、立候補を表明しているのは、「元武雄市長・元総務官僚の樋渡啓祐氏(45)=自民党推薦」、「九州大大学院教授・元国土交通官僚の島谷幸宏氏(59)」、「小城市で農業を営んでいる飯盛良隆氏(44)」、「元総務官僚の山口祥義氏(49)=JA佐賀推薦」の4人である。

 しかし、「原発」と「オスプレイ」、両方に明確な反対の意思表明を行っているのは島谷氏一人のみである。

 樋渡氏は、「これ以上、原発再稼働をやらないと、どんどん電気代が高くなっていく。環境負荷もかかってくることを考えると再稼働はやむを得ない。」と再稼働容認の姿勢を見せている。オスプレイについても、「国民が広く浅く負担することが課せられている」と受け入れに前向きだ。

 飯盛氏は、「1号機を廃炉に、3号機のプルサーマルは中止、そのうえで、九州電力の会長、社長、そして県知事の三者連帯責任で玄海原発2~4号機を稼働すべき」と表明しており、4基のうち3基の原発再稼働を容認する方針である。オスプレイについては、「米軍の使用は認めず、自衛隊に関しては、長崎空港、天草空港など他の施設と比べて、よりふさわしいことが理解できれば受け入れる」としている。

※参照:飯盛 良隆のブログ 政策目標3 玄海原発の問題 ※当該ページ削除

 山口氏は、公示9日前に、急遽出馬を表明した。原発について「安全対策を注視し、地元の意見を聞いていく」としながらも、「あとは、エネルギーバランスの問題」として、最終的な再稼働にはやぶさかではない様子だ。オスプレイの賛否についても、「自分の中で課題を検証し、整理したい」として態度を明確にしていない。

樋渡氏と山口氏 自民党陣営が分裂

 前武雄市長で、元総務官僚の樋渡氏は、古川前知事が衆院選出馬するという報道が出た、数日後に出馬の意向を表明し、首相官邸や党本部を訪問するなど素早い動きを見せた。古川前知事からも安倍政権からも、事実上の後継者指名を受けている形だ。

 樋渡氏は、市民病院の民営化、民間塾「花まる学習会」と提携した義務教育改革、公立図書館の管理をTSUTAYA(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に業務委託するなど、異端の改革派市長として全国的な知名度がある。

 一方で、その急進的な手法に対し、反発も根強い。

 樋渡氏に危機感を募らせる地元自民党議員らは、元総務省過疎対策室長の山口氏を急遽擁立し、党本部決定の反発に動いた。県連幹部が役職辞任を申し出るなど独自で山口氏支援の動きを強めている。

カギを握る農家票の行方

 今回の自民党陣営の分裂を象徴的に物語っているのが、農協の動きである。JA佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」は、樋渡氏への支援を見送り、山口氏を推薦した。

 TPP加盟や農協改革を踏まえ、全国農業協同組合中央会(JA全中)を「岩盤規制」の象徴と位置づけ、解体に動いている自民党・安倍政権と知事選を介した全面戦争となる。

 しかしながら、農協から推薦を受けた山口氏からも、TPPや農協改革に真っ向から反対する姿勢は、今のところ見受けられない。政策用リーフレットには、「佐賀の農産物をワールドワイドに!(中略)マレーシアやドーハなど世界へと広げていきます」との記載があり、TPP賛成とも受け取れる。

 山口氏は、元々、内閣官房TPP政府対策本部の佐々木豊成国内調整総括官を出馬させる方向で動いていた人物である。その山口氏が、県政レベルとはいえ、TPPやそれに付随する農協改革に対して、真っ向から異論を展開するかどうかは疑問だ。

▲JA佐賀中央支店の前には、「TPP参加断固反対」の看板が建てられているが…。

 JA佐賀は、組合員8万5千人を有し、組合員の投票結果が知事選の行方を大きく左右する。本気でTPPや農地改革に反対し、また、農作物への原発被害を免れたいと考えるのであれば、農協組合員をはじめとした有権者それぞれが、投票すべき候補者をよく見極めて投票する必要がある。

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