枝野官房長官会見  2011.3.18

記事公開日:2011.3.18取材地: テキスト動画
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東日本大震災発生から1週間が経過した2011年3月18日、枝野官房長官の会見が行われた。内閣法を改正しての大臣増員、福島原発の状況に対する処置、被災地への物資供給、避難勧告エリアの認識が海外と異なることについて、といった質問が記者からなされた。

2011年3月18日午後(16:48~) 枝野官房長官会見

◆ 会見内容
* 下記より引用。
「官房長官記者発表 ~(16:48~)地震発生から一週間を振り返って~」、平成23年3月18日(金)午後、首相官邸ホームページ:http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201103/18_p.html

 記者の皆さんにはお待たせをいたしました。未曾有の大地震、大津波から1週間が経過をいたしました。
 この震災で亡くなられた、たくさんの皆さんに改めて御冥福をお祈りを申し上げるとともに、被災をされた皆さんにお見舞いを申し上げます。
 今なお、多くの皆さんが食べ物、あるいは暖をとる手段、いろいろなものが不足をしている中で、避難生活に耐えておられることに、政府として本当に忸怩たる思いでございます。
 全力を挙げて、こうした皆さんの状況を少しでも改善をしていくために、更に全力を挙げてまいりたいということを、地震発生から1週間のこの時に、改めて決意をいたしているところでございます。
 私からは、冒頭、以上でございます。

◆ 質疑応答
Q「先ほどの政府与野党会議(*)では、内閣法を改正して大臣を増員するという提案が民主党側からなされた(*)。今、この事態において大臣を増やす必要性があるのか、今の体制で乗り切るのは不可能なのか」

  • 政府与野党会議:各党・政府震災対策合同会議のこと。
    「『各党・政府震災対策合同会議(仮称)』設置決める」、民主党、2011年3月15日:
    http://www.dpj.or.jp/news/?num=19879
  • 「岡田幹事長が震災対応で大臣3人増員を各党に提案」、民主党、2011年3月18日:http://www.dpj.or.jp/news/?num=19897

A「内閣の立場は、法律に基づいて内閣総理大臣が選ばれて、その法律に基づいて行政業務を責任を持って遂行するということである。現在の内閣法では17名の国務大臣ということが定められており(*)、その定められた定数の中で全力を挙げるというのが責任だと思っている。この大災害という事態を踏まえて、国会で異なった決定をしていただけるのであれば、そのことをその時点で有効に活かさせていただきたいと思っている」

  • 内閣法第2条:内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣をもつて、これを組織する。
    2 前項の国務大臣の数は、十四人以内とする。ただし、特別に必要がある場合においては、三人を限度にその数を増加し、十七人以内とすることができる。
    内閣法:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO005.html

Q「法律の下にというのは分かるが、具体的に地震対策、原発対策、諸々対応する中で、閣僚の数が足りない、対応できないという認識があるのかどうか」

A「これは、人事権が内閣総理大臣の専権事項なので、私の立場からどこまで申し上げていいのかはなかなか難しい。ただ、ここまでの一週間は、あらゆる意味での危機対応ということで、国会の方も審議なくご理解をいただいてきているし、この震災、原子力のことを含めて、それ以外のことはほとんど待っていただいている状況である。
ただ、この間、震災対策の陣頭指揮を官邸の危機管理センターで執ってきていただいている松本防災担当大臣、この間はそれに専念してきていただいているが、環境大臣を兼務しておられるので、環境大臣の業務はなかなか難しいだろうと率直に思っている。私も官房長官で様々な役割があり、沖縄の問題、北方対策の問題も大変重要だが、この危機対応を含めて両方に対応していくことは、果たして中期的に可能かどうかということはあろうかと思う。法律に基づいて仕事をするわけであるから、いかなる状況でも万全を期して全力であたるということだと思っている」

Q「今日の(各党・政府震災対策合同)会議では、民主党の岡田幹事長から、増員について3人という提示があったが、政府としては、仮に3人増やす場合は何について3人増やしたいのか」

A「繰り返し申し上げるが、具体的な閣僚人事は内閣総理大臣の専権事項であるので、私の立場で具体的に申し上げることではない」

Q「福島第一原発について。今日、東京消防庁のハイパーレスキュー隊が入る(*)など、放水、電源の回復、延いては冷却装置の復旧など、現時点で網羅的に確認している情報について教えていただけるか」

