細川護熙・宇都宮健児両候補の統一を要請してきた「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」は2月6日、日本記者クラブで会見を開き、両陣営から届いた回答を公表した。細川・宇都宮候補ともに、統一への協議要請には応じなかった。
(IWJ・ぎぎまき)
特集 2014東京都知事選
細川護熙・宇都宮健児両候補の統一を要請してきた「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」は2月6日、日本記者クラブで会見を開き、両陣営から届いた回答を公表した。細川・宇都宮候補ともに、統一への協議要請には応じなかった。
記事目次
■ハイライト
「若い方にはオーバーに聞こえるでしょうけど、迫り来る戦争への危機感で一杯です。老人たちが焦ってると思われるかもしれない。戦争が始まるという恐怖心があるから、瀬戸内寂聴さんが京都から来て演説したり、澤地久枝さんや私たち老人が走り回っている。戦争への道を防ぎたい」
候補統一への動きに期待を寄せた有権者がいる一方で、事実上、宇都宮氏の辞退を求めるような同会の行為に、非難の声も集まっていたのかもしれない。両候補からの回答を報告する前に、「呼びかける会」の中心メンバーであるジャーナリストの鎌田慧氏はこのように話し、一本化に動いた背景にある切実な想いを語った。
次に、ジャーナリズム研究者の桂敬一氏が両陣営から届いた回答を読み上げた。
「重要な争点で共通の政策を掲げる候補者が2人いることによって『共倒れ』が生じ、全く異なる主張をする候補者を当選させてしまうことは懸命ではないという主張は、傾聴すべきものがある」
細川候補は、「呼びかける会」の申し入れに一定の理解を示したが、宇都宮候補との政策の優先順位の相違や、統一に向けてのプロセスが曖昧であることを理由に、要請には応じられないと回答。また、「最終盤での、当選を第一としたご提案は、御厚情から出たものとは言えいかがなものか」と、苦言とも取れる一文も付け加えている。
宇都宮氏の選対本部である「希望のまち東京をつくる会」は、「脱原発政策実現にかける熱意、安倍政権の危険な暴走に対する深い懸念について、心から賛同する」と、細川氏同様、申し入れの趣旨に理解を示している。
しかし、期日前投票を済ませた有権者や、選挙活動を手伝ってきたボランティアの想いを裏切ることはできないと、今回の申し入れには応じなかった。さらに、細川候補との政策の不一致を挙げ、「貧困・雇用・福祉、首都圏直下型地震対策など、原発以外の政策の充実を待ち望んでいる都民に背を向けることはできない」と、宇都宮氏の決意を代弁し、統一の要請を退けた。
「両候補からの回答は非常に残念。ゴアがブッシュジュニアと闘った時にラルフ・ネーダー氏が出てきて、平和や人権、環境保全を求める票が割れたことによって、ゴアが僅差で負けた(ブッシュが勝ち戦争が始まった)。ああいう教訓が生きていない」
鎌田氏とともに、一本化に奔走してきた浜岡原発差止訴訟弁護団長の河合弘之弁護士が、不満を口にした。
「保守政治家から脱原発を大声で主張する人が出てきたのは、脱原発運動にとって歴史的な転換点。天から降ってきた千載一遇のチャンスをいかせなかった。そういう大局観が足りなかったから、一本化の迷走を招いたと思う」
批判混じりの悔しさをあらわにした河合弁護士同様、ピースボート共同代表の吉岡達也氏も強い口調でこう話した。
「脱原発候補2人の得票数を足せば、舛添候補の得票数を超える。それは脱原発運動の勝利ではないか、という声も聞く。首を傾げてしまう。そのことによって、実効的な再稼働阻止はできない。
舛添候補が勝てば再稼働を誘発する。これが厳然としたリアリティだ。事故はまた起こり得る、それが事故の教訓です。地震が起きないと言える人が一人でもいますか。再稼働を阻止する政治家を選ぶ必要がある。やれる可能性を持っている人。立派なことを言っている人ではない」
吉岡氏は、「ユーゴスラビア紛争は誰一人として予想していないかった」と、自身の現地での経験に基いて、「戦争は突然起こり得る」と声を荒げた。吉岡氏は、残りの選挙期間は、安倍政権の暴走を止めることができる候補者に、票を集中させていきたいと訴えた。
2月3日に開いた同会の記者会見の後、要請文を手に両陣営を訪問した桂氏は、両陣営の対応について「儀礼は尽くされたと思う」と評価しつつも、「舛添候補を勝たせることで招く状況について、両候補者は文書の中で一言も触れていない。その重要性をちゃんと考えていないのでは」と苛立ちを見せた。
最後に、鎌田氏が念を押すように、候補統一の趣旨を説明した。
「原発も停まっている。再稼働もなかなかできていない。民主党が『2030年原発ゼロ』と言い、菅さんも、細川さん、小泉さんが脱原発を口にする。世論が動いてきている。それが選挙の結果にならないというこの無念さ。もう一度、両方合わせて勝ちたい、原発を止めたいと思ってきた。
ここにいる人たちは共通して、今の日本が置かれている歴史的状況を切実に考えているからこそ、恥をしのんで記者会見を開いている」
今後、「呼びかける会」としてどう行動していくかは未定だというが、残りの選挙期間中は個々がそれぞれの信条に沿った投票行動を呼びかけていくという。
すでに選挙戦も終盤にさしかかっている。選挙期間中の両候補による協議は実現しなかったが、投開票日後、細川、宇都宮両氏は、懇談の場を設けることで合意したことを、それぞれの回答の中で明らかにしている。
「細川・宇都宮両陣営に加わった脱原発を願う市民が、これらの(一本化をめぐる)論争で生じたかもしれないわだかまりを解消し、強固な結束により、原発事故の被害者の支援と全国の原発の再稼働に反対し、原発ゼロを実現する取り組みをともに続けていくことを心より希望するものです。そのような活動の一環として、この選挙の終了後に、選挙結果にかかわらず、両候補の胸襟を開いての懇談の場を設けることも両選対の間で合意されたことを付け加えます」
回答の文末にこう綴っているのは、「希望のまち東京をつくる会」だが、細川氏も同様、文書の中で、「選挙後、宇都宮候補および支持者のみなさまと協力の用意があることを申し加えさえていただきい」という一文を添えている。
あらゆる “Power” に、言論を以って対峙する、その人物こそが、真の言論人である。
今回の選挙戦は、細川・宇都宮両候補とも、信念の言葉が発せられた、素晴らしいものだった。
政治とは、言葉である。これを再認識した。
そのうえで、私は、河合弘之弁護士の発言(57:00~)に、強く賛同した。
言論人が戦う対象は、“Power” である。