専門家らが警告「これはファシズムへの道だ」 ――大阪駅ビルで一般人を対象に顔認証実験開始!? ジョージ・オーウェルの予見した社会がすぐそこに! 2014.3.5

記事公開日:2014.3.5取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 ジョージ・オーウェル『1984』で描かれた「オセアニア」のような監視国家も、もはや小説の中の話だとは言い切れないかもしれない。

 90台の監視カメラで撮影し、個々の顔や歩行動作の特徴をデータ化して登録することで、無数の通行人の中から特定の個人を自動的に追跡する実験が、JR大阪駅の駅ビル「大阪ステーションシティ」で今年4月から始まる。

 顔認証技術の精度を確かめるための実験で、データは個人が識別できないよう処理したうえで、使途未定のまま、JR西日本に提供されることになっている。この実験の中止を求める専門家らは3月5日、東京八重洲で記者会見し、この問題がもつ危険性について説明した。

■ハイライト

  • 場所 東京八重洲ホール(東京都中央区)
  • 出席 伊藤成彦氏、田島泰彦氏、村井敏邦氏(いずれも共同代表)

「どう考えても、憲法上の肖像権やプライバシーの侵害にあたる」

 会見をしたのは、共通番号制や共謀罪などに反対する「監視社会を拒否する会」。同会の共同代表の一人、上智大学教授で憲法学者の田島泰彦氏は、「監視カメラは、日常的な当たり前のもののように思われているかもしれないが、我々の顔や身体は、誰でも勝手に映していいようにはなっていない」と説明する。

 警察官によるデモの写真撮影の違法性、合憲性を問題とした「京都府学連事件」で、最高裁判決(1969年)は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」と明示した。結果的に警察官の写真撮影は違憲、違法ではないと判断されたが、肖像権を初めて裁判所が認めた事例だとされている。

 田島氏は、「公共の場所で通行人を撮ること事態が問題だが、さらに、どういう人か、ミニデータベースを作り、追跡する。これはどう考えても、憲法上の肖像権やプライバシーの侵害にあたる。自由権の深刻な危機で、最高裁が想定したよりも、二重・三重に重大な事態が起きようとしているのではないか」と話した。

ジョージ・オーウェルの予見した社会がすぐそこに

 同じく共同代表で、大阪学院大学法科大学院教授の村井敏邦氏は、「無差別に一般の人が映され、単に顔写真を撮られるだけでなく、マスクをしようが化粧しようが、顔を隠しても人物を特定し、かつ、追跡できるシステムとなっている」と述べ、「刑事法研究者の観点から言うと、許されることではない」と指摘。

 さらに、「秘密保護法と国家安全保障局が合体することで、日本はまさに監視社会に陥る。ジョージ・オーウェルの『1984』は、こうした社会を予見し、危険性を指摘しているが、人々を監視することによって、その人の思想からなにからをチェックできるシステムができようとしている」と危機感をあらわにした。

これはファシズムまで続く道か

 知る権利を侵害する危険性が指摘されている「特定秘密保護法」でも、特定秘密を扱う者と、その家族などに対して、「適性評価制度」と称した身辺調査が行われ、戸籍や通院、借金の有無などが情報収集されることになっている。家族に対しては、調査していることも通知されない。

 また、政府が上程を検討しているという「共謀罪法」は、2人以上で話し合い、犯罪の決行を合意した時点で犯罪が成立するというものだ。共謀段階で摘発することは容易ではなく、国家による広範な「盗聴」が行われるのではないかとの懸念がある。

 共同代表の一人、中央大学名誉教授の伊藤成彦氏は、こうした法案が「戦争」に結びつくと訴え、安倍政権の姿勢を批判。

 「安倍政権は、憲法も法律も無視したことを平気で行っている。それでも、安倍首相は野放しになっている。憲法を無視して、人権を無視する首相は逮捕され、裁判にかけるべきだ。明らかにこれは初期ファシズム。そして、武装したがっている。武器を持てば中期、後期のファシズム。これは、そうしたことと地続きの問題で、危険な状況だ」

 同会は5日付けで、独立行政法人・情報通信研究機構に、JR大阪駅における顔認証システム実験を中止するよう要請書を送付し、JR西日本、大阪ターミナルビル株式会社へは、実験への協力を中止するよう求めた。

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