【IWJブログ・特別寄稿】京都府京丹後市経ヶ岬で計画が進むXバンドレーダー配備問題~懸念される「戦争リスク」と米軍・防衛省の思惑(IWJ京都 中継市民・北野ゆり) 2014.5.26

記事公開日:2014.5.26取材地: テキスト
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(IWJウィークリー編集部、IWJ京都・北野ゆり)

特集 Xバンドレーダー|特集 集団的自衛権

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 安倍総理は5月15日、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を提言する「安保法制懇」(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)の報告を受けて記者会見し、公明党との与党協議を加速させ、閣議決定による憲法解釈の変更に向けた動きを加速させることを表明した。

 集団的自衛権の行使容認によって日本が「戦争の出来る国」へと作りかえられた時、戦争の前線基地となる可能性があるのが、京都府京丹後市の経ヶ岬だ。この経ヶ岬にある航空自衛隊分屯基地に、米軍のXバンドレーダーを建設するという計画が持ち上がっているのである。

 「Xバンドレーダー」とは、中国や北朝鮮などからの弾道ミサイルを想定し、これを探知、追尾するための高性能レーダーのこと。2013年10月3日の「2プラス2」で、日米両政府は、米軍のXバンドレーダーを京都府京丹後市の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に配備することで合意。そして12月12日、日米両政府は、Xバンドレーダー用地として、経ヶ岬分屯基地の一部と、隣接する民有地を米軍側に提供することで合意した。

 しかし、Xバンドレーダーは、なぜこの場所に設置されなければならないのか。米軍と防衛省の思惑、そして地元住民の反応は――。経ヶ岬現地で取材にあたった、IWJ京都中継市民の北野ゆりさんのレポートをお届けする。

突如ふって湧いた、Xバンドレーダー建設計画

 5月15日、岩国市の米軍愛宕山住宅工事が着工されました。米軍から防衛省へ仮設工事の着手と連絡が入ったのは、なんと前日だったというのです。

  • 読売新聞 5月16日米軍住宅造成始まる 岩国・愛宕山(当該ページなし)

 防衛省から5月着工と説明された、京丹後市の経ヶ岬米軍Xバンドレーダー建設も、まさに明日にも始まってもおかしくない状況下にあります。

 2013年12月15日、私は京都市内から車で3時間以上かかる経ヶ岬へ向かい、米軍のXバンドレーダー建設に関する取材に入りました。

 ここは、いまや、24時間営業のコンビニも、ファストフードのチェーン店さえ一軒もない地域です。いわば、市場経済で回らない辺境で、過疎化の進む町が、地域振興の名の下に交付金という札束で頬を叩かれて、基地や原発を受け入れさせられる、そういった町の一つだと思いました。

 丹後半島から見る海に沈む夕陽はとても美しい。私たちは、知らず知らずのうちに、こういう犠牲を地方へ強いている。私たち自身が自らの首を絞め、こうした日本の原風景を失っているのではないか。ただものを言わずに、その美しい姿で夕陽が訴えかけるようでした。

私が生まれ育ち、今も家族と暮らしている京都に、米軍のXバンドレーダー基地建設という話が防衛省によってもたらされたのは、昨年2013年の2月末のことです。

 これは、2月22日に行われた日米首脳会談で、米軍車力通信所(青森県つがる市)に次いで2番目となる米軍の弾道ミサイル探知Xバンドレーダー(TPY-2レーダー)を配備する方針で一致をみたことを受けたものです。

 京丹後市長も、京都府知事も、米軍の施設を受入れるような選択は、住民の安全安心を考えても、観光都市としての京都への影響を考えても、まずありえないだろう、そう考えていました。

 ところが、半年も経たない2013年9月19日、中山泰京丹後市長と山田啓二京都府知事は、それぞれ記者会見と議会答弁において、相次いでTPY-2レーダー追加配備に協力する旨の表明を行いました。

 この事態を受けて、12月に京都府下の市民グループの呼び掛けで、京丹後市役所を取り囲む「京丹後市・経ヶ岬に米軍基地はいりません平和の叫び&人間のくさり」が企画されました。

過剰なまでの警戒態勢

 2013年12月15日、現地行動当日の朝、私はIWJ中継市民スタッフとして、京都市内から集会参加者用にチャーターされたバスに同乗し、京丹後市経ヶ岬に向いました。

 みぞれ混じりの吹きすさぶ風の中、米軍Xバンドレーダー建設予定地に隣接する清涼山九品寺(せいりょうざんくほんじ)参道前で私たちのバスを迎えたのは、京都市内から動員された100人を超す京都府警と機動隊の過剰なまでの警戒態勢でした。

▲穴文殊参道前に並ぶ警備隊

 九品寺の檀家総代という方が警備の警察官をおしわけて出てこられて、「今日はどなたも参拝は適いません。お帰り下さい」の一点張り。バスの前面に掲げられた「穴文珠見学ツアー」の標識も空しく、文字通りの門前払いになりました。

 参加者からは、「バスで入る市民グループなのに、どれだけ過激なグループかと思われたのか」という声が上がりましたが、参道前にずらっと並ぶ警察関係者の一団には、ただ驚くばかりでした。

 Xバンドレーダー建設予定地である海岸段丘の突端にある清涼山九品寺は、境内の地下に深い洞穴があることにちなんで、「穴文殊」という名前で親しまれています。かつて経ヶ岬の岩窟の中にあったという本尊の文殊菩薩は、1609年に現在の場所に移されたものだそうです。

 経ヶ岬という地名は、日本海の荒波が半島の岸壁に自然の造形を刻み、その幾重にも曲線を描いた様相が、仏門の教典に通じるところがあるとして命名されたという説があるそうです。

報じられない米軍基地建設計画

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  1. たれ より:

    中共を攻撃する弾道ミサイル基地をこさえるとかいう話ならともかく、向こうが弾道ミサイルを撃って来るのを探知するレーダーを非難してる時点で、どこの北京様からご指示を頂いてやってる反対なのかが丸わかりなんだよねえ

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