野田佳彦氏の得票数818に対し、「原発ゼロを掲げた原口一博氏が154票、同じく「原発ゼロ社会の実現」を訴えた赤松広隆氏が123票。鹿野道彦氏が113票。3人の対立候補の数字を合わせても、野田氏の得票数に遠く及ばない。
税と社会保障一体改革法案が可決され、消費税の増税が決まったのが8月11日。
その際の消費税増税政局で小沢グループらが大量離党したあと、残留を決めた民主党議員の大半は、公約破りの「消費税増税・原発再稼働・TPP参加」を政権の三大アジェンダとして掲げる野田内閣を事実上信任したのである。
この夏はまた、原発をめぐる議論にかぶさるかのようにオスプレイ配備問題が急浮上してきた夏でもあった。
日頃、沖縄の米軍基地問題に冷ややかな大手メディアも、7月23日岩国基地にオスプレイ12機が搬入された際はその事実を大きく報道した。墜落事故の多発してきた欠陥機オスプレイが、日本全土を縦横に飛んで飛行訓練を行うことが明らかになったためだろう。
我々は、岩国へオスプレイが搬入された日の現地の模様を中継でお伝えし、その後、沖縄の普天間基地に舞台を移した配備反対の様子も報じ続けた。
9月9日に行われたオスプレイ配備反対の沖縄県民大会は11万人1千人(主催者発表)という空前の規模に膨れ上がった。
また、9月30日の普天間基地へのオスプレイ飛来に際しては、反対派市民が普天間基地のゲート5箇所すべてを封鎖し、これを沖縄県警が実力で排除するという異常事態に陥った。
マスメディアがほとんど報じることのなかったこの一部始終も、我々IWJは中継し続けた。
住民の反対を強行に押し切ってまでオスプレイは何のために日本に、あるいは沖縄に配備されなくてはならないのか。
その問いに対する回答として、これまで繰り返されてきたのは、「尖閣諸島を狙う中国軍に対する抑止力として」というものだった。
その中国との間の領土問題が急にクローズアップされ、一般の日本国民の目にも視覚化されるようになったのも、このひと夏の出来事である。
きっかけは4月16日、石原慎太郎都知事の「尖閣諸島購入」発言だった。中国との領土問題が急にクローズアップされ、7月に日本政府が尖閣の国有化を発表すると中国が猛反発、中国全土で大規模な反日デモが吹き荒れるまでになった。
オスプレイ配備推進側は、尖閣諸島と沖縄を中国から守るには、オスプレイ配備が必要だ不可欠であるかのように主張する。
原発再稼働にもTPP参加にも最も熱心な読売新聞は10月10日付の社説で、「重要なのは、オスプレイ配備が日米同盟を強化し、アジアの安定にも寄与することだ。中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺を含む東シナ海で海空軍の活動を活発化させている。今後も、国防費の大幅な伸びを背景に、艦船や航空機の増強と近代化を中長期的に続けると見るべきだ」と、中国の脅威を強調し、オスプレイが尖閣諸島の防衛に寄与するかのように書いている。
中国の軍備が強化されていることも、日中間に領土問題が横たわっていることも間違いなく事実である。しかし、なぜ「中国の脅威」とオスプレイが直接的に結びつくのか。オスプレイは機銃やミサイルなど装備していない、兵員を運ぶだけのただの輸送機である。
人員輸送に役立つとしても、平らな土地がまったくない岩礁の尖閣諸島には、そもそも着陸もできず、島の防衛にも、奪われたあとの奪還にも、ほとんど役に立たない。
役に立たないオスプレイの配備を推進する側が謳い文句にする「日米同盟の深化」とは、一体誰のためのものなのか。
(続く)
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