「安倍首相は『大日本帝国』を取り戻したいと考えているはず」浜矩子氏が「アベノミクスは経済政策とは呼べない」と痛烈批判 2014.11.19

記事公開日:2014.12.17取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※12月17日テキスト追加しました!

 「私はこの2年間、『アホノミクス』という、もじり言葉をさんざん使ってきた。そこには、テレビのアナウンサーらがアベノミクス関連のニュースを読む時に、間違って『アホノミクス』と口走ることを狙う意図があった」――。

 2014年11月19日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で行われた「マスコミ・NHK乗っ取りNo!バイバイ安倍政権―浜矩子講演会」の序盤、エコノミストで同志社大学大学院ビジネス研究科教授の浜矩子氏は、このようなジョークを飛ばして聴衆の笑いをさらった。

 講演の中で浜氏は、「アベノミクスは人間不在の経済政策」と何度も強調。その上でメディアに対し、「新聞やテレビが『アベノミクス』なる言葉を素直に受け入れて、あのように使いまくったことで、政治情勢はかなり動かされた」と辛らつな言葉を浴びせた。

 第二次安倍政権誕生の際、メディアが「アベノミクス」という言葉を明るいイメージで社会に流布したため、それが「露払い効果」をもたらし、特定秘密保護法の成立や集団的自衛権の行使容認といった、日本の将来を揺さぶる、いくつもの重大政策が実行されやすい雰囲気が生まれた、との見方である。

 また、この7~9月期の実質GDP成長率(1次速報)の予想について、民間シンクタンクの読みがことごとく外れたことを、浜氏は厳しく指弾。結果的にマイナス0.4%(年率換算でマイナス1.6%)という数値に対し、彼らの事前予想は総じてプラス成長で、しかも、各社が出した数字には大差がない。

 浜氏は、「アベノミクス」という言葉が叫ばれている状況でマイナス予想を出すだけの気概が、今のエコノミストたちには見られないとし、「安倍政権を相手取るジャーナリストらにも、また同様の気概のなさが感じられる」と強い懸念を表明した。

■全編動画
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  • 講師 浜矩子氏(同志社大学大学院ビジネス研究科教授、エコノミスト)
  • 日時 2014年11月19日(水) 13:30~
  • 場所 キャンパスプラザ京都(京都市下京区)

行き詰まり将棋盤をひっくり返す「ヒステリー解散」

 この講演の前夜、安倍首相は首相官邸で記者会見を行い、衆議院の解散と総選挙を表明している。

 「このタイミングで、衆院解散を突然宣言し、総選挙に打って出る安倍首相の行動は、私の目には『臆病者の開き直り』、あるいは『へぼ将棋師のヒステリー』と映る」と切り出した浜氏は、今、安倍首相の胸の内は(個人消費や設備投資の指標に弱い数字が出るなど)アベノミクスの行き詰まりによる焦りでいっぱいのはずだと推察し、「ここで、われわれ反アベノミクスの勢力は、安倍政権打倒に向け、より力を入れねばならない」と口調を強めた。

 浜氏は「そもそも第二次安倍政権が誕生した前回の衆院選で、メディアが『アベノミクス』なる言葉に飛びつき、あのように使いまくった。あれで選挙結果が左右され、その後の政治情勢にも影響したのではないか」と振り返る。

 それが、特定秘密保護法の成立や集団的自衛権の行使容認、改憲への動きなど、安倍政権の暴走のスタートになったとし、「メディアの責任は大きい。あのような過ちを二度と繰り返してはいけない」と述べた。

 その上で、「このような思いを抱いて、私はアベノミクスではなく『アホノミクス』という言葉をさんざん使ってきた。テレビのアナウンサーらがアベノミクスと言うべき時に、『アホノミクス』と口走ることを願っている」とユーモアを交えて語ると、会場からは笑いや拍手が起こった。

経済活動と人間は、対立関係ではない

 浜氏は「安倍政権の経済政策は、人間が不在である」と訴えると、安倍政権の作成した政策関連の文書はもとより、安倍首相自身の講演でも「人間」という言葉が著しく不足している、と指摘した。

 「昨年(2013年)6月に行なわれた、アベノミクス3本目の矢である成長戦略(規制改革)に関する小1時間のスピーチでは、安倍首相が『人間』という言葉を口にしたのは1度きりだった。ちなみに『成長』という言葉は40回以上出た」。

