福島県民18歳以下、甲状腺がん「確定」12人に、「がんの疑い」も15人に増加 ~第11回福島県「県民健康管理調査」検討委員会 2013.6.5

記事公開日:2013.6.5取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月5日(水)10時15分より、福島県福島市のコラッセふくしまにて、第11回福島県「県民健康管理調査」検討委員会が開催された。今回、「検討委員を入れ替え、より透明性を図った」と県側は説明する。基本調査、甲状腺調査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査などの報告があった。子どもの甲状腺検査について、福島県立医科大学の鈴木眞一教授から「平成23年度は、悪性ないし悪性の疑いは12例。平成24年度は16例あった」と報告があり、記者会見ではその件に質問が集中した。また、こころの健康度では、避難者の運動不足や肥満の危険、飲酒の増加なども報告がされた。

■全編動画

  • 議事 (1) 基本調査について (2) 詳細調査について 1.甲状腺検査 2.健康診査 3.こころの健康度・生活習慣に関する調査 4.妊産婦に関する調査 (3) その他
  • 「県民健康管理調査」検討委員会委員
    明石真言氏(放射線医学総合研究所理事)、井坂晶氏(双葉郡医師会顧問)、稲葉俊哉氏(広島大学原爆放射線医科学研究所長・教授)、春日文子氏(日本学術会議副会長)、児玉和紀氏(放射線影響研究所主席研究員)、佐藤敏信氏(環境省 環境保健部長)、清水一雄氏(日本医科大学大学院教授)、清水修二氏(福島大教授)、髙村昇氏(長崎大学教授)、津金昌一郎氏(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター長)、床次眞司氏(弘前大学教授)、成井香苗氏(福島県臨床心理士会)、星北斗氏(福島県医師会常任理事)、室月淳氏(宮城県立こども病院産科部長)、前原和平氏(福島県病院協会会長)
  • オブザーバー 桐生康生氏(環境省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官)、野村知司氏(厚生労働省 厚生科学課 健康危機管理対策室長)
  • 日時 2013年6月5日(水)10:15~
  • 場所 コラッセふくしま(福島県福島市)
  • 主催 福島県(詳細

 冒頭で、開会の挨拶、委員の紹介、座長の選出を行った。福島県医師会常任理事の星北斗氏が議事司会役を務め、清水修二氏(福島大教授)が座長に選任され、「自分は唯一、文化系の人間で、客観性を保つためにここにいると思う。公正で透明性を尊重したい」と挨拶をした。

 まず、県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について報告があった。「問診票の回答状況は、平成25年3月31日、2,056,994人のうち481,423人、回答率23.4%だった」。また報告書を参照に、地域別、一時滞在者の回答数、線量推計作業・結果通知の現状を説明した。「411,922人の放射線量推計結果では、県北・県中地区では90%以上が2ミリシーベルト未満、県南地区では約91%、南会津地区では99%以上が1ミリシーベルト未満、相双地区は約78%、いわき地区でも99%以上が1ミリシーベルト未満の被曝であった。結果、これまでの疫学調査により、100ミリシーベルト以下での明らかな健康への影響は確認されていないことから、4ヶ月間の積算実行線量推計値ではあるが、放射線による健康影響があるとは考えにくい。また、回答率を高める方法、配布などの工夫も検討している」と説明した。

 次に「甲状腺検査の実施状況について」の報告が、福島県立医大の鈴木眞一教授から行われた。「平成23年度、国が指定した避難区域等の13市町村の対象者47,766人中39,193人が受診、受診率は82.1%だった。翌24年度は133,787人、81.9%が受診した。25年度は158,783人を予定している」。また、県外避難者の受診数も報告した。一次検査結果概要だが、「平成23年度の検査結果が確定した40,302人のうち、A2判定(5ミリ以下の結節や20ミリ以下ののう胞がある者)は14.427人(35.8%)。B判定(5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上ののう胞を認めた者)が205人(0.5%)、C判定(直ちに二次検査を要する者)は0人だった。また、平成24年度は134,074人のうち、A2判定は89,746人(44.6%)、B判定は934人(0.7%)、C判定1人(0.001%)だった(術後回復)」。続けて、二次検査の検査状況や検査数の概要を説明し、結果概要を述べた。「平成23年度は、悪性ないし悪性の疑いは12例(8名手術、良性結節1例、乳頭ガン7例)、男性5例、女性7例、平均年齢17.3歳(震災当時11~17歳)だった。平成24年度は、悪性、またその疑い16例(手術5例、乳頭ガン5例)、男性9例、女性7例、平均年齢16.1歳(震災当時9~18歳)だった」と報告した。

