【IWJブログ】住民不在で進む、福島県鮫川村の「高濃度放射性廃棄物」焼却施設建設問題 2013.1.16

記事公開日:2013.1.16 テキスト動画
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(佐々木隼也)

 福島県にある自然豊かな小村、鮫川村に高濃度の放射性廃棄物焼却施設が作られようとしている。2012年、環境省は焼却施設の建設を福島県内の各自治体に提案してきたが、唯一受入れ表明したのが、この鮫川村である。焼却されるのは、処分が滞っている汚染稲わらや牧草で、1キロ8000ベクレルを超える「指定廃棄物」もこれに含まれる。

住民無視の建設計画

 環境省と村側は、この焼却施設の建設計画を村民には知らせず、秘密裏に進めていた。村民への説明会や告知は行われず、2012年の6月に、村議12人の全員協議会で建設が決定された。発覚したのは2012年の9月だが、同年12月まで建設予定地すら公表されなかった。焼却炉は1日5トン程を処理する小型炉で、2013年の2月に実証実験を行い、2014年9月の完成を目指している。

 焼却灰は最終処理方法が決まるまで村内に保管する方針だが、村民からは「恒久的な最終処分場にされてしまうのではないか」と不安の声が上がっている。

メディアがほとんど報じない

 この問題は、地元紙である福島民報や、東京新聞が「こちら特報部」で精力的に取り上げたほかは、新聞・テレビではほとんど報じられていない。IWJは、11月1日に行われた鮫川村内の勉強会から、福島の中継市民がこの問題を中継し、追い続けている。

 12月25日には鮫川村で初めて、行政側による住民説明会が開かれ、村民4000人のうち100名が集まった。村民からは焼却炉に対する不安や、「工事が着工してからの説明会はおかしい」などの意見が相次いだが、説明に来た環境省の担当者も村長も、工事ありきの答弁に終始した。

 【住民説明会の動画記事】 鮫川村で高濃度焼却炉建設に関する第一回住民説明会が開催 工事着工後の説明会に住民から疑問の声 2012.12.25

環境省に要望書を提出

 こうした行政側の姿勢に不安を募らせた周辺住民たちは、2013年1月16日、鮫川村に隣接しているいわき市の4団体を中心として、工事の中止や説明会の開催を求める要望書を提出した。

 IWJは要望書を提出した方々に、環境省前でインタビューを行った。

「鮫川村放射性廃棄物焼却実証実験施設」に関して環境省への申し入れ後のまとめ 2013.1.16
(↑このインタビューのフル動画は、タイトルのリンクからご覧下さい)

 インタビューに応じた、鮫川村の自然学校で理事長を務める進士徹氏は、「焼却施設の建設は、村長と環境省と一部地権者とで進められており、村民には全く事実関係が明らかにされてこなかった」と、村の実態を赤裸々に語った。また、鮫川焼却炉問題連絡会の北村孝士氏によると、すでに、福島県の各市町村ごとに、同じタイプの焼却場を作ることで予算が付いているという。北村氏は「焼却施設の設計図を専門家に見せると『こんなずさんなものはない』と目が点になってしまう」と、施設の構造にそもそも問題があることを指摘した。

 鮫川村のHPをみると、排ガスの安全対策については、「排ガス中の微粒子の灰を除去する高性能の排ガス処理装置(バグフィルター)を設置します」と書かれている。がれきの広域処理問題で、散々その構造の欠陥が指摘されている、あの「バグフィルター」である。北村氏は「環境省はバグフィルターで99.9%セシウムを除去できると言っているが、相当目が詰まった状態でやらないと取れないはず」と語る。広域処理された震災がれきと違い、この焼却施設は「高濃度の放射性廃棄物」を扱う。にも関わらず、ヘパフィルター等の性能の良いフィルターではなく、東京都の一般的なゴミ処理場と同じくバグフィルターしか設置しないのだ。

【※訂正】2月14日の鮫川村長へのインタビューによると、焼却施設にはバグフィルターだけでなく、ヘパフィルターも設置するとのこと。

環境省は1月28日に文書で回答

 最後にインタビューに応えた、「いわきの未来をつくる市民の会」の代表である高橋幸子氏によると、環境省は当初、1月末に実証実験を始める予定だったが、今回の要望を受けて実施予定を2月に延期することを明言。その前の1月28日に、今回の要望書に対する回答と、焼却施設のでデータなどを、文書で出すと確約したという。高橋氏は「もし『2月に始める』という約束を環境省が破れば、さらに抗議する」と語る。

 前述したように、環境省は鮫川村だけではなく、福島県の各市町村に同様の焼却施設建設の予算をつけている。この鮫川村の問題は、「行政側の致命的な説明不足」という点で、全国で抗議行動が巻き起こっている、がれきの広域処理と酷似している。IWJは、環境省と鮫川村の動きを今後も継続的に取材し、説明を求めていく。

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