2013年2年28日(木)19時15分から、スイスのチューリッヒ市のチューリッヒ中央駅の隣にある学校で、「グリーンピース主催 後藤政志さん講演会」が行われた。元東芝の技術者で、原子炉格納容器の設計に携わっていた後藤政志氏が、福島第一原発事故の経緯を説明し、過酷事故における安全の考え方についての講演を行った。
(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)
2013年2年28日(木)19時15分から、スイスのチューリッヒ市のチューリッヒ中央駅の隣にある学校で、「グリーンピース主催 後藤政志さん講演会」が行われた。元東芝の技術者で、原子炉格納容器の設計に携わっていた後藤政志氏が、福島第一原発事故の経緯を説明し、過酷事故における安全の考え方についての講演を行った。
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はじめに、福島第一原発の事故が発生した経緯について、後藤氏は「福島の事故は、地震と津波により、原子炉の冷却に使用する予備のディーゼルエンジンが流失して冷却ができなくなった。原発は止めても崩壊熱が出るので、冷やし続けなければ、メルトダウンしてしまう。水がなくなってくると、燃料が露出し、水素が発生する。福島の原発は、水素が上方で爆発したため、建物の上部が飛んでしまった。3号機は、壊滅的に壊れている。また、水素爆発と言われているが、違う説もある」と述べた。
後藤氏は「原子力規制法は抜本的に見直す必要がある。東京電力をはじめ、原子力関連の産業界は、規制する側を取り込んでしまったからだ。安全神話をつくり、『原発事故は起こらない』と主張していたことが、国会事故調査委員会で報告されている」と話し、「東電や政府の事故調査委員会は、事故の原因は主に津波によるものだとしているが、国会事故調は、地震により配管が損傷した可能性について述べている。プラントの中は、今も線量が高くて入れず、確認はできないが、事故当時の運転員のヒアリングなどから、国会事故調は『津波より以前に、何らかの損傷があったことは否定できない』とした」と説明した。
福島第一原発の現状について、「2012年の時点で、格納容器に無人カメラを入れたが、溶融物がどこにあるか、わからなかった。この場所の線量は、40分で人が死ぬ線量である。そして、現在も各プラントの下には1万数千トンの水がたまっているが、冷却はまだ続けなければならない。さらに1日300~400トンの地下水が流れ込んで来ている。地下水が流れ込むということは、逆に汚染された水が地下に出て行く可能性が高く、今後いろいろな場所で汚染が進む可能性を否定できない」と、後藤氏は懸念を示した。
最後に後藤氏は、シビアアクシデントの考え方として、「原子力は、制御が非常に困難な技術である。脆弱なプラントに、根本的な解決をせずに安全策を付け足してもだめだ。確実でない安全対策は意味がない」と締めくくった。