A「電源を外から引いてくる作業については進んでいるという報告を受けているが、それによってどこかの部分が外部電力によって復旧したという段階には至っていない。放水を一旦行って、今の段階では電力の供給作業を行っているという報告を受けている。
放水については既にご承知の方も多いと思うが、本日の午後、3号炉に対する注水を行った。今、メンバーを入れ替えて、引き続き3号炉に対して、さらに今日中に継続できるかどうかという状況だと聞いている」

Q「東京消防庁の方は」

A「具体的なチームについては、消防庁、自衛隊、そして米国から提供いただいている放水車、これは東電の職員なりが運用しているようだが、これらを順次駆使してやっているという報告を受けている」

Q「3号炉の放水について、燃料プールにどの程度の水が入っているのか」

A「現時点で確定的なことを申し上げる段階ではないと思っている。ただ、水蒸気等が放水に当たって出ているということから、プールの方に注水がいっているのは、ほぼ間違いないだろうという報告を受けている」

Q「気象庁では東海大地震の恐れがあるのではないかと懸念している。様々なところでこうした懸念が払拭されない中、浜岡原発が停止しないのは何故かという声が上がっている。官邸にも福島みずほ社会党党首が緊急停止の申し入れをした(*)筈だが、こうした声に対して政府としてどう答えるのか。原発の賛否は置いておいて、緊急措置として緊急停止を考えることはないのか」

A「福島(社会党)党首を始め、そういったご意見があることは承っている。あらゆることについて、こうした危機的な状況であるので、この件に限らず、政府はあらゆる問題について、一定の前提をおかずに様々な声を受け止めているという段階である」

Q「計画停電について。本日、東電のこの問題の技術方に直接聞いたところ、電力需要量の数字は東電側から政府に提出しているという答えが返ってきた。実際のところ、どうなのか」

A「それぞれ個別の日々・時間帯によって、電力需要の見通しについては変化するが、それぞれについて一定の報告は受けている」

Q「東電の数字を元にしているということか。電力需要量について。計画であろうが計画でなかろうが」

A「見込みの需要量と実際に使われた電力量それぞれについて、その都度ではないが、報告を受けている」

Q「政府オリジナルの数字は持っていないということか」

A「電力消費量は電力会社が供給しているものだから、その消費量を把握できているのは当然、東京電力である」

Q「『需要が足りないぞ』と言われたら、東電の言いなりか」

A「実際の需要見通しだけではなくて、実際に供給された電力量、消費された電力量についての報告も受けている」

Q「ロシア非常事態省のショイグ大臣(*)が、ロシアのテレビで自ら『日本に専門家救援部隊を派遣する』と仰っているが、状況はご存知か。また、それにどう対応する予定か」

A「各国から様々な支援の申し出をいただいている。その中で特に原子力発電所関連については、米国に既に専門家を送っていただいており、専門家のレベルで、こちらの状況を踏まえて米国側で対応していただける、ご協力いただける内容などについては、ディスカッションをしていただいているところである。
それ以外の国についても、様々な申し出と、それによって何を提供していただけるのかということ、そしてこちら側で特に原発について必要とされている知識、情報、あるいは体制等についての専門的なレベルでのご判断・ご意見を踏まえて、一義的には米国以外とは外務省を窓口にお話いただいていると聞いている」

Q「現状では米国だけということか」

A「現状、原子力発電所のことについて、具体的に専門家を日本に送っていただいているのは米国。それから、今日、IAEA(国際原子力機関)(*)の日本人の事務総長が日本に来られたので(*)、そういう意味ではIAEAということだと思っている」

Q「枝野官房長官は寝ているか」

A「現地は非常に厳しい状態で、寒さに耐えて眠れないという方も少なからず居る状態である。あるいは、救援・救難活動に現場で努力していただいている自衛隊・警察・消防の皆さんを始め、医療関係の方にも不眠不休でやっていただいている。それだけではなく、様々な行政機関の皆さんも不眠不休の努力を続けていただいている。
私自身は、もちろん政治家の役割・責任は判断をすることだと思っており、その判断に悪影響を与えることは結果的に国民の皆さんにご迷惑をお掛けすることだと思っているので、その判断に悪影響を及ぼさない範囲で最大限やらせていただいているつもりである」

