2013年2月13日（水）10時30分から、福島県福島市の杉妻会館で「第10回福島県『県民健康管理調査』検討委員会」が行われた。18歳以下の福島県民を対象にした、平成23年度の甲状腺検査から、10名の悪性もしくは悪性がんの疑いがある人が判明したこと、そのうちの3名は、がんが確定したことが報告された。

• 日時 2013年2月13日（水）10：30〜
• 場所 杉妻会館（福島県福島市）

　オブザーバーの大津留晶氏（福島県立医科大学医学部教授）から、県民健康管理調査の基本調査の実施状況について、報告があった。大津留氏は、問診票の回答状況について、「平成25年1月31日現在、全県ベースでは対象者205万6994名のうち、47万7121名から回答が寄せられ、回答率は23.2％であった。先行調査地区（川俣町山木屋地区、浪江町、飯舘村）では、回答率が半数を超える56.7％に達しているのに対し、先行地区を除く全県民調査においては、22.7％に留まっている」と述べた。

　続けて、「実効線量推計結果の状況は、累計39万4369名の推計を行い、そのうち放射線業務従事経験者を除く38万6572名の推計結果は、県北・県中地区では90％以上の人が2ミリシーベルト未満、県南地区では約91％の方が、会津・南会津地区では99％以上の方が1ミリシーベルト未満となり、相双地区は約78％の方が、いわき地区でも99％以上の方が1ミリシーベルト未満となっている」と説明した。実効線量推計結果の評価について、大津留氏は「これまでと同様の傾向にある。これまでの疫学調査により、100ミリシーベルト以下での明らかな健康への影響は確認されていないことから、４ヶ月間の積算実効線量推計値ではあるが、放射線による健康影響があるとは考えにくい」とした。

　次に、オブザーバーの鈴木眞一氏（福島県立医科大学医学部教授）より、甲状腺検査の検査概要が報告された。鈴木氏は「平成23年度、24年度で合計17万5848名の対象者のうち、14万9660名が受診し、受診率は85.1％であった。判定結果は、平成25年1月21日発送分までを集計し、総数13万3089名のうち、A2判定（5.0ミリ以下の結節や20.0ミリ以下の嚢胞を認めたもの）が5万4857名で、全体の41％に達した。また、B判定（5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上の嚢胞を認めたもの）も734名にのぼった。さらに、平成24年度には、C判定（甲状腺の状態などから判断して、ただちに2次検査を要する）に該当する人も1名、報告されている」と述べた。

　鈴木氏は、甲状腺検査（2次検査）の実施状況について、「平成23年度は186名の対象者に対して、162名に2次検査を実施した。2次検査修了者のうち76名に細胞診を実施し、その結果、10名が悪性もしくは悪性がんの疑いとなり、そのうち3名が、すでに手術などの診断により、甲状腺がんと確定した」と話した。また、「平成24年度は、現在までに56名に2次検査を実施し、今後、毎月30名に実施予定である。細胞診で悪性となった10名の居住地が、どこかの避難地域に偏っているということはないが、最終的にはきちんとした統計をとる。また、10名の平均年齢は15歳、対象となる腫瘍径は約15ミリ、男女差は、男性が3名、女性が7名である」と報告した。

　記者会見では、甲状腺検査の結果に質問が集中した。「甲状腺検査の結果は、外部被曝線量と、どの程度の相関があるのか」との質問に、鈴木氏は「今のところ、統計処理はしていない。データの突き合わせをしているところである」と回答した。「平成23年度に、がんの疑いが判明した10名の人について、外部被曝線量は出していないのか」と問われると、「個人的には聞いているが、統計学的にきちんとした捉え方をしていない。その人だけでなく、全員に同じようにしなければいけないので、これから統計処理していくことになる」と答えた。

　さらに、「甲状腺検査の結果は、市町村別には出ていないが、出さないとしたら、誰がどういう判断で出していないのか」と尋ねられると、鈴木氏は「出さないと決めているわけではない。B、C判定もあるので、それらには慎重な対応が必要である。今回は人数が少ないため、地域から個人が特定されると、本人に迷惑がかかると考えて配慮した。将来的に（市町村別のデータを）作るかどうかとは別問題である。市町村単位、線量単位での統計は、まとめなければいけないと思う」と回答した。