 さらに、今年6月に発表された政策文書「日本再興戦略」には、ただの1度も「人間」という記述は登場していない、とも言い添えた。

 「経済活動は、人間を幸福にしてこそのもの」と力を込める浜氏は、その一方で「経済が前面に出た社会であればあるほど、つまり、経済効率が強く求められるほど、人間は脇に追いやられる」とも述べ、「そうした現実こそが、経済活動の本性を表しているのではないか、と思えてしまう瞬間が、われわれの日常には多々存在することは否定できない」と認める。

 「しかし、だからといって、人間と経済が敵対関係になることが本質だと思い、『経済活動には、そういう(人間を痛めつける)部分があってもしかたがない』などと労働者が言ってしまうのは、敗北宣言にほかならない」と述べた。

アベノミクスを「経済政策」とは呼べない

 そして、「そこに多少なりとも人間を痛めつける側面があるのなら、たとえそれが(高い収益を上げていて)経済活動のように見えても、われわれは断じて、それを『経済活動』と認知してはいけない」と続けた浜氏は、流行語の「ブラック企業」を捕まえて、次のように論じた。

 「経済活動の本質論で言えば、経済活動の中核を担う企業に『ブラックな要素』は入り込めるはずはない。ブラックな要素を入り込ませつつ、金儲けをすることを『企業経営』と呼んではいけないのだ。つまり、『ブラック企業』という言い方は間違っていて、正しくは『あいつらはブラックだ』でなければならない」

 政治が行う経済政策も同様で、そこに多少なりとも弱い立場にある人間を痛めつける面があるのなら、市民らは「そんなのは経済政策とは呼べない」と断固拒絶する姿勢を強めなくてはならないと、浜氏は述べて、このように断じた。「よって、(格差が拡大しても経済成長を追い求める)アベノミクスは、とても経済政策とは呼べない。だから『アホノミクス』なのだ」

 浜氏は、孔子の『論語』にある「心の欲する所に従えども矩(のり)を踰(こ)えず」というフレーズが、本来の「経済活動」を見事に言い表しているという。これは、「自分の欲望にしたがって思うがままに行動をとってもいいが、正しい道から外れるな」との意味を持つ。

 「もっと儲けたい、もっと大きな成功を手にしたいと、ひたすら邁進していても、その途中で、決して他人を蹴散らかしていないという、絶妙なバランスが実現してこそ、その活動を『経済活動』と呼ぶことができる」と浜氏は力説した。

道を踏み外す、財界の「社会保障費を削れ」発言

 生活保護に象徴される社会保障制度は、その「矩を超えず」の部分を担保するために生まれた「人間の知恵」だ――。続けて、こう強調した浜氏は、その知恵に対して「削減のメス」を入れることが、正義であるかのように語る風潮が強まっていることに、激しい嫌悪感を示した。

 「安倍首相の政策関連の発言中に『人間』という言葉は滅多に出てこないことは、さっきも言ったが、『社会保障』という言葉の登場頻度も非常に少なく、まれに社会保障に言及した時は、大抵、社会保障費削減の必要性がテーマになっている」

 浜氏は、政策決定で安倍首相に助言する「経済財政諮問会議」の存在を指摘。「そのメンバーには民間委員たちがいて、多くは財界の代表者だが、その民間委員の中から『歳出削減対象の本丸は、社会保障費にあり』という発言が出た、という報告がある。つまり、その発言者は『矩を超えろ』と言っているのであり、これでは『経済活動』をしていることにならない」と怒りをにじませた。

 では、なぜ、このような状況になっているのか。その理由を浜氏は、「安倍政権がスタートして以来、ある種の『病気』が地球規模に蔓延している」とした。

「女性の活躍を推進」の本性は女性酷使か

 浜氏は、その病気を「取り戻したがり病」とネーミングしている。これは、ヒト・モノ・カネが簡単に国境を越えるグローバリーゼーションが進展する中で、もう一度「国家」の求心力を取り戻そうとする価値観が土台となっていて、その症状がもっとも深刻な人物が「アベノミクス」を掲げている安倍首相だという。

 「ロシアのプーチン大統領が『大ロシア帝国』を取り戻したいのと同様に、安倍氏は『大日本帝国』を取り戻したいと考えているはず。その辺を、NHK経営委員でもある百田尚樹氏(作家)らが一生懸命サポートしているように映る。米国もまた、古き良き時代に戻りたいと切望する新保守の勢力が、新しい米国への脱皮を目指して大統領に就任したオバマ氏の足を引っ張り続け、今日に至っている」

(…会員ページにつづく)

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