Q「不眠不休の枝野長官に申し上げ難いが、どうも官邸には情報がきちんと上がっていない、そして、誤情報を掴まされているのではないかという危惧がある。国民の不安にも繋がっている。また、海外メディア、海外の政府がいろんな形で情報を出しているが、どうも齟齬がある。
一つ、具体的におうかがいしたいのは、アメリカ始め、イギリス・フランスが現在、福島原発の80km圏外への避難を言っている(*)。日本政府は30km。この間の50kmをどう捉えればいいのかということで、地域の住民が非常に心配している。海外の政府が正しければ日本政府が変更するのか、日本政府が正しいなら海外に対してそういうデマを流すなと抗議されるのか、どちらなのか」

A「原子力発電所からの退避指示の内容について、幾つかの国の日本に居られる自国民に対する指示等の内容と、政府が発表している内容とは確かに異なっている。しかしこれは、これまで何度も申し上げてきているが、海外に居られる自国民保護という観点からは、一般的に求められている水準よりも、より保守的な水準で様々なことを指示するのが、それぞれの政府の当然の対応だと思っている。私が同じ立場、つまり、日本の国外で同種の事態が生じて、日本人の退避について様々な判断をするにあたっては、科学的・客観的に適切だと思われる数値を超えて、様々な指示をすることは当然、自国の政府の責任としてあり得ると思っている。
そうしたことの中で、日本政府としては、今、様々なお話があったが、今、私共が把握している専門家の意見を含めたデータの中で、適切と思われる退避に対する指示等を出させていただいている。そして、その数字の違いについては、アメリカ政府の方の中からも『日本政府の判断は適切である』という主旨のご発言も出ていると承っている(*)」

  • 「半径80キロ避難指示の『科学的根拠』が疑問-米原子力推進団体」、ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版、2011年 3月 18日:http://jp.wsj.com/World/node_202746

Q「今日、オバマ大統領は『80km圏外に出ろ』ということを発表した。ということは、オバマ大統領の言っていることが間違いということでよろしいか」

A「それは、我が国の責任ある立場として、実際に得られているデータ、情報、そして専門家の分析に基づいて、日本政府としては国民の皆さんに対して、適切な判断として今の指示をさせていただいている。しかし、他国のそれぞれの政府が、外国に居る自国民保護の観点から様々な判断に基づいて、それと異なることをなさることは、逆の場合に当然あると思っているので、あり得ることだと思っている」

Q「申し訳ないけど、最初、1週間前に3kmと枝野さんは言った。それから、10km、20km、そして30kmと増やしている。それが国際的に不信感を生む結果となっている。政治は結果責任だから、このような形で広げていったことは結果として間違えたと、今ここで仰って訂正してください」

A「私は、それぞれの事態の状況に応じて、その時点で必要とされる判断を専門家の皆さんの意見を踏まえて、政府として判断したものを伝えさせていただいている。この間、事態は変化してきている。それぞれの状況・現状を踏まえて、万が一、より事態が悪くなることも想定しながら、その時点で執り得る策を指示しているのであって、状況が一週間前と同じであるならば、それは一週間前の判断が間違っていたということだと思うが、今時点の様々なデータ、現地の状況から考えて、今想定される事態の中では今の水準で退避していただきたい、こういう指示をしている」

Q「先ほど、科学的・客観的なものを超えて海外は判断をしていると仰った。オバマ大統領の80km圏外への避難勧告の説明の中で、オバマ大統領は『米国民の安全を確保するため、慎重な評価と指針に基づいた決定』と説明している。オバマ大統領も、決して科学的・客観的なものを超えて判断しているのではないと思うが、どのように思われるか」

A「先ず前提として私が申し上げたのは、『それぞれの国に、それぞれのご判断があるということはあり得る』ということを申し上げた。そうしたことの中で、それぞれの国がどういう事情を判断要素に入れているのか、まさにそれぞれの主体的なご判断だと思っている。
私が皆さんに是非お伝えしたいのは、今の時点でしっかりと政府として把握をしている様々なデータと、現地について把握している様々な状況・情報と、そして専門家の皆さんのそれに対する分析に基づいて、国民の皆さんの健康に影響を及ぼさない、今の時点から当面の時間予想される事態の範囲内で、必要な措置はしっかりと判断をしてお示しをさせていただいている。それ以外の様々なご判断・ご意見があるのは当然のことで、逆にこうした広い退避は必要ないのではないかというご意見も、実は一部からはいただいている。
しかし、様々なデータと、しっかりとした、例えば原子力安全委員会(*)や原子力安全・保安院(*)の皆さんのご意見を踏まえて、そして国民の皆さんの安全をしっかりと守るという観点から政府として決定をした」

