2023年5月24日、午後4時より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、東京大地塾が開催され、作家・元外交官の佐藤優氏、そして、鈴木宗男・参議院議員が登壇し、「G7 広島サミット」の総括、および、そこでのウクライナの対応について、佐藤氏の講義、そして参加者との質疑応答が行われた。
佐藤氏の講義、および質疑応答の詳細については、ぜひ全編動画をご確認いただきたい。
質疑応答にて、IWJ記者は、佐藤氏に対して、次のような質問を行った。
IWJ記者「一点、米国のシンクタンク『アイゼンハワー・メディア・ネットワーク』が、『米国は世界の平和のための力となるべきだ』という公開書簡を発表して、ニューヨークタイムズもこの書簡を意見広告として掲載したとされています。
この書簡は、NATOの東方拡大がウクライナ紛争を誘発したとして、バイデン大統領と米議会に軍事的エスカレーションを止めて、外交による即時停戦を求めているものです。
先ほども、佐藤さんのほうから、大統領選の結果如何では、というお話がありましたけれども、大統領選に名乗りをあげているロバート・ケネディ・Jr氏が、この書簡に強い共感を示しており、選挙の結果次第で米国の外交政策が反転する可能性もあるとも思うのですが、佐藤さんのご意見を、プラス、ロバート・ケネディ・Jr氏についての評価も、もしよければ、教えていただけますでしょうか?」
佐藤氏「だから、ケネディさんが、今すぐ、大統領候補になるということはないけど、民主党でありながらリアリズムに基づいた、一種の、ドミトリイ・サイムズ(米シンクタンク『ナショナル・インタレストのためのセンター』所長)さんとか、キッシンジャーさんとか、あるいはジョン・ミヤシャイマー(政治学者)さんと同じような、リアリズムに基づいた考え方をしているというのは、これは非常に好ましいことだし、私はこれが本来のアメリカのあり方だと思う。
アメリカというのは、ヨーロッパの政争に加わらない、と。そういう形でそもそも建国している国なんだから。だから、『アメリカのことに他の人たちは干渉しないでくれ』と。しかし、我々もヨーロッパのことに干渉しないんだよ。これが本来の『アメリカ・ファースト』なんだよね。それが、やっぱり、一つはネオコン。このネオコンは最初、レーガン政権の共和党のところで出てきたのだけども。
そうじゃなくて、ヒラリー・クリントンさんなんかもそうだったんだけども、民主党のバイデンさんなんかも、非常にネオコン的なんだよね。『価値観を重視』とか、それで『力によって価値観を実現する』という、これ、ネオコンの母体はご案内だと思うけれども、ニューヨーク市立大学のトロツキストグループだよね。
だから、世界革命を実現するという人たちが保守化しちゃって、自由と民主主義を『保守革命の力』によって実現する。この、やはり、ネオコン的な思想っていうのが一番の問題だと思う。それだから、NATOの東方拡大というのも、価値観でどんどん拡大していくというのに対して、いや、やっぱり、これは『住み分け』でしょう、と。
こういうような考え方と両方アメリカにある。だから、『住み分け』的アメリカというのが重要になってくると思うんですよね。ただ、アメリカも混乱しているから、『住み分け』的なアメリカを今、じゃあ、代表する人は誰かと言ったら、トランプさんになっちゃうわけで。トランプさんだと、ちょっと規格外のところがあるからね。
だから、言ってることはそんなに悪くないのよ。例えば、もし、トランプじゃなくて、ヒラリー・クリントンになったら、北朝鮮の核開発を阻止するっていうんで、空爆ぐらいしかねなかったから。そしたらさ、日本国連軍の駐留協定があるから、ホワイトビーチと普天間と嘉手納と佐世保と横須賀と座間と横田。ここは、国連軍に直ちに貸し出さないといけないということになっているからね。
そうすると、この7つの基地って、ミサイル飛んできた可能性があるんだよね。だから、その意味においては、トランプさんがなって、私、最初は、『リトル・ロケットマン』とか言って、大喧嘩してたけどね。『私は恋をした』とか言って、『金正恩、大好き』っていう形で3度もあったお陰で、少なくとも朝鮮半島の戦争を阻止できたじゃない。
だから、日本にミサイルが飛んで来なかったのはトランプのお陰だと、私は思っているわけ。クリントンだったら飛んできてたと思う。そう考えると、やっぱりトランプはいいんだよね。ただ、やっぱ時々規格外だし、それから、アメリカというのが起きている、起訴するのも、地方の検事って民選じゃない?
政治家には政治家にふさわしい犯罪ってあるわけよ。例えば、連邦議会に対して、『選挙が乗っ取られたから襲撃しろ』とか、あるいは、ジョージア州とかで、『票が何千票必要なんだけどな』とか、これはすごい政治家らしい犯罪でしょう?
こういうのであれば議論になるんだけども、民選で選挙で民主党系で、どうも、ソロスさんのところとだいぶ仲がいいっていう人から、それが、昔関係を持ったポルノ女優に、ポルノ女優さんに口止めをした時の、その時の『政治資金』の使い方、そういうことで起訴されるとさ、やはり、これは政治犯罪だって、トランプが言うと、トランプと距離を置いている人を見ても、政治家らしいところの犯罪じゃないよね。
何か、こういうところでトランプの足を引くのって感じになるから、アメリカ、訳わかんないです。だから、そうすると、こういうわけわかんないところとは、できるだけ距離を置いて、『価値観の同盟』というのはそこそこにしておかないと、大変なことになる。
だから、一番の問題は、アメリカ専門家が日本で意外と少ないことで、アメリカの情勢についてやっぱりもっと調べないといけないと思うんだよね。アメリカとは上手に付き合わなきゃいけない。だから、ウクライナ戦争だって、アメリカ問題じゃない? でも、岸田さんはね、そういう意味では、皮肉じゃなくて、よくやってんだよ。
あと、フォーリン・アフェアーズに、明らかに、アメリカ人の指南を受けて書いたとしか思えないような内容の文章を書くと。それから、『タイム』誌にね、『日本は平和主義を捨てて軍事大国化の道を進んでいる』みたいな、あれ、ネットのは(訂正版が)載ってるけど、雑誌は今そのままだもんね。でも、あんなので、内容でクレームつけて、『これは内容が適切じゃないので変えてくれる?』って、『タイム』誌の編集部とニューヨークの総領事館がすごく仲いいから、タイアップ企画みたいなのを私は見ていますからね。(後略)
続いて、鈴木氏からも次のような応答があった。
鈴木氏「今のお話でね、やっぱり、ケネディ家は、『政治家をどう育ていくか』というのは考えているんですね。キャロライン・ケネディ(駐オーストラリア米国大使)さん。菅前総理がとっても大事にしたんです。今でも続いていますね。菅総理にも相談に来たというんですから。後継の相談で、どうしたらいいかって。今のお話のご指摘は生きているんですよ」
佐藤氏の講義、そして質疑応答の詳細については、ぜひ全編動画にてご確認ください。