「議員への罰則が嫌なら、秘密保護法は廃止せよ!」 ~情報保全諮問会議メンバーが語る秘密保護法の裏側 2014.6.16

記事公開日:2014.6.16取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「情報を漏らした議員は懲罰、処罰の対象になる法律を通してしまったのだから、これが嫌なら廃止しろ、となる」──。

 2014年6月16日、新潟市の新潟ユニゾンプラザで、特定秘密保護法・特別集会「やっぱりダメよ、特定秘密保護法 いま私たちになにができるか」が開かれた。秘密保全法制対策本部の前事務局長で、現在は政府の「情報保全諮問会議」メンバーの清水勉氏(日本弁護士連合会・秘密保全法制対策本部前事務局長)が、特定秘密保護法の最新情勢と今後の展望について語った。

 清水氏は「特定秘密保護法は、問題のある法律」としながらも、情報公開法と照らし合わせて、「秘密保全の考え方は必要」との認識を示した。また、重い罰則規定があることから、「法律の運用には、厳格な管理を求めることになる」と述べた。この罰則規定に関しては、議員も対象となることから、自民党内部からも懸念する声が上がっているといい、清水氏は「仮に、部分改正ということになれば、この法律は自滅することになる」と指摘した。

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※1時間23分頃より、映像に乱れが生じます。ご了承ください。

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  • 講師 清水勉氏(日本弁護士連合会・秘密保全法制対策本部の前事務局長、現在は政府の「情報保全諮問会議」メンバー)

情報保全諮問会議の内部に身を置く

 はじめに清水氏は、情報保全諮問会議に入った経緯に触れた。「自民党と公明党の国会議員から打診された。その時、議員には『特定秘密保護法には欠陥がある』と具体的に話した。彼らは、問題を抱えたまま官僚に任せるとまずいことになる、と感じたようだ。そこで、反映されるかは別として、問題点に関して、施行令や運用基準づくりの中で意見を出してもらってもかまわない、と声をかけてきた」。

 「すぐに判断できなかったが、会議の中に入るメリットと、外から批判するメリットを考えた。秘密保護法の施行までの期間は、立法の過程と違って検討のプロセスが表に出ないことが多いので、中に入って意見を言ったり、出せる時に情報を公開する方がメリットがあると思い、最終的に参加を決断した」と説明した。

 運用の問題について、「これまで秘密保護法のような法律は、日本にはなかった。したがって、官僚主導でやろうとしても、各省庁の考え方があって、この国としての考え方はまとまっていない。骨格としての法律は勢いで作ることができるとしても、実際の運用となると各省庁がいろいろなことを言ってくるので、簡単に運用基準や施行令が作れない」と清水氏は語る。

 「特に今回は、罰則規定が重くなっているので、扱う場合にしてもかなり厳格にしないと、まずいことになる。外部の人間の私から『これは問題があるのではないか』と言うことは、それなりに受け入れられる素地があると感じている」と述べた。

「情報公開」と「秘密保全」は同列に扱うべき

 続いて、情報公開と秘密保全の関係について触れた清水氏。「情報公開法を作っている時、『情報公開法を作ることは、秘密保護法を作ることではないか』という議論があった。情報公開法ができるまでは、私自身、けっこう役所で情報を見せてもらえたのだ。情報は(弁護士という職業柄)一般の人よりも見ることができた。情報公開法ができると、どうなったか。非公開事由にあたる情報は見せられない、となった。情報公開に対する役所の認識が高まるにつれ、私が情報に触れることが減っていった。また、非公開事由にあたる情報は国民に見せない、としているのが情報公開法。そうすると、情報公開と秘密保全の関係は、正反対にあるのではなくて、情報公開制度の中に『国民に見せない部分もある』という考え方が入っているのだ」と述べた。

 日弁連の秘密保護法への反対に関しては、「なんでもかんでも反対ではない。今年12月に施行が予定されていて、今、反対できる方法は何かということを、考える必要がある。基本的に、この法律はいらないので、廃止するのが一番重要だ。しかし、今の政治情勢で止めることができないのであれば、暴走抑制の仕組みづくりが必要である」とした。

 清水氏は「秘密保護法を作らねばならないような、切実な事情がない」と指摘した上で、「日弁連は、秘密保全は否定しないと言っている。これは、非公開情報があることを情報公開法で認めているので、その情報を管理すること自体は重要、という意味だ。情報の管理手法は、きちんとルール化しておいた方がいい。ただ、そのために、この法律(秘密保護法)はいらない。秘密の管理ということだけならば、役所の中でどのように管理するかという問題なので、別に法律である必要はない」との見解を示した。

秘密保護法は、第1条で破綻している!