Q「ちょっと前の話で恐縮だが、12日の朝、菅総理が福島原発の方に出向かれた経緯、例えば東電からの要請があったとか、どういう形で決まったのか」

A「6日前のことで、その間、様々なことがあり、率直に申し上げて、詳細な、特に時系列的な段取りは、今この場で記憶を頼りに申し上げると正確でない恐れがあると思っている。基本的には、菅総理がこうした事態に対しては、現場の状況をしっかりと把握をすることが重要だということで、総理のご判断で行かれたことは間違いない」

Q「それは何時頃か」

A「まさに今、一週間、様々な事態があった中で、『何時頃と』お尋ねいただいても、記憶で申し上げると誤りがあるといけないので、それは申し上げられない」

Q「現状、毎日、長官からご発言があり、同時に各担当大臣がそれぞれ懸命に対応されているのは承知している。一方で、大震災が発生してから一週間経ち、日本の最大とも言える危機を克服していくために、全体的・包括的な計画、あるいは指針を総理から発表される予定などはあるか。また、原発への対応を含め、長官と総理との間で何か話されているか」

A「この間、まさに官房長官という役割は、一種、総理に代わって様々なことを発表させていただくものであると。もちろん、先ほどの人事の話のように、総理に代わっての立場ではお話申し上げられない種類のこともあるが、そういう立場で国民の皆さんにメッセージを発信させていただいている。
今、ご指摘いただいた話について、私も何らかの形で総理から国民の皆さんに、こういうことでやっていこう、ということを示す機会が必要だろうと思っている。
今日がちょうど一週間という一つの区切りなので、今日のようなタイミングがいいのか。それとも、原子力発電所の安全性を現状で踏み止まって良い方向に変えていく大事な時期であるということ、それから被災者の支援、こうしたことに全力で取り組まなければならない時期なので、どういうタイミングでどういうメッセージを発信するかについては、様々な事情を考慮しながら、今現時点でも検討しており、日々検討しながら適切なタイミングで示していきたいと思っている」

Q「地域の方が不安を募らせているのは、一体この事態がいつまで続くのかということだと思われる。福島第一原発で起きてる事態の収束、それから退避指示の解除には、どれくらい時間が掛かると見ているのか」

A「これについては、こういった時に楽観的な事をお話申し上げることは良くないと思っている。今の時点では、先ずは冷却をしっかり行って、これ以上事態が悪い方向に進まないように、この状態を放水等によって確保しつつあるところである。そして、これが次の段階へ、より収束へ向かう時期がどの時期になるのかは、まさに今、現場でご苦労いただいている自衛隊・消防・警察、そして東電の皆さんの努力の結果によってはっきりしてくる。
そして、その先の見通しは、その時点で初めて申し上げる、あるいはその時点でも未だ申し上げられないかもしれない。先ずは事態のこれ以上の悪化を食い止めて、事態が収束する方向に何とか持っていくということに、今は全力を上げている段階である」

Q「午前中の会見で、『原発推進は困難』とする自民党の谷垣総裁の発言(*)に対して、枝野さんは『至極もっともだ』という発言をされたが(*)、改めて、政府は成長戦略の一環として原発の輸出を考えているが、それがどう変わっていくというお考えなのか」

A「まさに今、原子力発電所については、福島第一原発で起きている事象が、国民の皆さんの健康に被害を与えることにならないように、これ以上の事態の悪化を少しでも防ぐべく、全力を挙げている。したがって、そのことと、先ほどご指摘いただいた稼動中の発電所のことについては、今の時点でもしっかりと検討しなければならないことだと思っているが、そうした先のことについては、今の目の前の事態にしっかりと対応していった上で、きちっと判断をしていかなければならないだろうと思っている」

Q「関連して。各国でも既に稼動中の原発を一時停止して原発政策の見直しが広がっており、現に日本でも計画停電という事態になっているが、エネルギーを供給していく上で、どうしていこうとお考えか」

