2013年1月6日(日)16時、大阪市浪速区のコミュニティスペース「討論Bar“シチズン”」において、ラテン歌手・作家で「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」の代表を務める八木啓代氏を招いて、「八木啓代さんトークショー」が開かれた。八木氏は、いわゆる「陸山会事件」にからむ虚偽公文書作成などを問題視して起こした、検察に対する一連の刑事告発について、その過程における様々なエピソードを交えながら、参加者に語り掛けた。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
2013年1月6日(日)16時、大阪市浪速区のコミュニティスペース「討論Bar“シチズン”」において、ラテン歌手・作家で「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」の代表を務める八木啓代氏を招いて、「八木啓代さんトークショー」が開かれた。八木氏は、いわゆる「陸山会事件」にからむ虚偽公文書作成などを問題視して起こした、検察に対する一連の刑事告発について、その過程における様々なエピソードを交えながら、参加者に語り掛けた。
■全編動画(16:02~ 2時間8分)
八木氏は、「2011年12月15日、陸山会事件の公判で田代政弘検事(当時)が、小沢一郎氏の起訴議決が出た検察審査会に、証拠として提出した報告書の記載と、実際の取り調べの内容が異なっているということを認めた」と述べ、「翌16日には、『フロッピー前田』の名で知られる前田恒彦検事(当時)が、実は小沢一郎氏にとって有利になるような、ゼネコンが献金を否定しているようなものについては全部捜査メモにし、小沢氏に有利になるようなものは一切、検察審査会に渡さなかったということを証言した」と続けた。
さらに、「15日の段階で分かったことは、小沢氏が不利になるようなニセの報告書をわざわざ作って、小沢氏の有利になるような証拠は隠し、検察審査会に証拠として渡したということ」と解説し、「検察審査会をだまして、起訴議決を無理やり引き出そうとした疑いが非常に濃厚に出てきたということ」と説明した。
その上で、「フロッピー前田は即日逮捕されたのに、田代は1週間たっても逮捕されない。(即日逮捕の)フロッピーの改ざんは村木(厚子)さんの無実とは直接つながっていないが、今回の場合、検察審査会の議決に重大な決定を及ぼしたかもしれないという意味では、こちらのほうがはるかに罪が重いのに、逮捕される気配がない」と述べ、「放っておくわけにはいかないので、私たちが2012年1月12日に、田代氏を虚偽有印公文書作成及び行使、および被疑者不詳で、検察審査会をだましたことによる偽計業務妨害で刑事告発した」と語った。
八木氏は、「『田代報告書のほかにも怪しい報告書があるらしい』との噂が流れてきた。調べてみると、どうやら『木村報告書』と『斎藤報告書』があるらしい」と語り、「その2つの報告書は、内容的には田代報告書よりもヤバイらしいという噂が伝わってきた」と述べた。この件を告発したいと考えた八木氏は、この「怪しい報告書」の存在を何らかの形で記事にするようにメディアに頼んだが、「裏が取れない」との理由で記事にならなかったことや、仮に報告書が表に出てきたとしても、その出所が問題にされ、「検察から出た場合は国家公務員法違反、指定弁護士や小沢弁護団から出た場合は刑事訴訟法違反になる」と説明した。また、記事化を検討した週刊誌に対し、検察側が「名誉毀損で刑事告訴すると開き直った」ことなどを挙げ、さらに、編集長から、「八木さん、迂闊(うかつ)にやると、虚偽告訴罪で告訴される」と言われ、「そこまでやるなら、負けへんで」と奮起し、最高検に対し、「あくまで噂ですが、本当ですか」と公開書面を送ったが返事は来なかったことを詳しく説明した。
「怪しい報告書」をどうしても入手したいと考えた八木氏は、「報告書を持っている人がいたら見せてほしい」とブログで呼びかけたところ、「ロシア語の謎のメッセージ」が届いた。2012年5月2日夜に届いたそのメールは、迷惑メールフォルダに入っており、本文にはロシア語の文章とともに、怪しい日本語で、「私たちは、日本の検察は多くの問題を持っていることを知っていて、ここであなたがしたい秘密文書を取得することができます」と書かれた「気持ちの悪い文面だった」と八木氏は述べた。さらに、「ロシア語で書いてある部分をグーグル検索にかけると、『以下から必要書類がダウンロードできます』という翻訳が出てきた」と語り、その通りにクリックしてみたところ、「田代報告書」「木村報告書」「斎藤報告書」など、合計7つの報告書と、石川知裕氏が取り調べの模様を極秘に録音した内容の反訳書(書き起こし)が出てきたことを語った。
この「秘密文書」の取り扱いについて、八木氏は「民主党ニセメール事件」が頭に浮かび、真偽や出所によっては名誉毀損で告訴されかねないと考え、弁護士チームと相談した。その上で、「落し物がありますよ」という表現で、翌日(3日)の午前8時頃、「このリンクを踏んだら、田代報告書『のようなもの』があります、石川さんの反訳書『のようなもの』があります。自己責任にてクリックしてください。私に真偽は分かりません」との内容を、ブログとツイッターで公開したことを説明した。また、その「秘密文書」を数千人がダウンロードして大騒ぎとなり、秘密文書の内容を知った小川敏夫法相(当時)が、野田佳彦首相(当時)に指揮権発動の了承を求めたところ、更迭されたことなども詳細に語った。特に、小川法相が、「報告書(秘密文書)の中身は本物だと思う」と退任会見で述べたことについて、八木氏は、「直前まで大臣だった人の発言としては非常に重い」と評価した。
八木氏は、小沢一郎氏に対する東京地裁判決の重要点についても説明した。この中で、「検察官が、公判において証人となる可能性の高い重要な人物(石川知裕氏のこと)に、任意性に疑いのある方法で取り調べて供述調書を作成し、その取り調べ状況について事実に反する内容の捜査報告書を作成した上で、これらを検察審査会に送付するなどということは、あってはならないことである」という箇所と、「検察官が、任意性に疑いのある方法で取り調べを行って供述調書を作成し、また、事実に反する内容の捜査報告書を作成し、これらを送付して、検察審査会の判断を誤らせるようなことは、決して許されないことである」という箇所を特に強調し、「非常に厳しい言葉で検察批判がなされた。素晴らしい判決に私たちは力を得た」と語り、「要するに、小沢さんの一審判決を『超訳』すると『小沢セーフ!検察アウト!』というような判決だった」と力を込めた。
八木氏らによる告発に対し、検察当局は不起訴処分を下した。八木氏は、「身内調査に限界」など、検察を厳しく批判する新聞各紙を紹介したほか、不起訴処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てたことや、検事総長をはじめとする当時の検察幹部6名を犯人隠避容疑で告発したことについて、その経緯を詳細に説明した上で、検察の健全化に向けた行動を今度も続けていく方針を語った。