事件から6年、相模原で集会――7.24津久井やまゆり園事件は終らない~入所施設と地域移行の狭間で考える―登壇:成田洋樹氏(神奈川新聞記者)、松尾悦行氏(県立中井やまゆり園OB)、伊藤卓氏(横浜共生会職員) 2022.7.24

記事公開日:2022.8.3取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2022年7月24日午後1時30分より、神奈川県相模原市のソレイユさがみにて、「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」の主催により、「津久井やまゆり園事件は終らない~入所施設と地域移行の狭間で考える」集会が開催された。

 登壇者は、福祉新聞記者の福田敏克氏、神奈川新聞記者の成田洋樹氏、県立中井やまゆり園OBで社会福祉士の松尾悦行(よしゆき)氏、横浜共生会職員の伊藤卓(まさる)氏の4名。

 2016年7月26日、神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で元同施設の職員だった植松聖(さとし)死刑因が、入所者19人を殺害、職員等26人に重軽傷を負わせた事件から6年が経過する。

 「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」世話人の杉浦幹(もとき)氏は、「津久井やまゆり園事件が起きてのち、いろんなところで集まりをもった人たちがだんだん集まってきて『考え続ける会』というかたちで始まった」と述べ、「いろんな考え方があって(中略)、それぞれの考え方、思いを尊重して、この場を作っていく、そんなスタンスで6年間続けてきました」と語った。

 福祉新聞記者の福田氏は、「匿名(追悼式で犠牲者19人の氏名が伏せられ、遺影もなかった)」の問題について、「匿名問題を考え続けなければいけない。どうすれば匿名にしなくても済む世の中になるのかについて、考え続けなければならない」と語気を強めた。

 神奈川新聞記者の成田氏は、「事件で問われたのは、差別感を膨らませて犯行に及んだ彼(植松死刑囚)ただ一人ではない。障害の有無や程度で、学ぶ場所、暮らす場所、活動する場所を厳然として分ける社会のありようがあり、その『分ける社会』を形づくっている私たち一人ひとりも問われている」として、以下のように結論づけた。

 「施設を全否定するつもりはないが、施設で長期間暮らさざるを得ないという状況は改善されるべきだし、(中略)地域で普通に暮らす、この『普通に暮らす』というところをもう少し、もっと考えていかなくてはいけないと思っています」。

 松尾氏は、昨今職員による入所者への虐待疑いが多数報道され、現在、外部調査委員会が調査を続行中である神奈川県の障害者施設「中井やまゆり園」のOBである。

 松尾氏は、行政の障害者福祉施策、制度のしくみについて批判や提言を行い、次のように自身の発言を締めくくった。

 「問われているのは、やっぱり、本人が意思決定をした暮らしの場で、ほんとうに豊かに暮らせることをどう実現するか。ここにかかっていると思うので、そういった意味で、入所施設はまだまだ必要だと、私は思います」。

 障害の有無や年齢に関わらず、だれもが当たり前の生活を、自分たちの地域の中で営むことのできる社会の実現を目指す、社会福祉法人「横浜共生会」の職員である伊藤氏は、入所施設・グループホームでの自身の経験を紹介しつつ、以下のように語った。

 「やっぱり、何が言いたいかというと、人生楽しみたいですよね。(中略)『どういう暮らしがしたい』っていうのをお手伝いしていきたい。楽しい暮らしをお手伝いしたい。お手伝いの仕方というのは、大きい集団より小さい集団のほうがやりやすかったり、小さい集団よりも一人の方がやりやすかったり、そういう意味では、入所施設よりもグループホームを選びますし、グループホームよりも一人暮らしを選びます。

 ただ、『どっちがいい、どっちが悪い』というのはどっちもないと思います。それぞれの良さ、それぞれの利点。それぞれが徹底した個別支援をしていれば、どっちがいい悪いというのはないだろうと思っています」。

 詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2022年7月24日(日)13:30~16:30
  • 場所 ソレイユさがみ(神奈川県相模原市)
  • 主催 津久井やまゆり園事件を考え続ける会(詳細

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