A「今の事態においても、首都圏、東北も明日・明後日は大丈夫のようだと聞いているが、相当電力消費量を抑えることをやらないと供給が追いつかない、という状況であるのは間違いない。もちろん、今、計画停電でご不便をお掛けしているので、同時にこちらの対応はさせていただいているが、全体の原子力政策をどうするかについては、こうした事態をしっかりと対応した上で、きちっと検討しなければならないと思っている」

Q「先ほど、稼動中の原発についてはしっかり検討しなければならないと仰ったが、被害を受けていない被災地を離れた原発についても、電力の需給について調整がつくならば停止させることも具体的にご検討されているということか」

A「いえ、最初の質問に対して申し上げた通り、こういう時期であるので、原子力の問題に限らず、ありとあらゆるご意見・ご提言については、予断を持たずに全て俎上に載せるということである」

Q「新規の立地計画について。山口県の上関町で中国電力が新しい原発を作る方向で国に申請をしているが(*)、こうした新規立地の計画についてはどう考えているのか」

  • 上関原子力発電所(かみのせきげんしりょくはつでんしょ):中国電力が、山口県熊毛郡上関町大字長島に建設計画中の原子力発電所。ウィキペディア【リンク
  • 「知事臨時記者会見録(平成23年3月14日実施分)」、山口県(総合政策部広報広聴課作成)、2011年3月15日:http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a11000/interview/110314.html

A「今、政府側の原子力関連の関係者は、総力を挙げて福島第一原発の事態の収束に向けて取り組んでいるので、いずれにしても、これがしっかりと収束を迎える、あるいはその方向がはっきりするまでは、それ以外の部分について前に進めることはありえないと思っている」

Q「原発の収束見通しについて。アメリカ原子力規制委員会(NRC)の委員長が福島第一原発事故について『対処するのに時間が掛かると見られる。おそらく数週間単位だろう』との見通しを示している(*)。アメリカ政府がある程度の見通しを示しながら、自国政府が見通しを示せないというのは、危機管理の観点から言ってもあり得ないと思うが、見通し不能ということか、それとも言えないということか」

A「何を以って収束と言うのか、いろんな段階がある。
もう一つは、日本の政府は、国民の皆さんにしっかりと正しい情報をお伝えする責任があると思っている。したがって、しっかりと確実な見通しでなければ、日本政府としてはそれを示すべきではないと思っている。もちろん、様々な立場、様々なご意見の中にはいろいろな見通しが当然あり得ると思っており、責任ある立場以外の皆さんから見通しがいろいろあることは当然だと思うが、政府が見通しを申し上げる以上は、それがほぼその通りになるという確証がなければ申し上げるべきではない。その立場の違いはご理解いただければと思う」

Q「いろんな段階とあったが、放水・注水がどのくらい必要かという、先ず最初の段階についての見通しは立っているのか」

A「まさに今、外から電力を引っ張ってくるという作業をしていただいている。これがどれくらいの時間でできるのか、そのことによってどれぐらいの様々な機器が回復するのか、あるいはそれと同時に様々な修理・補修等が必要になるのか、目の前のやらなければいけないことを、特に現場の皆さんには全力でやっていただいているので、そうした情報がなければ見通しを立てることはできない。
今は事態の悪化を、これ以上食い止めるための万全の措置を取って、何とか収束の方向に向かわせるために、特に現場の皆さんは大変厳しい環境の中で全力を挙げているので、見通しを立てるために情報を上げろというようなことを現場に申し上げられる段階ではないと思っている」

Q「計画停電について。震災が発生してから明日・明後日で二回目の週末を迎えるわけだが、週末の土日に関してはどのような見通しでいるのか」

A「東京電力からは『土・日・月の連休中も計画停電を実施する予定である』という報告を受けている」

Q「昨日の段階では、大規模停電があるかもしれないという警告的なものもあったが、この週末においてはそのようなことはあり得るのか」

A「これについては、計画停電の発表がなされた後の計画停電に関するご報告の時にほぼ申し上げてきていると思うが、今の電力の供給量からすれば、皆さんが普通にお使いになれば大規模な停電が起こり得る。つまり、供給量が需要より足りなくなってしまうことが想定できる。だからこそ計画停電を実施している。
しかも、鉄道交通網については、一定程度動かさないと、違った意味で生活に対する影響が大きいという中で、ギリギリの努力をしていただいて鉄道・運送をできるだけ確保するということをやっていただいている。
したがって、しっかりと節電等がなされないという状況、そういったことは一般的にあり得る状況がずっと続いており、だからこそ計画停電を行っている。その中でも特に、それぞれの日の需要実績を踏まえて、あるいは天候等の見通しを踏まえて、昨日はそうした(大規模停電の)可能性が大変高まったということで東京電力からも発表があり、経産大臣なども実際の需要データも踏まえて、そうしたメッセージを発したものと思っている」

