2010年12月13日(月)、岩上安身が、元宜野湾市長の伊波洋一氏にインタビューを行った。
伊波氏は、前日のトークイベント「饗宴」では、語り尽くせなかった沖縄の普天間海兵隊基地の移設問題を、多くの具体的な資料を示しながら、詳しく説明した。また、2005年以降の米軍再編成における、日本の全国基地化への戦略と、その根拠などを、語った。
インタビューの内容
◎Part1
戦中・戦後の沖縄の米軍基地の歴史。普天間基地の現状など。
◎Part2
海兵隊のグアム移転、米軍の戦略について、資料を元に詳しい説明。
◎Part3
日本政府の欺瞞的な説明や、マスコミの報道について。
まず、伊波氏は「国民の意識と、政府や官僚の持っている意識とはだいぶかけ離れている。鳩山元首相の県外移設は、国民の声と合致していた。しかし、官僚の強い抵抗にあって、アメリカから脱皮できなかった。ただ、沖縄基地問題と、その是非が、大きく世論に問われる形なったことは評価される。米軍の沖縄撤退も、まだ希望が持てる。仲井眞知事が容認派から県外移設に転じたのは、選挙対策もあったとは思うが、自民党県連の意見も大きく影響した。そこまで日本政府やアメリカは、予想していなかったのではないか」などと心境を語った。
北朝鮮などを見ていると、戦争へ向かう危険な空気も出てきた。岩上が、その点について意見を訊いた。「本土までは伝わらないが、米軍はいつでも戦争をしているので、基地の中は、緊迫した空気で一杯だ。普天間基地は、土地を収奪し戦時中に作られ、ここから、爆撃機が本土攻撃へ出発した。また、2004年、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故があったが、住民からの苦情が年々、増えている。なぜならヘリ事故以降、米軍が飛行ルートを変え、それまで夜10時までだった飛行訓練が、11時までに延長された」などと、普天間基地の歴史と、現状を話した。
伊波氏は「沖縄に来る前に、海兵隊は、山梨や岐阜に駐屯していた。それが沖縄へ移転したが、最初は、軍も国務省も反対していた。沖縄基地は、ヴェトナム戦争時には機能したが、今では米兵の保養と、思いやり予算目当てになっている。普天間基地の1992年のマスタープランを入手した。そこには、クリアゾーンの確保が明記されていた。しかし、住居地区になっているので、日本政府に対して申し入れをしたが、門前払いだ。
先月、普天間基地米軍爆音訴訟の、福岡高裁那覇支部の高裁判決があり、飛行差し止めまではいかなかったが、一部勝訴で賠償が確定した。また、日本の航空法では、米軍機は規定されていない。どこでも離発着でき、超低空飛行訓練にも規定がない。現在、日本全国で岩手、四国上空などで、盛んに実施されている」などと説明した。
岩上が「日本全国を米軍基地化しようとする動きがある」と言うと、伊波氏は「1995年、米兵少女暴行事件を利用して、沖縄の負担を全国に分散させる動きに変わった。すると宮沢総理が、日米新ガイドラインを策定、極東から太平洋、アジア全体を含めるようになると、日本全国の港湾にも米軍艦艇が出入りするようになった。尖閣諸島問題も、新たなエポックになるのではないか。つねに外交、軍事事件などにからめて、アメリカが、日本を操って飲み込もうとしていることが、沖縄にいるとよく見える。
日米共同演習が先週あった。2006年配備したPAX3を、嘉手納から普天間、キャンプシュワブなどに移動する訓練が行われている。いままで戦場は、ヴェトナムやアフガニスタンだったが、ふたたび沖縄が、戦場になる仮定を考えているのではないか。それは、グアムに海兵隊の家族すべてを移住させることも、その裏付けではないだろうか」などと指摘した。