【岩上安身のニュースのトリセツ】「この大義なき解散総選挙は『3年殺し』の約束をさせられる選挙だ」(IWJウィークリー73号より) 2014.11.24

記事公開日:2014.11.24 テキスト
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(岩上安身)

特集 総選挙2014

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 衆議院が11月21日午後、本会議で解散されました。

 安倍総理は、11月18日に記者会見を開き、予定されていた消費税率の10%引き上げを2017年4月まで延期することを表明。成長戦略をはじめとするアベノミクスの成果について、国民の信を問うと説明しました。衆院選の日程は12月2日公示、14日投開票。与野党はさっそく選挙の準備、調整を開始。事実上、選挙戦がスタートしました。

 18日の安部総理会見には私も出席し、質問しようと最後まで手を上げ続けましたが、毎回のことながら、この日も結局、指名されず。現場の状況をツイッターで報じました。それをまとめたツイ録を加筆し、さらに後日分も含めて掲載します。

景気を腰折れさせた原因は4月の消費増税。この人災を引き起こした安倍総理に責任の自覚なし!

 18日の安倍総理会見。冒頭のスピーチ、そして記者からの質疑応答でも、解散する明白な理由は見出せなかった。総理が強調したロジックはこうだ。「景気回復が遅れている。来年10月に予定されていた10%への再増税は3年後の2017年に延期するが、必ず実施する。そのために解散して信を問う」。

 なぜ、解散する必要があるのか、わかりにくいのは当然である。総理のロジックには、そもそも、なぜ景気が腰折れしたのか、誰にその責任があるのか、という肝心なポイントがまるまる欠落しているのである。

 安倍総理自身、会見冒頭のスピーチで、GDPの2期連続のマイナス、最も重視するという、消費支出のマイナスにも言及している。日本経済が危機的であることは、「アベノミクスが成果をあげている!」という絶叫とは裏腹に、ご本人も認識しているわけである。

 だが、その経済危機を招いた原因は何か、誰に責任があるのかは、言及しないのである。記者クラブの記者たちも、その点に触れる質問をしようとしない。言うまでもなく、原因は消費税増税であり、その責任者は景気腰折れのリスクを顧みず、増税を断行した安倍総理自身にある。

 私が指されたら、質問しようと思っていたことは、「総理は、景気が良くなければ増税は行わないという景気条項が法案に書き込まれていたにも関わらず、ご自身の判断で増税を断行され、その結果、この大不況を招いた。その責任はどう考えているのか」というものだった。

 再増税の先送りを決断した、と胸を張る前に、なぜそうした決断をしなくてはならないほど景気が悪化したのかが、問われるべきである。この景気の腰折れを、あたかも自然災害のように言ってもらっては困る。これは人災である。その人災を引き起こしたのは安倍総理自身だ。その責任の自覚はあるのか。

 演説と質疑応答を聞く限り、その責任の自覚はあるとは言えない。また、記者クラブの記者たちにも、肝心のその責任に触れる気配が感じられない。政治は結果責任である。今年の4月のタイミングで、消費税を5%から8%にあげた決断は間違っていた。その失政こそが本来問われるべきである。

解散で大失政の責任をうやむやにし、3年後の再増税の約束を結ばせようとする選挙

 もし、安倍総理が、いや、消費税増税は間違っていない、この不況と増税は関係ない、と居直るなら、来年の再増税の見送りは必要ないことになる。再増税を見送る、という判断は、増税が景気回復に甚大な悪影響を及ぼすことを十分認識している、ということだ。

 ということは、この唐突な、理由も大義も見出せない解散は、自身の大失政を隠すためのごまかし解散ということになる。未曾有の不況は安倍政権自身が招いたのだ。しかし、この選挙によって再び過半数を得たなら、臆面もなく、信任を得た、として、不況の責任追及をかわすだろう。

 多くのメディアが「再増税」の先送りの判断を問う解散総選挙、と報じているが、これは明らかにおかしい。安倍総理は来年(2015年)10月予定の再増税は延期するが、予定より1年半後の2017年には必ず再増税を行う、と断言しているのである。

 だから、この解散総選挙は、今年4月の増税の判断が正しかったか、過去の結果責任が問われる選挙であると同時に、3年後の再増税を国民が是とするか否とするか、未来の再増税の可否について国民の判断が問われる選挙でもあるのだ。

 3年後のことは、3年後になってみないとわからない。その頃、景気が回復していて、再増税にも耐えうるほど、日本経済はタフになっているかもしれないと、楽観的に考えている人もいるかもしれない。

(…会員ページにつづく)

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「【岩上安身のニュースのトリセツ】「この大義なき解散総選挙は『3年殺し』の約束をさせられる選挙だ」(IWJウィークリー73号より)」への2件のフィードバック

  1. hotaka43 より:

    もしタフになっていたとしても、再増税すれば落ちこむ。そしてまたぞろ景気回復の為のカンフル剤打ちこみという財政出動となる。
    消費税とはこれの繰り返しで、何の益も無い税金だという事。

  2. 杉山 昭夫 より:

    IWJが扱うテーマを今まで見てきて不満に思うことがある。それは社会保障制度改革についての番組がほとんどないことだ。
    ここ10数年、世論調査を見ても、社会保障制度(年金、医療、介護、教育)に対する国民の関心は非常に高い(常に1位か2位)。ところが、民主党政権は「社会保障と税の一体改革」を目指していたが政権は倒れ、自民党は全く社会保障に関心がないために(自己責任、自助努力)、もはや社会保障制度は崩壊しかかっている。人々が将来に不安を覚えるのは、社会保障制度が不安定だからだ。
    そこで問題になるのは税との関係だ。アンケート調査を見ても、国民の多くは、社会保障を充実させるためなら税金が上がってもよいと考えている。ところがIWJに出てくる経済の専門家はこのことに全く触れない。まるで社会保障に関心がないかのようだ。社会保障の専門家で、税(間違いなく使うなら消費税)を上げなくてよい、という人はいないと言ってよいだろう。社会保障の充実した北欧は税金が高いし、米国でも国民皆保険を目指す民主党は「大きな政府」を掲げている。消費税増税に反対する人は社会保障をどのように考えているのか知りたいものだ。
    社会保障の問題は長期的な視野が必要で、地味な問題なので、メディアは扱おうとしない。しかし国民は関心があるのだ。日本がデフレ社会に陥っているのは、社会保障制度が不安定で将来が不安なので、安心してモノを消費できないからだと言われている。
    IWJはこの問題に関心を持ってほしい。宮本太郎、結城康博、大日向雅美など、専門家はいる。

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