岩上安身によるインタビュー 第273回 ゲスト 柳澤協二氏 2013.2.13

記事公開日:2013.2.13取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 2013年2月13日(水)15時から、東京都内のIWJ事務所で「柳澤協二氏インタビュー」が行なわれた。元防衛官僚であり、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏が、岩上安身のインタビューに応じた。柳澤氏は、北朝鮮が核実験を行った背景には、アメリカに対する自己認知の要求があると説明し、北朝鮮と周辺各国の関係性を解説した。

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 小泉政権から麻生政権まで、内閣官房副長官補を務めてきた柳澤氏は、今回の北朝鮮の核実験について、「いずれ、行なうと思っていた。報道によると、北朝鮮はアメリカに対して、実験の前日に通告をしている。北朝鮮とアメリカは、頻繁にやり取りをしていると思うが、今回の北朝鮮の行動は、アメリカに対して、制裁の解除と、体制の安全保障を求める動きだったのではないか」と指摘した。

 岩上の「北朝鮮は、アメリカに届く核弾頭の開発に成功しているのか」という問いに対しては、「アメリカは、今回の爆発規模は数キロトンであるとしているが、アメリカも旧ソ連も、20年かけて実現してきたものである。核弾頭としては、かなり小型化しているが、実験と、実際に兵器として実用化するという点は異なる。まだ、実用化のレベルではないと言える」と答えた。

 続けて柳澤氏は、北朝鮮の核実験が、イランの核開発と連動している点を指摘し、1994年の枠組み合意による核開発停止の約束を、北朝鮮が反故にした歴史を説明した上で、「基本的に、北朝鮮に核実験を止めさせないと、アメリカ国内が保たない現状がある。ブローカーとして、中国が本気になって間に入って対処してくれると良いが、その辺の展望が見えていない」と述べた。また、核保有国としての北朝鮮と国交を持ってしまった場合には、核不拡散体制の崩壊につながってしまう点を指摘し、「短期的な危機管理、長期的な危機管理、この2つをどうしていくべきか。アメリカも、北朝鮮も、中国も、はっきりした見通しを持っていない。そこが一番危険なことである」と指摘した。
 
 「北朝鮮が、日本に向けてミサイルを撃ったと仮定した場合、それは沖縄の米軍基地や、東京の横田基地に撃ち込むことを意味するのか」という岩上の問いに対しては、「アメリカの報復能力を削ぐために、韓国にある米軍基地、在日米軍基地、グアムとハワイを一気に制圧しないと、北朝鮮にとっては危険である。軍事合理的に計算すれば、核ミサイルを撃つという判断は、まずないだろう。日本の機能を停止させてしまうような攻撃も、まずあり得ない」と説明した。

 岩上は、中国の対北朝鮮の貿易輸出入額が増大している点を説明し、事実上、中国が北朝鮮を支えている構造を指摘した。その上で、「北朝鮮は、中国の傀儡国家になっているのではないか。中国と北朝鮮の関係は、どうなっているのか」と問いかけた。それに対して柳澤氏は、「一番大きな要因は、中国の政策にある」とし、中国の経済モデルを示して、(北朝鮮に)自立的な経済発展の道を選択させたい中国の手段として、投資を増やしている点を挙げた。それが北朝鮮にとっては、弱者の脅しとして機能している、と説明した。柳澤氏は「中国の影響力は実際には弱い。中国が一番避けたいことは、北朝鮮の崩壊によって、アメリカの勢力が鴨緑江まで進出することである。中国としては、現状維持を望んでいる」と述べた。

 アメリカのアジア太平洋戦略再構築については、「相対的にはアジアに集中しているが、増強しているかと言うと、むしろ、減らさざるをえない状況にある。そういう流れの中で、中国の台頭にどのように対応していくかが、アメリカの課題となっている」と述べ、中国の軍事力の進歩を危惧するアメリカの現状を解説した。また、中国の胡錦濤国家主席の「ドルはもはや基軸通貨ではない」という発言を挙げて、「これは、1978年のニクソン・ショックの再来だと思った。この発言によって、新しい米中の力関係が制度化された。そういう意味では、21世紀のニクソン・ショックだと思っている。アメリカは、世界的に展開する軍事力と、基軸通貨としてのドルの力で世界を支配できていたわけだが 今では国防予算も減り、ドルも弱体化している。今後は、グローバルな覇権ではなく、アジア限定版のパックス・アメリカーナを維持しようという構想だと思う」と述べた。

 タカ派色を強める安倍政権について、柳澤氏は「アジアの近隣諸国は、経済的互恵関係にあるにもかかわらず、尖閣諸島や従軍慰安婦の問題などで、争いが起こってしまっている。これは何を意味するかというと、『同じ市場経済を取り入れ、同じように経済発展して大国になったことを、認知してほしい』という、自己認知を求める争いである」と述べ、「各国の自己認知の違いを、丁寧に擦り合せていくことが必要である」とした。その上で、日本の自己認知に、日米同盟基軸がある点を挙げ、「その他に何があるか、ということが、日本における問題である。一般論として、憲法の改正も、国民の合意があればしても良いと思うが、それが、これからのアジアで生きていく日本の国家像となるので、自己認知を外に示すために有効であるのか、考えなければいけない」と指摘した。

 最後に、柳澤氏は「過去の歴史を検証し、国家の知恵として蓄積する作業がなかったことが、戦後日本の大きな問題ではないか。過去のアイデンティティだけでなく、今、自分たちがどうありたいのかが重要。世界に打って出られるような、人類普遍の価値を含めた、健全なアイデンティティを構築しなければいけない」と述べた。

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