Q「政府はいろんなことを想定されていると思うが、最悪の場合、どういう想定をされているのか」

A「最悪の場合がどういった意味を指すのかについて、例えば何もない状態で、日々居る時に想定されている最悪の事態というのは、常に最悪の事態としてある。
今、現に震災が生じている、あるいは原子力発電所については事故が生じているという状況の中で、今の状況から次の段階として悪化した場合にあり得ることについての想定をしているのかということだが、今のところ、そうした方向に向かっているのではなく、そうした状況を食い止める努力が一定の効果を上げている状況だと思っている」

Q「被災地への補給について。自衛隊による輸送スキーム(*)を、この間、発表されたかと思うが、現時点での災害対策基本法(*)に基づく日本通運による輸送とか、トラック協会の仲介とか、都道府県からの協定に基づく委託とか、その他いろいろ自治体とか錯綜していて、現場ではドライバーが混乱していることもあるが、これを政府として調整・整理する必要があると考えているか」

A「この間、率直に申し上げて、未曾有の大地震と大津波が日本を襲った。その結果として、一般的な災害対応として想定をされていない事態が多々生じた。
例えば、基本的には、被災されている住民の皆さんに対する食べ物の供給、その他のサービスについては市町村が主体となり、それを都道府県がサポートするという法体系になっている。しかし、現場の市町村の役場自体が機能を果たしてない。そもそも、どういった被害実態にあるのかということが、そうした状況のために県庁等にも報告されないなどという様々な事態が生じた。これに対して、実際にその場で救命を待っている方もいらっしゃる。実際に避難所等で救援を待っている方もいらっしゃる。
ということで、例えば、自衛隊の燃料等を直接、運搬ではなく自衛隊の持っているものを提供するなどという、これまでなかった異例の措置などを始め、様々に、現実に連絡が取れていない、あるいはその他の輸送手段がない被災者の皆さんに対応していくという、まさに危機対応をしてきた。
一方で、そうしたやり方を長時間続けることはできないので、本来のルートを復旧しながらできるだけ増やしていく努力を重ねており、それが錯綜している段階では若干、特に現場の当事者の皆さんにはご迷惑を掛けている点があろうかと思っている。しかし徐々に、本来のこうした場合に想定されているプロセスで、現場に様々な物資が届けられる方向へ進めていく。ただし、それを杓子定規に行政的に進めてしまうと、別のやり方では現場に届けられるのに届かないということがあってはいけないので、慎重に進めていくという段階である」

Q「関連して。災害対策基本法はかなり古いもので、日通さんだけが指定機関になっているが、現状では日通さんだけではなかなか賄えない状況になっている。例えば、その他のヤマト運輸さんなどの大きい所の指定機関を増やすという考えは」

A「現実には、被災地に物資を送り届けることについて、実際にその業務を行っていただいている皆さんに対しては、道路の状況・事情等を踏まえながら、相当柔軟かつ広範に緊急車両の高速道路を使えるような手続きなどを進めていただいている。
いわゆる法的な手続きとして、今、ご指摘いただいたようなことを成す必要があるかということは受け止めたいと思っているが、現実には、指定機関であるかないかに関わらず、必要な輸送車両等については対応してきており、また民間の皆さんを含めて対応してきていただいている」

Q「三連休に菅総理が被災地に入る予定はあるのか」

A「まだ確定していない。正直言って、なかなか難しい判断だと私は思っている。
まさに、この危機の最高指揮官である総理自らが、被災の現地を訪ねてその現状を見る、それから現場の皆さんの声を少しでも直接おうかがいをしてくるということは、大変意義のあることだと思っている。
一方で、いくらこちらの方からお願いをしても、総理が現地にうかがうということには、一定のエネルギーが受け入れ先では掛かることなので、そのことも状況によっては十分考慮しなければならないと思っており、今、検討している。
ただ、やはり被災から一週間を超えて、ということは、避難所に居られる多くの皆さんが、一週間を超えて避難所における大変不便な不自由な生活をされている状況であるので、もちろんそうした現場の実情や声はしっかりと総理・官邸にも届いているが、直接見る・直接聞くことの意義の大きさは非常に高まっているのかなと私は思っている」