 清水氏は、弁護士の視点から秘密保護法を解説し、「日本の行政法規は、1条にその法律の考え方が書かれ、2条以降の解釈の元になっている。ところが秘密保護法の1条は、何を言っているかわからない。これでは、2条以下の条文を絞り込むことができない。第1条で破綻している法律である」と切り捨てた。

 一方で、仕組みとして考えるべき問題提起はあるとして、行政間相互の情報連携の必要性を指摘した。「そのためには、公的情報の合理的な管理が必要である。これができていない。明治以降の日本は縦割りになって、各省庁が、どういう情報をどのように管理運用しているか、お互いに干渉していない。官僚は自分たちの仕事だけすればいいから、それでいいかもしれない。国会議員はそんなことに関心がないので、どうでもいいのかもしれない。しかし、公的情報は、どれも公的財産。これを適切に管理運用して、国民が利用できるようにすることは必要である」。

 情報セキュリティの問題については、「過失漏洩がなくなればいい、という問題ではない。人の監視や適正評価ではカバーしきれない。秘密保護法における適正評価は、その人が秘密情報を漏洩する恐れがないかどうか、5年単位でチェックする仕組みだ。しかし、『1回チェックすれば、あと5年間秘密を漏らさない』という保証はどこにあるのか。保証などない」と言う。

 「この制度を採用した人間からすれば、『他国もやってるから』というだけ。情報管理をまじめに考えるのなら、『他国が20世紀前半からやっているので、日本もやりましょう』ではない。今の時代に、情報管理をきちんとするにはどうしたらいいか、状況に合わせて考えなければいけない。したがって、特定秘密を扱っている人の監視ではなく、ルールをきちんと作って、そのルールが守られるかを確実にチェックできればいいことになる」。 

秘密を作るなら、業務の効率化はあきらめること

 清水氏は「秘密保護法を作ろうと一生懸命になっている人たちの考えは、秘密を生み出したいのか、限定したいのか、よくわからない」と言う。「この法律の施行、運用基準を作っている側からすると、秘密指定は、かなり厳格な管理を行うこととセットである。セットにしなければ意味がない。これは、国民に知らせないという問題だけではなくて、国民から預かる秘匿性の高い情報である、ということ。管理は厳格に、いい加減にはさせないというのが施行運用基準だ」と述べた。

 その結果どうなるか。「ルール手順をきちんと踏むことになるので、情報が使いにくくなる。ひとつの役所の中でも情報が共有化しにくくなり、仕事の効率を考えると、よくない環境になる。この法律の基本的な枠組みを作った時は、『秘密が増えれば増えるほど、仕事がやりやすくなる』と思った人もいるかもしれない。しかし、秘匿性の高い情報を管理するために、しっかりルールを守ることを委員会で提案し、他の委員たちも賛同している」と話した。

自民党は、今頃になって議員の処罰を問題視

 また、清水氏は「自民党は、秘密保護法に反対だと感じている」と言う。「自民の総務会で、野田聖子総務会長は『議員の身分に関わる重要なことだという認識ができた。問題がないように詰めていきたい』と述べた。しかし、『問題がないように詰めていきたい』ではダメ」と断じて、次のように続けた。

 「情報を漏らした議員は懲罰、処罰の対象になる法律を通してしまったのだから、『問題がない』とはできない。これは法案審議の時に、すでに出ている論点で、『これが嫌なら秘密保護法を廃止しろ』となる。少なくとも、部分改正が必要。仮に部分改正ができるのならば、あっちもこっちもやってくれという話になるので、自滅していく法律だと思っている。刑罰という点については、議員は与野党問わず、問題意識を強く持っている」。

 最後に、秘密保護法を考える上での視点について、清水氏は「行政の効率化、情報の共有化による効率的利用も必要である。情報管理ルールの共通化。公文書管理法の見直し。情報公開は積極化し、特定秘密は限定する。国会による監視、独立行政機関による監視。このようなポイントで、自分はどこに関わっていけるかを、役人、国会議員、マスコミ、国民が考えるべきではないか。それぞれがうまく機能すれば、『国民にこんな重大な問題を隠していたのか』という問題が起こりにくい環境は作れる」と語った。

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