 福島県立医大の大平哲也教授による健康診査の報告に移った。「健康診査は、健康管理を促進するため、避難区域13市町村区の住民を対象にし、生活習慣病の予防や早期発見、早期治療を目的に行っている。実施状況は、平成23年度、対象者210,189人のうち受診率35.4%(74,333人)、平成24年度は、28%だった。平成24年度の受診率の低下があり、平成25年度は利便性をはかり、受診率を向上させるため、受診奨励(リマインダー)の実施、住民説明会の開催、パンフレットの製作と配布などを考えている。また、県外避難者への対応や、震災前後の検診結果を比較する、経年データを用いた検診結果の解析も、現在、飯舘村で試験的に実施している」と説明し、「既存健診対象外の県民に対する健康診査の実施状況」について、補足説明をした。

 次に「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の報告が続いた。まず、平成23年度の調査結果について、「避難区域の210,189人を対象に実施。子どもでは6割強の回答率で、データから、全体的に睡眠時間の減少、肥満や生活習慣病の発症が懸念された。また、体育の授業以外、ほとんど運動をしていない子どもが過半数を占めた。一般(回答率40.7% 平成7年4/1以前生まれ)では、睡眠への不満、運動不足、トラウマ反応、飲酒者の増加が見られた」と説明し、平成24年度の調査報告に移った。「回答率は30.8%だった。回答内容から支援が必要とされる住民に対し、電話、文書、市町村との連携などによる支援を行っている」と説明した。

 「妊産婦に関する調査」の実施状況については、福島県立医大の藤森敬也教授が説明した。「妊産婦のからだやこころの健康度を把握し、不安の軽減や必要なケアを提供するとともに、現状や意見・要望などを的確に把握し、福島県内の産科・周産期医療の充実につなげていく。そして、実施状況からみた電話支援の状況は、平成23年度は、回答数9,316件(回答率58.2%)、要支援者1,401件(要支援者率15%)。平成24年度は6,794件(46.9%)で、要支援者1,041件(要支援者率15.3%)だった。また、自由記載欄の内容でもっとも多かったのは、平成23、24年度ともに、胎児・子どもへの放射線の影響に対する不安など。2番目は、放射線についての情報発信や、調査結果の公表について、高い関心を示した。また、平成23年度の県内での早産率は、高くなかった。先天奇形・異常の出産率は2.7%で、全国平均3~5%の範囲内だ。一番多かったのは心臓奇形で0.86%だが、自然発生率約1%と変わらなかった」などと説明した。

 記者会見に移ったが、参加委員のスケジュールのため、質疑応答の時間を短縮したと、県側が一方的に通告。それに記者たちが不満を表し、一時、会場は騒然となった。星座長が場をとりまとめ、会見が始まった。記者からの質問は、甲状腺検査の件に集中し、放射線の影響の是非が繰り返し問われ、鈴木教授以下、検討委員たちは答弁に追われた。おしどりマコ氏が「妊産婦の調査で、事故前の平成23年度早産率・奇形の発生率などを、全国平均と比較しているが、事故前(平成22年度以前)の福島県のデータと比較はしたのか」と質問した。藤森教授が「比較はしていない。県に統計データがない。平均値は、日本産婦人科医会の数値と比較した」と答えた。

 また、ある記者から「今回、委員の交代や、調査内容の開示もなされて透明性が高まったと思うが、昨年、秘密会が発覚したあと、県は、弁護士会と報道機関からも(委員会への)参加を要請する、と言っていた。ところが、弁護士会は『委員就任への要請はなかった』と言っている。もうひとつの疑問は、県事務局の職員は、秘密会を仕切っていたにもかかわらず慰留にしていることだ。職員としては、どう責任を感じているのか、明らかにしてほしい」と質問があったが、退席時間が迫る委員への質問を優先させた。質問は始終、甲状腺検査に集中した。後半、検討委員はどんどん退席し、清水氏と県事務局の佐々恵一氏の2名が質問に答えた。「国連人権理事会のアナンド・グローバー氏の勧告について、どう捉えているのか」という質問、そして、回答を保留していた、弁護士会への要請の是非、職員の責任については、佐々氏が回答した。

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「福島県民18歳以下、甲状腺がん「確定」12人に、「がんの疑い」も15人に増加 ~第11回福島県「県民健康管理調査」検討委員会」への3件のフィードバック

  1. johnson より:

    切除は部分切除だったのか全摘だったのか 訊いてほしかった。
    低年齢の方に出ていないから、放射能は関係ないというが、そもそも5歳以下のこどもののどに針を刺すのは、本人が怖くて暴れて大変だし、かといって麻酔をかけてまでやろうとも思わないだろうから、積極的に細胞診まで行おうとは、あえてしていないのではなかろうか??

  2. johnson より:

    「現時点では・・」という言い回しが多いのが気になる。 裏を返せば・・・・・・・・・

  3. johnson より:

    東日本では、特にホットスポットではない市町村でも、事故当時に比べて確実に0歳児の人口は減少を続けている所が多く、回復する気配はない。このように 放射能による健康被害があるならば、日に日に確実に悪い数字が露わになり、安全論者が何と言おうと メディアが黙殺をどれだけ続けようと 気にしている人にとっては懸念から確信へと思いを強める現実を見据えることとなっていくのだろう。

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