Q「避難所が不便な状況になっているということで、午前中の会見でも被災者を避難所ごと他の地域に移すことを考えておられると言ったが、それに歩を合わせて、宮城県知事も集団疎開を呼び掛けた。こうした被災した自治体と、どうやって連携していくことを検討している状況なのか」

A「疎開という言い方が適切であるのかどうか、ということはあろうかと思うが、特に病院・介護施設、あるいは高齢者の方、妊婦さん、様々な震災弱者と言われる方を始めとして、今回の震災は大変広範囲に被害が及んでいるということ、それから特に津波の被災地においては根こそぎ持っていかれて、復旧には相当な時間が掛かるだろうと思われること、様々な事情を考慮すると、当面の生活を全国各地の皆さんにご協力いただくことについては、かなり具体的にこの間も検討してきている。
それぞれの関係自治体等ともご相談をしなければ、国で『こうやれ』と言っても、受け入れていただける自治体、あるいは送り出す側の対応等必要なので、こうしたことについては今、鋭意調整を進めているところである」

Q「関連して。受け入れについて、被災地じゃない地域で前向きな自治体もあるのか」

A「どの程度の、どういう受け入れならばということは、それぞれ受け入れ自治体の皆さんにもお考えがあろうかと思っており、実際に受け入れ可能な範囲がどれぐらいあって、そうした皆さんはどれぐらいの期間を想定されているのか等を踏まえないと、実際に掛け声をかけても動かないということであってはいけない。実際に動く仕組みに向けた調整を進めているところであり、そう遠からず、こうしたことに具体的着手ができるのではないかと思っている」

Q「今回の責任について。今回は東京電力さんに責任があるとお考えか」

A「こうした大きな地震、それに伴う津波、そしてそこから生じた原子力発電所の事故、いずれについても国民の皆さんの生命・財産を守る、そのために救命・被災者支援、様々な対応について、政府が総力を挙げて全力を挙げて取り組む、その一点で菅総理以下、今、全力を挙げている。
その対応について、現に被災地の皆さんは大変寒い中で、食料も十分に未だ行き届いてない所も少なからずある状況の中で、大変ご不便・ご苦労をお掛けしている。それについては、様々なご批判も当然あろうかと思っているが、先ず私共は全力を挙げて、万全のできる対応を取るということで取り組まさせていただいている」

Q「IAEAの天野さんが菅総理に会われた時に『日本政府として福島原発の情報開示のさらなる努力をお願いしたい』と仰ってたが(*)、政府に改善点があるとすれば、どういうことがあるのか」

A「情報の開示について、官邸としては、入手した情報等については全てしっかりと国民の皆さんに公開するということで、この間、進めてきた。ただ、現地との物理的な距離もある。それから仕組み上、東京電力を通じてであるとか、そういったこともある。
なおかつ、その間の通信等が必ずしも万全ではないという状況等多々あり、今の時点ではいろいろ整理をさせていただいて、先ずはしっかりと官邸内なり、あるいは原発周辺の放射線量については(原子力安全)保安院から、それより周辺の部分については文部科学省から様々なデータを公開させていただいているが、そうした情報を政府として掌握して整理する時間が、もっとスピーディーにできたのではないかとは思っている。
ただ、入手した情報については、その都度適切に公開をする、あるいは元データを持っているところに公開をさせることについては、この間も徹底して指示をしてきたし、実行してきたし、今後もそう進めたいと思っている」

Q「福島第一原発の原子炉建屋の使用済み核燃料とは別に、敷地内に6,400本くらいの核燃料がある(*)ということだが、これの危険性について政府はどのように認識しているのか」

A「今朝の時点で報告を受けた限りでは、今の段階で危険が生じている状況では必ずしもないのではないかということで、しっかりとモニターをさせていただいている。現在のところ、水蒸気等の発生は見られていないというのが今朝の報告なので、しっかりと温度等をウォッチして管理をしていかなければならないとは思っている」

*注釈とサマリーはサポーターの林さんにご協力いただきました。ありがとうございました。

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